〜闇のなかの真実〜
ーいよいよ、か。
「手順は頭に入ったな?」
イズの最後の確認にうなづく。そして、みんなの顔を見回して1度目をつぶる。
ー大丈夫。
ー炎よ、我が名のもとによる契約において命じる
ー水よ、古より通ずる繋がりをもとに命じる
ー風よ、力を司るものとして命じる
ー土よ、汝のもつ力の媒介者として命じる
「「「「太古に別れし4つの力、今ここに集うときその象徴を示せ。」」」」
目の前が眩しいほどに輝いたかと思うと、次の瞬間その光が四散して2人の人影が現れる。
ん…?2人???
「一体なんなんだよ!急に!!」
「そんなこといったってリィにもわかんないよー」
そこにいたのは黒い髪と目の少年と銀色の髪と目の少女。少年はかっこいいが少しきつい印象が少女は綺麗だが子供っぽい印象がある。
「どういうことだ?」
いち早く我に返ったのはイズだった。
その声にあたしたち3人も我に返る。
そうだ、2人ってどういう?
だって、ティターニアは1人のはずでしょ?
それにここには1種族1人しか入れない領域。
それなら、もう1人は何者なの?
「ティターニアはどっちだ?」
シルベの固く鋭い声が響く。今までの優しさの欠片も感じられなかった。
「ティターニアなんていないよ。いるのはリィとキーだけだもん。」
…ティターニアが、いない?
「どういうことだよっ!」
「ちょっと、落ち着いてよっ!」
シルベの雰囲気がいつもと違う。いつもは優しくてちょっと人見知りだけど明るくて人当たりがいいのに…別人、みたい。
「待ったー!」
待ったをかけたのは黒い少年だった。
「俺はキーチ、そしてコイツがリィミル。アンタたちがいうところのティターニアだよ。」
「ティターニアじゃないもん!リィはリィだもん!」
お前は黙ってろ、とキーチに言われたリィミルはシュンとして大人しくなった。
「コイツがティターニアなら俺は闇の妖精。ティターニアが4種族の妖精の管理をしているなら俺は魔物の管理をしてる。」
といっても干渉できるのは一定までだけど。と付け加えた。
「魔物の管理?なら、このところ魔物の出現率が高いのは…」
サーファスがキーチを睨む。
「ちげーよ、俺はそんなに魔物に干渉できねぇよ。むしろ逆。止めたくても止められないんだよ。」
どういうことだよ、3人は騒ぎだしたがそれにうるさいっ!と一喝してあたしはキーチに向き直った。
「どういうことか、教えてください。」
最後に響いたのはあたしの声。
ーそれは5年前。
目覚めたとき目の前にいたのはリィミルだった。
リィミルはティターニアとしてこの森に生まれこの森で育った。森の魔物とたった1人でただただ4つの宝玉を守るためだけに。
「ごめんね?リィが1人じゃなにもできないダメな子だから…」
あなたを巻き込んでしまって。泣きながらリィミルはキーチに謝ったのだった。
「俺はもともとこの世界の存在じゃない。異世界からリィミルによって召喚された。魔物を管理する闇の妖精として。」
そういったキーチの隣でリィミルはとても悲しそうな顔をしていた。
「聞いていい?どうしてリィミルは1人で管理しきれなくなったの?」
キーチは複雑な表情でこちらを見返して言った。
ーアンタたちのせいだよ。