冒険者ギルド・・・冒険者ギルド?
シリーズの方に世界設定を追加しました。
※注意! 当たり前ですが、設定に書かれていることは、
登場人物が知らないことも含まれています。
王宮を後にした私はまず、シャーラさんの言うと通りに、冒険者ギルドに行くことにした。
―――冒険者ギルドの場所はすぐに分かった。というか、町の東側に比較的大きな建物があって、それが冒険者ギルドだった。
見たところ、大体15mくらいの高さかな?他の建物が4〜5mくらいだから、それの3,4倍の高さもある。
因みに、一番大きいのはお城で、45mくらい?少なくとも、40m以上はある。姫路城と同じくらいかな?・・・まあ、洋風の建物だけど。
うん、大きい。城が建っている所と、冒険者ギルドが建っている所では高低差が結構あり、城が建っている場所の方が高い為、さらに大きく見える。
・・・と、冒険者ギルドの前で考え込んでいたけど、こんなことをしててもしかたないよね、とりあえず中に入ってみよ~
中に入ってみると、日が落ち始めた今でも中々にぎわっているのが見て取れた。
正面のカウンターでは、職員らしき人が、カウンター前に並んでいる人の対応していた。
カウンターには窓口が7個付いており、そのうち2つは閉じられ、残ってい居るうちの4つが使われていた。
入り口付近では、テーブルとイスがいくつか有り、座って話をしている人たちが多く居た。
部屋の左右を見てみると、左右どちらとも、他の部屋に繋がっていようだ。
(えっと、左右に続いている部屋が気になるけど、とりあえず、並んだ方がいいよね?)
並んでいたら、5,6分ほどで私の番が来たので、冒険者になりたいという要望を伝えた。
「あの、冒険者になりたいんですが、手続きはここでいいんですか?」
「はい、大丈夫ですよ。新規手続きの方は空いている窓口でお待ちください。職員をすぐ呼びますので」
「はい、分かりました」
あぁ、空いているのに使われていない窓口は、こういうときの為に空いてるんだね。確かに、新規登録するときとか、時間が多くかかっちゃうもんだよね。
そんなことを考えていたら、担当らしき人がやってきた。
「お待たせしました。新規の手続きを希望ということですので、100リュオン頂きますが、よろしいですか?」
「えっと、私、世間に疎くって、金銭感覚がないのですが、どのくらいの価値か教えて頂けないでしょうか?」
「・・・はい、分かりました。たまにそういう方もいらっしゃいますので、良いのですが・・・もしかして、貴族の方ですか?」
「いえ、違いますが、なんでそう思ったんですか?」
「どう見ても高価な服を着て、金銭感覚も無い、そんな方が冒険者になる。なんて、訳ありの貴族の方ぐらいですよ?」
そう、苦笑を顔に浮かべながら話す彼。
あー、確かに、この服だと目立つよね。早めに普通の服を買っといた方がいいかも。
自分の通っていた学校の『学生服』と、町で目にした服を比較しながら考えていると、彼が話しかけてきた。
「それで、通貨の話でしたね。
これくらいは知っていると思いますが、通貨の単位はリュオン。ここ、フィーガルド王国だけじゃなく、全ての国で使われています。
そして、一般の4人構成の家庭で1ヶ月に消費される食費が、45000リュオンと言われています」
んー、計算すると、一人当たりの一日の食事に使うお金が・・・535リュオンほどなのか?
でもこれ、自炊前提だよね?だったらもっとかかりそうだね。とりあえず、今の所持金確認しよっか。
カウンターに袋の中身を出して数えてみたら・・・80000リュオン有った。おぉ、食費だけじゃなく他のお金も入ってるみたいだ!半年どころかもっと暮らせそう!
「・・・結構持っていますね。やっぱり貴族様ですか?」
「ははは、違いますよ〜」
これならあれば当分は大丈夫だね〜
「では、手続きに戻りましょうか。この用紙に、必要事項が書いて有りますので、それに従って書いて下さい。
必ず書くことは、名前と、戦闘ができるかどうかくらいですので、それ意外は書かなくても結構です」
えっと、名前と、戦闘ができるか以外は、『得意なこと』、『今までの職歴』『どんな職を探しているか』?
他にも色々書いて有るけど・・・何か、冒険者のイメージが崩壊していく。
名前と、戦闘の有無以外は・・・得意なことだけでいいか今のところ。
生活魔法も有るし、家事も得意だし、家事全般でいいかな?―――とりあえず書けた。これでいいよね?
