第49話: 遂に明かされる日本の秘密?中身空っぽってどういうこと?
お祖母ちゃんちの土間でしばらく待っていると、お祖母ちゃんがかなーり高齢の、その割には筋骨隆々の、作業服を着て麦わら帽子を被ったお爺さんを連れてきて、それを見るとおっちゃんが立ち上がって一礼した。
「お久しぶりっす!ご老体、覚えてはりまっか?太子です!厩戸皇子です!」
おっちゃんは一礼すると、よほど嬉しいんか、そのお爺さんの手を両手で握った。
「お、おぉ……ウマ君か。しばらくぶりやなぁ〜、廃仏毀釈のとき以来やから、150年くらいか……いや、あん時はすまんかった。ホンマなぁ、人間ちゅうのはかなんわ……我の都合の為に神を利用するだけでは飽き足らず、あろうことが仏に手ぇ出しよってからに……いや、ホンマなぁ、ウマ君が八葉の老師様方に執りなしてくれへんかったら、大和の神々ごと、この国全員地獄行きやったからなぁ…しかも阿鼻地獄。文殊大師って、あの人マジなんなん?ドライすぎひん?『日の本の民、仏法僧への弾圧マイナス10,000点、ハイ地獄行き、ハイ阿鼻地獄。じゃ、地蔵くんよろしく。』って……。阿弥陀様とかメッチャ引いてなかった!?」
「いやいや!そんなんもー、お互い様やないですか!まぁ〜でも確かにあの後、阿弥陀様が来て『ホンマごめん!アイツちょっと切れ味鋭ど過ぎてワテも困ってんねん!』っていうてましたからね…あ、せやけど、ワシもあの一件で阿弥陀様と仲ようなれましたから!
まぁねー、阿弥陀様以外の3人の如来さん達って、ぶっちゃけこの地球にそんなに関心ないや無いですか。ほんであの文殊のボケとか、『公平公正が一番重要、オマエ地球人エコひいきしすぎだから』とかぬかしよんねん!
あと、普賢も普賢で、アイツ『俺ぁよー、地球の男共が死のうが地獄に落ちようがどうでも良いけどよぉー、アイツらのバカの所為で女が不幸になるってなぁ許せんのよ。だからテメエら観音チームの言う事ちったぁ聞いてやっても良いが、女泣かすなら全員地獄行きだかんな?覚えとけバーロー!』とか言いやがって!なんやねん、ちょっと自分がおねえちゃん達にモテモテやからって!」
「お?おぉ……そうか。まぁ、普賢大師が女人にモテモテなんは良う知らんけど、まぁ何にしても助かったわ。ほんで今日はなんやて?ある程度ガンちゃん(お祖母ちゃん、石長比売のことらしい)から聞いたけど、アマテラスにちょっかい出してるアホな人間どもがおるんやて?」
お爺さんがそういうと、お祖母ちゃんが「お父さん、ちょっとその前に」って言って、ウチらを紹介した。
「前に言うたやろ?わたしにも孫ができてんで。ほら、この子……夏菜子って言うんや。夏菜子、ひいお爺ちゃんに挨拶してあげて……」
「あ!すみません、挨拶が遅れて。ウチ、小路夏菜子です。えーと、お祖母ちゃんの息子やったお父ちゃんの娘で、太子町出身で、今は淡路島で公務員やってて……」
なんかウチは、緊張して上手いこと話せへんかったけど、お爺さんはウチを見るなり、「おぉ……」って言って、ポタポタ涙を流して、ウチを抱きしめた。
「そうか……アンタがガンちゃんの孫か……息子がおらんようになったときはショックやったけど……こないしてひ孫に会えるとはなぁ……夏菜子ちゃん、ワシがこの国の国津神の総領で、アンタの曽祖父、大山津見神や。そうか、ようやっとガンちゃんの血がこの国にも残るようになったんやな……」
お爺ちゃんは、ごつごつした手でウチを抱きしめ、頭を撫でると何遍もありがとう、ありがとうって言った。
ウチも、家族が増えたみたいで何となく嬉しかったけど、田島がボソッと
「夏菜良いなぁ・・・・・・羨ましい……」って言うので、我に返った。
「えと、ひい爺ちゃん、お祖母ちゃん、ここには大事な話があって来てん。爺ちゃんともいっぱい話したいけど、今はあんまり時間が無くて。おっちゃん、説明してくれる?」
