幕間2
元来強気で人からも男勝りであると言われている蛍だが一つだけ苦手なものがあった。それは、暗闇。
「せめて誰かいてくれたらなぁ」
ほとんど止まることなく進めているため進行速度は確かに高い。だが、地理やその地域の特色などは知識として詰め込まれていても実際に頭の中でその通りに動けるとは限らない。もしそうであれば方向音痴なんていないだろう。蛍も女性ならではというべきか少しそういった気質もあった。ゆえに彼女はまだ人間国にいる。それでも魔国には近づいているのだが。
「もう、汗でベタベタだし……」
小さく息を吐くと体の法力を巡らせると体内にある疲労などが取り除かれていく。それを表面上まで持っていくと体の汚れ、服の汚れなども消えていく。しわも無くなりまるで洗い立てのようなフレッシュさだ。
「……お風呂入りたい」
だけども乙女心としてはゆっくりお風呂に入りたいものだ。それにこんな闇。あるのは星空の輝きだけ。もしそばに誰かがいればロマンティックで恐怖など感じさせないが一人ではむしろ星の輝きが恐怖をあおる。
せめていつも使っている熊のぬいぐるみでもあれば恐怖が和らぐような気がするのに。
「早く帰りたい、早く帰りたい、早く帰りたい」
時折現れる流れ星に強く願う。そしてもう一つの願掛けもする。また、アイツに逢えたなら……。
魔法やら法力やら非科学的なことが起きているのだから流れ星が願いをかなえるというような非科学が起きてもいい気がするから。