「書けました」
「はい。名前はカナ=アサヒ、戦闘は×、得意なことは家事全般ですか・・・分かりました。では、登録料の100リュオンを頂きます」
「はい」
「では、登録が完了しましたので、このカードをお受け取りください。カナさんのギルドカードです。どうぞ」
「ありがとうございます!」
差し出してきたカードを受け取りながら、『なぜここが冒険者ギルドというのだろう?』という疑問が浮かんだ。
・・・まぁ、どうでもいいか。それよりも左右の部屋が気になる。
「あの、このギルドカードって何に使えるんですか?
それと、この建物にある施設について聞いてもいいですか?」
「はい、いいですよ。まずギルドカードですが、それにはカナさんが先ほど書きました情報と、
これから依頼を受けていくと思いますが、それまでどんな依頼を受けて、達成してきたかが書き足されていきます。
その成果や実績によって、転職することが可能になっていきます。
次に、この建物は冒険者ギルドと呼ばれていますが、実際の名称は『ギルド会館』です。
主に冒険者ギルド・商工ギルド・鍛冶ギルドが所属しています。
後は国によって違ったりしますが、この国では上の階などでアイテムや武器などを買う事ができます。
この部屋の隣で、右に在るのが商工ギルド、左に在るのが鍛冶ギルドです。
商工ギルドや鍛冶ギルドは、冒険者の方々は直接関わり合いにならないと思いますが、
冒険者ギルドの方で出していく依頼の中には、商工ギルドや鍛冶ギルドからの依頼も在りますので、一概には言えません」
ふーん、転職ね・・・冒険者ギルドは、この世界のハローワークの役割をしてるわけね。
なのに冒険者ギルド? なんで冒険者? ・・・訳が分からないよ
「他に質問は有りますか?」
「いえ、無いです。ありがとうございました」
もう夜遅いし、明日また来よう。
ギルド会館から外に出ると、もう日が完全に落ちて、人通りも少なくなっていた。
(今日はもう、宿をとって早めに寝よう。)
そう思って、「出来れば食事が美味しい所が良いよね〜」と考えながら宿を探していたら・・・
――ドン――
腰のあたりに衝撃が走った。
「え?何?」
後ろを振り返ると、子供が尻餅をついていた。
大方、日が暮れて帰りが遅くなってしまったので、急いで家に帰ろうとしていたのだろう。
「いってぇ! どこ見て歩いてやがる!」
「はぁ、君が当たってきたんでしょう? 後ろから走ってきて当たっておいて、謝りもしないの?」
「うっせぇ! そっちが避けねえのが悪いんだろうが!」
「あのねぇ! ・・・?」
その言葉に怒りそうになったが―――ふと、腰の方が軽くなって居ることに気づいた。
「・・・え?」
腰の辺りを見たら、お金を入れていた袋が見つからない!
いつからなかった? まさか、掏られた? いつ・・・って、もしかして、目の前の少年か?
「ちょっと君、私の荷物掏ったでしょ?」
「はぁ? あんた荷物なんて最初から持って無かっただろ?」
「とぼけても無駄! 他に心当たりないんだから」
「おいおい、アンタが盗まれた荷物ってどんなんだよ? 直ぐに気づくようだし、重いか大きいんだろ? 俺はそんなん持ってねえぞ?」
「それは・・・確かに」
目の前の少年は見た所、私の荷物どころか、自分の荷物すら持っていない。
じゃあ、何処かに置いてきた? ・・・もしかしてギルド会館!?
なら、こんなことしている場合じゃない!
「・・・当たってきたことは見逃してあげるから、今度から気をつけなよ?」
「ふ、あんたも今度からは気をつけな」
はぁ、一々悪態付かなきゃだめなのこの子?
それよりも速く戻らなきゃ!誰か持って行っちゃうかも!
―――急いでギルドに戻ったが、ギルド職員や周りに居た人に聞いても、『知らない』『ちゃんと荷物は持って行った』と言われた。
・・・1文無しになっちゃった。
後払いでもいい宿ってあるかな? この時間だし、難しいよね・・・とりあえず、探しに行こうか。
宿を探しに道をトボトボ歩いていると、看板を持った少女と出会った。
「そこのお姉さん! もう宿はお決まりですか?」
「いえ、決まっていないんだけれど、その、掏りに会って、今一文無しなの」
「う〜ん、後払いでも、払ってくれるって約束してくれるなら、泊めることは出来ますよ?」
「・・・え? いいの?」
「ええ、ちゃんと払ってくれるのであれば、ですが」
「それは大丈夫だよ! 払う当てはちゃんと有るから!」
半年程暮らせる金は無くなったが、働き口はハr・・・ではなく、ギルドが紹介してくれるので大丈夫だ。
「なら大丈夫です! では、案内するので付いて来てくださいね?」
「うん!」
捨てる神あれば拾う神ありとはこのことか!ようやく、異世界生活1日目が終わる・・・