ウチがそう言うと、ひい爺ちゃんは「そやったそやった」と言って、おっちゃんはここまでに起きたことをかいつまんで説明した。
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「なんやそれ……エライことやないか……」おっちゃんの説明を聞いたひい爺ちゃん、大山津見神はウーンと唸って腕を組んだ。
「そのー、なんちゅうの?与党の政治家連中がやったことはもちろんアカンねんけど、問題はそのことを中台八葉院が殊の外重く見てる、っちゅうこっちゃろ?なぁウマくん、クマラはん……千手観世音菩薩の作戦も分からんこっちゃないで?一昔前やったら、『人間の自由意思を尊重して~』とか言えたけど、いま人類がやっとること無茶苦茶やん?それを事件の首謀者の消滅、人類の大規模洗脳で済ますんやから、だいぶ穏健やと……」
えっ!ひい爺ちゃんまでそんなこと言うん!?ウチは爺ちゃんの手を握ると首をブンブン振って否定した。
「爺ちゃん!そんなん言うたら嫌や!爺ちゃんはウチらを仏さんの言う通りに動く人形にしたいん?」
ウチがそう言うと、爺ちゃんはウっ!と言って俯く。
「可愛い……ひ孫可愛い!……いやー、人生長生きするもんや。よっしゃ!このオオヤマツミ、クマラはんの作戦、賛成の反対、即時却下!ほんで、ウマくんよ、ワシは何したらええねん?」
ひい爺ちゃんに促されて、おっちゃんは太子町から持ってきた巻物を広げる。
「今回のことを色々考えてて、なんか妙なことに気が付いたんですわ……一つには、さっき石長比売はんが言うとった、『この国の男には芯が無い』っちゅう話で、叔母上は、それを『スタートラインが間違うとる』っていうとったんやけど……ワシはどうも、イザナギはんが嫁はんであるイザナミはんを亡くしてから、姫を生んだまでのことに関係しとるような気がしてましてな。ご老体、その辺のこと何か知りまへんか?」
おっちゃんがそういうと、ひい爺ちゃんは「それなー」って言った。
「ほら、古事記に書いてあるやん。神産みでワシら国津神が生まれたって。ほんで、クシイナダちゃんとかはワシの直系でな、オオクニヌシとかもそうやんか。そやけど、天孫系の神々って、そうと違うんよね~」
「ん?どういうことですのん?あっ、そうか……」
ひい爺ちゃんに言われて、何か知らんけど、おっちゃんは一人で納得してフンフンって頷いてる。
「おっちゃん、意味が分からんねんけど、どういうことなん?」ウチが訊くと、おっちゃんは「あぁっ」と言って皆に説明した。
「いや、今の今までワシも気付いてへんかったけど、ニニギノミコトってさっき言うてたやん?コノハナサクヤはんだけを嫁はんにして、あげく子供が出来たら自分の子とちゃう、って言うたロクデナシ……まぁワシが言う分にはエエやろ、皇族やし。せやけどな、よう考えたらこのニニギはんの父母っていうんは、男女の交わりから生まれた神さんと違うんよ。」
ここで、田島が急に身を乗り出してきた。
「どういうこと?それの何か問題なの?」なんか若干怒ってるっぽいけど、おっちゃんは「まぁ聞きぃや」って言った。
「ニニギはんの父親は、姫つまりアマテラスの息子の天忍穂耳尊やけど、この人は姫とスサノオが「どっちの言い分が正しいか」を競うためにお互いの持ち物に霊気を吹きかけて化生させた結果、生まれた神さんの一人なんよ。ほんで母親のヨロヅハタはんは、宇宙の根源エネルギーであるタカミムスビからポンッと湧き出た神さんでな。いうたらホムンクルス?みたいなもんやね。」
「なんだそれ?おかしいべ。姫もスサノオさんも、イザナギさんが黄泉に行った時の穢れを『筑紫の日向の橘の小門の阿波岐原』ってとこで洗った時に、その穢れから生まれた神さんだべ?
