エピローグ〜風の知らせ〜
ーあれから1ヶ月のときが経った。
あの日からあたしたちは1度も集まっていない。
フェエリスとなったあたしを含めた4人はそれぞれの国に戻り報告やこれからの計画などで忙しかったし、リィミルとキーチの2人も荒れてしまった森の修正やら魔物の管理のしなおしでやはり忙しく過ごしていたらしい。
そんなあたしたちに集まろうという連絡があったのはつい先日。武器を通じて6人は伝達が可能らしい。
「ちょっと早く着き過ぎちゃったかな?」
あたしが森についたのは予定よりも1時間も早かった。
せっかくだし塔までゆっくり歩こう。そうきめて歩き始めたとたん後ろからトントンと肩をたたかれた。
「イズさん!!」
久しぶりと言ったイズさんは前よりも自信のある感じで好感度があがった。
せっかくだから少し2人で話そうか、と2人でゆっくり歩く。
「えっ!?イズさんってアーシアの参謀だけじゃなくて王さまのいとこなんですか!?」
びっくりしたー!
けど、やっぱり選ばれるくらいだから魔力だけじゃなくてそれなりの身分とかも必要なのかな?とも思った。
「あれ?言ってなかったっけ…」
そうして少しだけ意地悪そうに言った。
「ほかの人にも聞いてみたらいいよ。」
って。口ぶりからイズさんはみんなのことある程度知っているみたい。さすが参謀だなぁ…
「あ、俺先に呼ばれてるんだった!」
先に行く!向こうで、といって飛んでいってしまった。
1人で歩いていると湖のほとりにいたのはサーファスだった。
「サーファス!」
サーファスは一瞬驚いてた顔をしてたが、ニコッと笑ってこっちを向いた。
「久しぶりだね。」
「お姉ちゃん、元気?」
「あぁ、とても。」
お姉ちゃんのこと話すサーファスの顔は好き。目が優しそうだもん。
「たまには会いに来ないと怒ってるよ。」
うぅ、たしかにここ数ヶ月まともに会ってない。
「でも、行きづらいよー。だって王子の館でしょ?」
そう、何を隠そうサーファスのお父さんはウォンティアの王さま。次期王で近衛隊長って…
やっぱり強いなぁ…
あたしがそろそろ行くっていったらもう少ししてから行くっていってサーファスととりあえずばいばいした。
「レシェナ!!!」
もうすぐ塔につくところで会ったのはまさかのリィミルとキーチだった。
「あれ?久しぶり。塔にいるんじゃなかったの?」
リィミルと会うのは2回目じゃない。歳も近く女は2人だけ。必然的にあたしとリィミルは仲良くなった。この間もリィミルにキーチのことで相談されたところだった。主に恋愛関係で。
でも、やっぱりうまくいってるみたいじゃん。
両思いなのは目に見えてわかるのに気づいてないのは本人たちだけだ。
「キーチ、会ったら言おうと思ってたの。」
そう、あたしは言わなきゃいけない。
「ごめんなさい。あなたの人生を狂わせてしまったことはあたしたちの責任だから。」
これだけは言ってけじめをつけなきゃいけない。
キーチはあたしに謝られると思っていなかったのか驚きの表情でこっちを見ていた。
「いいよ。別にアンタたちのせいだけじゃないし。」
それより、とキーチに呼ばれてリィミルからは声が聞こえないところに。
「俺は、元の世界よりリィミルのこと選んだんだから。だから…」
謝るくらいならと思うなら協力しろよな、って。
悪いと思いながらも吹き出してしまった。
だって、顔真っ赤なんだもん。
そのあとリィミルにそっと
「頑張ってね」
って耳打ちしたらリィミルにレシェナもだよ、って言われてしまった。しかも、今1人で塔にいるからチャンス!って…
それでもせっかくだし、と2人にあとでと告げて足早に塔に向かった。
「シルベっ!」
塔の地下にシルベはいた。
「レシェナ、久しぶり。」
あの日からシルベに会うのは初めてですごく緊張した。
「ここの空間の魔力の流れ、綺麗に戻ったんだね。」
照れ隠しにそんなこと言ったけど本当はこの1ヶ月何してたのかとかを聞きたかった。
「だな。国に戻っても慌ただしかったし、久しぶりに落ち着いた。」
ちょっとテレパシー?
「あたしも大変だったなぁ…お母様、女王に報告したりとか…」
本当に忙しかった。
「母親が女王…?」
「言ってなかったっけ?風は女系だから、あたしのお母様が女王なの。」
「そうじゃなくて…レシェナって、姫?」
あぁ、そっちか。
「そうだよー、見えないってよく言われるけど。」
あれ?シルベ驚いてる…
しばらくして落ち着きを取り戻すとシルベは意を決したようにこっちを見た。
「俺も、王子なんだ。ファイアリアの…」
て言っても今の王は兄さんで俺が王になることは多分ないけど、と言った。
「じゃあ、似たもの同士の環境で育ったんだね、あたしたち。」
なんか嬉しい。
「あのさ、俺…」
「誰っ!!!」
あたしが声をあげると扉のあたりからガタガタ、と大きな音がしてみんな、リィミルにキーチ、サーファス、イズまでもが姿を現せた。
「あのねぇ、風の妖精のあたしにバレないとでも?」
みんなは居心地悪そうに笑っている。
シルベは下を向いて震えていたかと思うと顔をあげて4人を睨んだ。
「ふざけるなぁ!!!!!」
これから妖精たちの平和を守るあたしたちがこれでいいんだろうか…?
とりあえず、今が平和だからまぁいいか。
最後までありがとうございました!
初めての連載でしたがなんとか完結することができました。
※誤字脱字はお知らせください。