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Dominator  作者: 秋刀魚3号
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待ってない方も待ってた方も、お待たせしました。

「やあ、待っていたよ」

仲居に案内された個室には、アレックス一人しか居なかった。「警備は?」と和也が尋ねると、アレックスはニヤリと笑う。少し飲んでいるのだろうか、と和也は思った。

「ガードマンなら居ない。聞き耳を立てられては敵わないし、君相手では意味がない」

「今すぐ俺がお前を人質に取ったらどうするつもりだ」

それはない、とアレックスは苦笑する。君はそんな回りくどい事をせず、邪魔となったら殺すだろうからな、と彼は付け足した。

ところで、とアレックス。

「今更ながら、君はものを食べる事が出来るんだな」

「ああ。俺の…正確にはこのA-1というサイボーグのコンセプトは人間と機械の融合らしい。初期のサイバネティクス思想と限りなく近い事が、技術の発展によって可能となったんだと」

所長がそう言ってた、と運ばれてきた飲み物を飲みながら言う。

「俺の体内に入った全ての物質は、ナノマシンが制御する。例えば今飲んだ炭酸飲料の中に含まれる砂糖とかカフェインとか、そこらへんの物質は全てがナノマシンによって分解され、エネルギーを取り出した後に排泄する。他の有用な物質は貯蔵される。もし身体の一部が破損した時、その物質を使ってある程度の修理をすぐに行えるようにな」

成る程、とアレックスが相槌をうつ。

「その物質は、他の事にも使えるのかね?」

「他の事?」

「ああ。例えば、欲しい時にグラスとワインを作ったりとか」

質問が余りにもバカらしくて、和也は笑ってしまった。

「理論上は作れるはずだ。設計図はCPUに入ってるから、そこにデータを打ち込めばすぐにでも出せる」

「ふむ。弾薬も作り出せる、ということか?」

「少なくともPRAで承認された武器は生み出せる。AEEのは銃弾を作れるかどうか、といった具合だな」

「敵の銃も作れるのか?」

アレックスが驚いたような表情を浮かべ、身を乗り出す。コップが倒れそうになり、和也は慌てて抑えた。

「構造さえ理解分かれば、こちらの銃を組み替えることで作り出せるかもな。試したことは無いが」

「…そんな事は知らなかったが、それなら好都合だ」

は?と、間抜けな声を漏らす和也。アレックスの真剣な顔を見て、戯言でそんな事を言ってる訳ではない事を悟ると、彼も真剣な表情になった。

「三週間前の事だ」

アレックスは続ける。

「AEEから、我々にある兵器の設計図が送られた。完成図を見た時は強化外骨格(SES)の一種かと思っていたが、解析を進めるうち、それはSESなんて生易しいものではない事が分かった。サイボーグの強化版、とでも言うべきか…ああ、焦れったい。もう見てもらった方が早いかもしれんな」

言うと、彼は傍に置いたバッグからタブレット端末を取り出す。それを和也に手渡し、「どうだ?」と聞く。

確かに、ただのSESではない…どころか、人型であることを除いて何一つ共通点は無かった。どちらかというと、サイボーグである和也の方が近いかもしれない。

頭部ユニットに装着されたセンサー類やCPU。要所要所のブースターを見るに、飛行か、もしくは滑空が出来るのだろうか、と和也は推測する。そうしてページをめくっていく内、和也はある事に気付く。

「…俺に似てるな」

「気付いたか」

確かに、外装やブースターの配線などは和也に無いものだ。だが、頭部ユニットのセンサー、CPUなどの配置にカーボンナノチューブ(CNT)を使用した筋繊維。そして何よりも目を引いたのは、機体及び武装の修復、形成機能。

「驚いたよ。君が元々AEEで開発された物ということは知っていたが、まさかこんな事まで計画されていたとはね。恐らく他のサイボーグでも似たような計画をしているのだろうが、これが敵に回っていたかもしれないと思うと…少しゾッとするな。戦闘機をけしかけても勝てない気がする」

「で、AEEは何故こんなものを?」

「スパイからの情報によると」

アレックスは和也からタブレットを受け取ると、いくつかの顔写真を表示する。

「今から約一ヶ月前、AEE軍内部でクーデターがあったらしい。その首謀者がこの女だそうだ。名前はレイ。階級は少佐で、機械化部隊『オートマタ』の隊長だ。こいつは恐らく、君の…A-1の次に開発されたサイボーグだろうな」

「…これを俺に見せて、どうしろと?」

和也は再び手渡されたタブレットの画面を眺めながら、不満げに言う。

「注意して欲しいんだ。ブレンダンは聡明だが、その実は感情的で、かつ臆病だ。君に必要以上の情報を渡すのは不要と考えているのかもしれないが、私はそうは思わない」

「だけど、ここまでの重要機密を俺に見せるのは…」

「もうすぐ、戦争は再開する。その時の為に、腹心は多い方がいい」

今日のデータを全て渡す、とアレックスは言い、メモリを和也に握らせた。

「良く、考えてみてくれ」

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