〜水の貴人〜
ー歩き始めた道の景色はいつまで経っても変わらない。
「なんか、なにもないねー」
「あぁ、目印もないしな…」
けど、おかしいと思うんだよねー。だって、ここってそんなに広いところだっけ?周りは湖だし、真ん中は開けてるって聞いたからそろそろどっちかに着くはずなんだけど…
「このあたりで位置測定使えるか?」
あー、結構歩ったし範囲にはいるかな…
うなづいて魔法を使う。
「あ…」
反応入った。この反応…
ーレシェナ
この頭に響く声。
「おいっ」
走り出した。だって…
「サーファス!!」
やっぱり、そこにいたのは水の妖精:ウォンティアの代表サーファスだった。
「ひさしぶりだね、レシェナ。元気だったかい?」
相変わらず綺麗な透明感のある水色の長い髪に海みたいな瞳。うん、元気そうだね。
「レシェナ!!そいつ…」
あとを追ってきたのだろう。息を切らせたシルベが剣をかまえて立っていた。
「ファイアリアの代表かな?初めまして。ウォンティアの代表、サーファス。これからよろしく頼むよ」
やっぱり大人の男の人って違うなぁ…そう思わせる笑顔だった。
「相変わらず美人だねー」
「男に美人とか言わないの」
なんとなく空気がだらだらしてきて、サーファスに絡んでみる。
「おい、サーファスさんってウォンティアの代表ですよね?何に特化してるんですか?」
あ、シルベのこと忘れてた。
「んー、そうだなぁ」
そして、サーファスは如何にも意地が悪そうな笑顔で言い放った。
「試してみるかい?百聞は一見に如かずってね。」
「臨むところ」
あー、サーファスったら…
シルベも乗っちゃダメだって…
嫌な感じーというか嫌な予感?
「ねぇ、2人とも本当にやるの?」
あれから、2人をそれぞれなだめてみたけどシルベはどんどん機嫌悪くなるし、サーファスはなんか面白がっててもう手のつけようがなくなってしまった。ここまできたら諦めるしかなさそうかな…
「わかった。じゃあ、約束。お互い大怪我は負わせないこと。ギリギリで止めるかかすり傷程度にしてね?」
かすり傷くらいならすぐに治せるし…
「わかった?」
シルベはやっぱり不機嫌だったけどうなづき、サーファスはわかったよーって軽く返事をした。
「では、始め。」
2人はあたしがはった結界のなかでそれぞれ、相手を見つめる。シルベは炎をまとわせた剣、サーファスは愛用の透明な短剣を構えている。
ー先に動いたのはサーファスだった。
カキンッ
流れるように2人の剣がぶつかる。でも、おしているのはやっぱり、シルベの剣舞のような綺麗な剣。
ザワッ
あ、
サーファスの魔法だ…空気中の水が集められている感じがする。
シルベの剣をギリギリのところで避けて反撃がはじまる。
ヒュッ
空気を斬るように投げられたのはサーファスの2本の短剣。シルベは当然のように避けるけど、あの剣は…
「はっ?」
氷の剣。そう、サーファスが魔法で作ったもの。それが水に戻り、氷の矢となりシルベを襲う。
ーやっぱり、サーファスの勝ちか…
「えっ!?」
見えた光景はシルベの剣が氷の矢を弾くところ。その炎をもってして。
すかさずサーファスは集めておいた水でいつものアイツを、氷龍を作る。
サッ
サーファスの氷龍の牙がシルベの喉元に、シルベの剣がサーファスの心臓で止められたのは同時だった。
呆然しているあたしをおいて2人は嬉しそうに笑っていた。
ーまさか、ここまでやるとはな…
サーファスは心の中でつぶやく。いい勝負のお礼に1つ教えてやるか。
「僕とレシェナの関係は君が思っているようなものじゃないよ。」
これで、少し素直になるといいんだけど…
ーまさか、引き分けなんてね…
サーファスが勝つと思ったのに…
だって、サーファスはウォンティアの魔導騎士隊の近衛隊だし。しかもその魔力コントロールから水を生き物のように操れるっていうすごい人だし。水の貴人とか呼ばれてるし。あれ?鬼神とかけてるんだっけ…たしかに戦ってるときのサーファスって龍を使う鬼みたいだし。
そう考えると、シルベって何者?
とか、考えてシルベのほうに目を向けたら顔が真っ赤だった。なんでだろ?
「待たせてごめんね、レシェナ?」
「あ、ううん。大丈夫だよ。」
あれ?シルベ、なんかサーファスのこと警戒してる?
「そういえば、ルーナ元気?」
そうだ、サーファスに会ったらそれを聞いておこうと思ってたんだっけ!
「あぁ、相変わらず元気だよ。」
サーファスに顔が心なしか優しくなる。まぁ、当たり前か…
となりでは不思議そうな顔でシルベがこっちをみていた。
「あれ?行ってなかったっけ…サーファスはあたしのお姉ちゃんの旦那さんなの。他種族間って珍しいよねー」
あら?シルベが固まってる。
「サーファス!!」
「ごめんごめん」
よくわからないけど、いつの間にか2人が仲良くなってたからまぁいいか。
そういえば、あとでサーファスが近衛隊長って教えてあげたらびっくりしてたのはここだけの秘密。