主人は鬼人で、元仙人。
よっ!俺久米さん。よろしくな!……え、お前なんか知らねえよ帰れって?まあそんなこと言わずに、適当になんか変な仙人、とでも思っといてくれや。
俺たち仙人は永遠に修行の身。修行をしたり周りの人と触れ合ったり、困った人を助けたり悪い事をしている人や妖怪を懲らしめたりしている。
んで、見回りがてら街をぶらぶらしていたら、街の外れの川で洗濯をしている、髪の色が金と紫でとんでもなく綺麗な人を見かけた。
俺はその人に一目惚れした。見惚れているとその人は俺の視線に気付いたのか、振り返った。
「あの……何かご用ですか?」
「い、いや、なんでもねぇよ!」
「そうですか…」
そう会話を交わし、洗ったものを籠に入れているのを眺めていると、後ろから声がした。
「おーい姉ちゃん!洗濯物終わった?」
「終わりました。早く帰りましょう命蓮」
「うん。それはいいんだけど……白蓮姉ちゃん、そいつ誰?」
「俺か?俺は久米仙人、仙人だ」
「で?その仙人が姉ちゃんに何の用?」
「特に用事はないが?」
「そっか。姉ちゃん、帰ろう」
「そ、そうで…キャッ⁉︎」
その女性(白蓮というらしい)が話している途中に、大きな爆発音と振動が街の中心の方から伝わってきた。
「なんだ⁉︎何があった⁉︎」
「なんでも、鬼が暴れているらしいぞ!」
周りの人々が街の中心の方角を見ながら噂している。まあ当然、仙人だから人間助けに行かなきゃな。
「姉さん、退治しに行こう!」
「危ないでしょう?行くのは諦め……ま、待ってください!私も行きます〜!」
どうやらあの二人も行くらしい。俺も仙人らしく空でも飛んで行くか、と思った矢先に、
「……飛べねえ」
飛べなくなっていた。どうやら白蓮さんに惚れたせいで仙人の力を失っているらしい。じゃあ走るしかねぇよな……面倒くさいな…。
暫くして、街の中心に着くと、何かを叫びながら暴れまわる小さな鬼と、傷だらけの弟さん、怯えながら物陰に隠れている白蓮さん。いったい何があったのか。
「白蓮さん!大丈夫か⁉︎」
「ええ私は大丈夫です!でも弟が……」
「白蓮さん、そいつ運べるか⁉︎」
「ええ、私でもなんとか……」
「じゃあ運んで民間人の所に届けて、手当てしてもらえ!ついでにあんたも避難しとけ!」
「は、はい!」
指示を出すと、白蓮さんは弟さんを背負って一目散に駆け出す。これであとは俺とこの鬼だけだ。
「grrrrrr………」
「うっわこえー、鬼さん絶対話聞かないタイプの奴だこr」
「grrraaaaaa!!!!!」
「うおっとあぶねえ、ぎりぎりだったー……」
俺の話を聞こうともせず俺に殴りかかる鬼。そこから鬼の猛攻が続くが、全て間一髪でかわす久米仙人。
しかし仙術も使えないから有効打が無いな…どうしようか。ああ、そういえばいいものがあるでは無いか!あれを使おう!
「サーヴァント、セイバーにマスターである久米仙人が令呪をもって命ずる!」
「grrdddaaaa!!!!」
「セイバー、今すぐここに来い!」
直後、鬼の両足を何かが斬り裂いた。
「gyyyyaaaaaaaaa!!!!!!!」
その両足を斬り裂いたのは、茶色の髪をサイドテールにした綺麗な女性だった。
「サーヴァント、セイバー、ローラン。命令により馳せ参じたよ。……マスター、ここどこ?日本?」
「すまんなセイバー、ここ、日本じゃねえわ」
「む、ならここはどこなのさ」
「ん?幻想郷」
「幻…想郷?聞いたことないね。知識として入っていないということはここは異界の土地なの?」
「ま、そういうことだね」
「gyaaaaaaa!!!!!⁉︎??」
「とりあえず、あいつを気絶させちゃってよ」
「了解っと」
ローランが返事をしてすぐに、鬼が死んだように倒れた。
「おいセイバー、まさか殺してねぇよなお前!」
「安心してマスター。気絶させただけさ」
「ならいいんだが……、っとセイバー、お前周りに見つかると色々まずいから姿消せ」
「おっとそうだったね、確か目撃者は殺さないといけないんだった。それじゃあ僕は姿を消すよ」
そう言ってローランは姿を消した。と言っても姿を消しただけなので、普通に喋れるんだがな?
さて、俺も避難している人達に鬼は去った、って知らせてやらんとな。ついでに、さっきの鬼の両足直して、そうだな、仙人じゃなくなったし、次は鬼なんていいんじゃねぇか⁉︎よっし、ならなおさら早く治してやんねえとな!
ーーーー
「………ってな事があった訳よ、どうだ⁉︎俺カッコよくね?」
「いやおじちゃん、それ絶対嘘でしょ」
「なんでそう思うんだ?」
「だってその鬼って歌仙さんの事でしょ?」
「そうだが、それが?」
「あんな人畜無害な鬼にそんなことできるわけないよ!」
「だってさー歌仙さん」
「歌仙さんって呼ぶのやめてください!なんかぞわぞわします!」
「じゃあ歌仙ちゃん、今の話は嘘?本当?どっちかな?んー?」
「喧しいです古雅さん!その名前だって私がつけた名前なんですからね!立場とかわかってます?私は親で、古雅さんは子なんですよ?」
「じゃああれか?お袋って呼んだ方がいいのか?」
「そういう問題じゃありません!」
「うぃ〜邪魔するよ〜!」
「ほら萃香!また飲んできたのか?飲み過ぎは駄目だとあれ程言っておいたのに全くこの鬼は……」
「おぉ〜奏多じゃないか〜‼︎私はなぁー!お前が大好きだぞー!」
「ちょっ!こんな人がいるところでそんなこというなよ萃香!」
「ひゅーひゅー!若いっていいねぇー!」
「告白といえば古雅さん、白蓮さんにその後告白とかしました?」
「したけど、振られちまった!けどいいんだ、こんな可愛い娘さんに毎日会えるんだからもう俺はそれだけで幸せだぜぇ」
「考えていることがもはやおっさんですね古雅さん…(まぁでもちょっと嬉しいかなっ)」
「ん?なんか言ったか歌仙ちゃん?」
「なんでもありません!」
俺はこの生活が大好きだ。だからこそ、この居場所を命に代えても守り抜いてみせる。これが、久米仙人が餓鬼、古雅善喜に堕ちてまで手に入れたかった『愛』のカタチだから。