第9話: 神様同盟登場!って言うかライオンってなんなん?
太子さんはアマテラスさんの痛々しい姿を見ると、いきなりがっくり膝をついて泣き出した。
「姫!・・・なんちゅうこっちゃ・・・堪忍や!堪忍やで!ワシがしっかりしとったらこないなことになれへんかったんに!」
でもアマテラスさんは知り合いが来て安心したんか、涙をぬぐって笑顔になる。
「ぐす・・・ありがとう、ウマヤド君。ガラが悪くて涙もろいのは相変わらずだね・・・でもこの子たちが慰めてくれたから・・・」アマテラスさんがそういうと、おっちゃんはわたしらの方を向いて頭を下げた。
「夏菜ちゃん、そんでそっちのお嬢はんは・・・あぁ美紗ちゃんね、あ、いまちゃん付けアカンのか?小路さんと田島さんやな。」
「え?あーし名前いってないよ?」田島は驚いたが、おっちゃんは笑って、手を振る。
「ちゃうちゃう!おっさんはそう言うの分かんねん!気にせんとき!」うわー、めっちゃ気さくや。わたしと田島は一発でこのおっちゃんが気に入った。
「おっちゃん!別に名前呼びでええで!なんちゅうてもウチは檀家やからな!」
「お?なんや自分、よう分かってるやん、そう言うん大事やで!いや、何にしてもありがとう。姫はな、ワシの大事な大事な友達やねん。法要をしとったら、いきなり東の方で叫び声が聞こえてやで・・・なんやて思たら淡路島で姫の泣声するやんか。ワシびっくりしてもうてな・・・」
わたしが、アマテラスさんから聞いた話を太子さんに言うと、彼はうーんとうなってしばらく髭を撫でていたが、膝をポンっと打つと、「やっぱりそないなったか・・・スサノオとイナちゃん、ナムジがおらんの痛いわ・・・せやけど補陀落いったらしばらく戻ってこられへんからな・・・ちょっとまってや・・・」太子さんはそういうと、スマホを出して何人かに電話する。
「おう、真魚け?自分いまどこおんねん?え?ドイツ?ビール美味い?お前なぁ、みんな奥の院におるて思うてんねんから、アチコチほっつき歩くんやめえよ。ちゅうかはよ帰って来てんか。えらいことなってんねん。そうそう、ほな頼むで。」
「小角はん?あ、どーもどーも、お久しぶりです。いえいえ!こっちこそお世話になって!いやほんま、クマラさんってめっちゃワガママやしね!鞍馬の天狗衆もあれでは大変やわ~。あ、すんまへん。電話したんはそうやのうて・・・あ、知ってる?さすが!ほなよろしゅう。え?クジラ持ってきてくれんの!?ほな今日は関東炊きやね!」
そこでいったん電話を切ると、姐さんどうしょうかな・・・気ぃ短いし話こじれそうやけど・・・いや、せやけどここは一発あの実行力にかけたいなぁ~、あ、あとアイツ呼ばなアカンわ、というと再び電話した。
「ごめん姐さん、いまどこ?あそうか、秋には祭りやしな。ちょっと淡路島来れる?あ、そうそう。大変なんよ。待って待って、まだそないに怒らんといて。みんな来るし。ほなよろしゅう。」
「みちざね、淡路島集合いますぐ。え?いま大宰府?おまえ関西愛どこいったん?うどんはウエスト?は、何言うてんねん、ええからはよ来い!」
太子さんが電話を切ると、しばらくしてリンリンと玄関で音がして、はーいと言って田島と迎えに行くと関西弁の一団がワサワサやってきた。
「ちょ、太子ぃー!オレめっちゃビール飲んどったちゅうねん!それオマエ中断して呼び出すとか!」
「さてさて、コロとベーコンと赤身やけど・・・おお嬢ちゃん、これを太子はんに渡してくれへんか?」
まず、甚平を着た長髪の兄ちゃんと、Tシャツと短パンを着て、キャップを後ろ向きに被った爺ちゃんが入ってくる。
その次は、白いスーツ姿のお姉さんと眼鏡でサラリーマンの兄ちゃんやった。
「ウマちゃん!どないなってんのホンマに!ウチもう腹たってしゃあないんやけど!!」
「兄さん!ないわぁ~マジないわぁ~!僕いまからごぼ天うどん食おう思うてたのに!」
なんやなんや、この人らは。わたしらが唖然としていると太子さんがやって来る。
「お!自分ら超はやーい!いや、持つべきものは友やねぇ。ほな入ってんか、あ、夏菜ちゃん美紗ちゃん、悪いけどこいつらに茶ぁ出したって!」
いや、どないして湯沸かしたらええか知らんし、茶葉はどこにあんねん?そう思っていたら、いきなり茶の入った急須が出てくる。あ、そういえば田島もさっきこないして茶を出してたな。
しかし、スーツ姿のお姉さんがプリプリ怒ってきた。
「ウマちゃん!セクハラやで!コンプラ違反やで!ええでアンタら、そんなんしやんでも!ちょ道真!手伝わんかい!」そう言いながら、みんなにお茶を配るんは、スーツ姿のお姉さんとサラリーマンのお兄さんがやってくれた。
ほんで、全員を座らせると、太子さんはコホンと咳ばらいをする。
「えーと、ご隠居。多分全員は知りまへんな?みんな、自己紹介してや!」
「いや、オレご隠居に会うたことあるで?ご無沙汰です、マオっちです!またの名を空海、仏教界のスーパースターです!」
「イザナギ殿、お久しぶりでんな・・・役小角でっせ。覚えてはりまっか?やっぱりツギハギはあきまへんな・・・」
「太子!ウチは言わんでええやろ!久しぶりやん、お爺はん!・・・なんなん?おまえ誰やねんみたいな顔してから・・・神功皇后!別名 八幡大菩薩の!あ、夏菜ちゃんと美紗ちゃんいうたか?あんたらはオバちゃんのこと八幡さんていうたらええからな!」
「イザナギ様!僕のことは知ってはりますよね!ほら日本三大怨霊の!菅原道真、またの名を天満大自在天神!」
「なにこのお兄さん?なんか一生懸命おれすごいオーラ出してるけど。中二っぽくない?」田島はお兄さんの言い方にちょっと引いてたけど、わたしはびっくりしてた!すごない!?弘法大師さん、大峰山の役行者、八幡さん、天神さん!すごいやん!神さんと仏さん勢ぞろいや!わたしが興奮してると、太子さんはドヤっ!という顔をした。
「そ!ワシら関西神仏ライオンズクラブ!ワシらが来たからにはもう大丈夫やで!」
ご覧いただきありがとうございます。
ついに勢揃いしました、「関西神仏ライオンズクラブ」!
聖徳太子に弘法大師(空海)、天神様(道真公)……。 日本中のみんなが手を合わせるような偉い神様・仏様たちですが、この物語では「あくまで人間臭く、身近な存在」として描いています。
サラリーマン風の道真さんや、かりゆしでガラが悪い太子様。 チーム名があえて「ライオンズクラブ」なのも、彼らが特務機関のような仰々しいものではなく、「地元の名士たちが集まる奉仕団体」のようなノリで日本を守っているからです(笑)。
さて次回は、この個性派メンバーが、とある「関西のソウルフード」を囲んで作戦会議を行います。
偉人たちの人間味あふれる「井戸端会議」、どうぞお楽しみに! ブックマークや評価で応援していただけると嬉しいです!




