〜土のもたらすもの〜
ーあと1人。
なんだかんだあって、一晩あけて朝。
やっぱり、シルベとサーファスはなんかぎこちない。シルベが一方的にだけど…
「さぁて、どうします?」
あたしが尋ねるとサーファスが真面目に思案していた。ひとしきり、ぶつぶつ言ったあと、はっとしたように顔をあげた。
「ごめん、忘れてた。ここについたらこれ使えって言われたんだった…」
そうしてサーファスが出したのは手のひら大の魔石。これ、
「これ、ここでも使えるように細工してある移動石らしいよ。」
ニコニコ言われても、あたしたちのイラつきを助長するだけってわかってやってるな、こいつ。
シルベも眉間が…
「サーファス、お前…」
転送先にいたお方も大層お怒りでした。
「はじめまして、ファイアリアのシルベです。」
「ウィンディアのレシェナです。」
シルベに続いてあいさつすると、こっちを見てくれた。
「アーシアの代表でイズ、よろしくな?」
土の妖精:アーシアの代表さんは黄色の髪と目の硬派そうな人。でも、優しいなぁ…
イズさんからいろいろ説明がある、ということであたしたちは近くの開けたところに結界をはってちょっと休憩。
「なるほど…」
イズさんによると、ティターニアにあうにはまず4人である魔法を発動させなくてはいけないらしい。
その手順とか役割とかの説明はわかりやすくて助かった。さすが、アーシアの参謀。
「じゃあ、明日の昼。」
魔法を発動するのを明日の昼、あたしたちの魔力がいちばん高まる時間にして、今日は休養ってことになった。
シルベとサーファスは少し周りをフラフラしてくるということなのであたしとイズさんが残る。
「イズさん!改めまして、レシェナです。」
「こちらこそ、よろしくな」
アーシアはウィんディアとは正反対の位置に領地がある。
普通にしてたら関わる機会なんてないって思ってたから話せて嬉しい。
「イズさんも魔法が得意なんですよね?」
たしかサーファスがアーシアといっしょに魔物の殲滅に行った時にいっしょだったアーシアの参謀は魔法が得意って言ってた。あのサーファスが言うくらいだから相当すごいのかな。
「そうでもないよ。俺はサーファスのように魔力コントロールがうまいわけでも君のように魔力が強いわけでもないしね。」
微笑みながらイズさんがいう。
「だけど、人より少し頭を使うのが得意だから、それを使って魔法を使っているだけだよ。」
頭を使った魔法。
意外な答えに戸惑う。頭を使う、そんなの考えたことなかった。あたしはいつも感覚で使っていたからかな…
「頭を使うって…」
そうだなぁ、といってイズさんが魔法の縁唱をした。
「あっ…」
作られたのは普通に土の壁。アーシアは防御魔法が得意だから壁を作れることは普通、だけど。
「斜め…?」
イズの作った壁は上に向かうにつれて傾いていた。
「これは、対遠距離攻撃用の壁なんだ。」
となりに真っ直ぐな壁を作って少し離れたところから攻撃してみて、といわれ軽く攻撃する。
「あ!」
真っ直ぐな壁は表面が結構削れたけど斜めの方は少し剥がれただけ。
「物理学の応用。これなら、魔力が少なくてもコントロールに自信が無くてもできるし。俺、そんなに才能あるわけじゃないし。」
なるほど…
「才能あると思うよ?魔力が強いのもコントロールがすごいのも考えて魔法を使うのも…全部才能であって個性だよ?」
だって、あたしには頭を使ってとかできないもん。
見上げたイズの顔はポカンとしてたけど、そのあとニコって笑って頭をなでてくれた。
「レシェナ!イズ!!」
なんだかんだで時間がたってたみたいでシルベとサーファスが競いながら帰ってきた。
ーこんなに平和でいいのかしら?
そして、翌日。
あたしたちはここに来た目的を果たすため行動にでる。