スサノオさんはクシイナダさんが嫁っこだはんで、いがべげど、姫の子供……ってか、それ子供って言うんだべが? 作りもんだべ。ほんでそいつの嫁っこも作りもんだべ。
作りもんと作りもんが結婚してら、その子供のニニギってな、人間でいうどごの何だべ? イザナギさんとイザナミさんは、ほんどに、そんただ事しだがったんだべが?」
「おっ!アレ坊、ナイス突っ込み!そうそう、そういう事なんよ~、なんや自分、何時の間にそんなん勉強したん?」
おっちゃんが言うと、アレ君はドヤ!って顔をした。
「どうだ!見直したべ!おいは、高野山で古事記勉強しなおしたべ!」
「あらまぁ、さっきから思うてたけど……男前なだけや無くて、なかなか賢い子やん。夏菜子、この子は?」
お祖母ちゃんがいうと、アレ君はいきなり起立して腰を直角におってお辞儀した!?
「すんません!おいは高橋・アレクセイ・銀次郎だす!夏菜子さんの……えーっと……友達!そう、友達だべ!ご挨拶もしねで偉そうなごど言ってまったす!申しわげねぇす!」
アレ君がそういうと、お祖母ちゃんがニヤニヤする。
「あら?あらあらまぁまぁ……友達?友達なんやね?ふーん……夏菜子、こんな時代やし、わたしは多様性って言うん大事や思うで?後なぁ、蝦夷の子は一本気で頼りになるからええんとちやうかな~。」
「まぁまぁ、ガンちゃん。ひ孫の婿とかそないに焦らんかてええ。せやけど、その坊が言うことはなるほどやな。確かにそや。お父はん……イザナギはホンマにそんなことがしたかったんやろか?ワシはなんとのう、お母はんであるイザナミの力を強く受け継いでるガンちゃんをニニギの嫁はんにしたったら、アイツもスサノオみたいに完全になれるのにって思うただけなんやけどな……せやけどあのボンクラ!従順で可愛らしいサクヤだけでええです!とかぬかしくさりやがって!アホがっ!命は循環するもんと不変のもんで一対なんじゃ!それが分からんさかい、アイツらの命は短うなったちゅうのに!……ほんでそれを、仏の教えで補えまへんかとかなぁ……ウマくん、それどない思うよ?あっ、そういうたら、ウマくんの後に密教とか言う気色悪いもんで天孫どもをパトロンにした詐欺師おったな?なんちゅうたっけ?えーと、ほら、その隅っこにおるヤツによう似た……あっ!オマエその張本人やないか!こら空海!こっちに来んかい!」
って、ひい爺ちゃんが言うと、真魚さんが直立不動で「ヒィィっ!」って言いながら、前に出てきた。
第49話をお読みいただき、ありがとうございます!
今回はついに、国津神の総領・大山津見神こと「ひい爺ちゃん」の登場です!
ひ孫の夏菜子にデレデレな一面を見せつつも、語られたのは日本神話の根幹を揺るがす「作りもん説」!
出番は少なめでしたが、高野山帰りのアレ君のキレッキレのツッコミが良い仕事をしてくれました(笑)。
そして最後の最後で、詐欺師呼ばわりされちゃった真魚さん(空海)。いやー、本当はそういうことじゃないんだけど……と思いながらも、国津神のトップから直々に詰められる大ピンチに、天才坊主はどう立ち向かうのか……!?
次回はいよいよ大台の第50話です!
「なぜ空っぽなのか?」「真の命とは何か?」という、さらに深い神話のミステリーに斬り込んでいきます。怒涛の展開が続きますので、引き続きよろしくお願いいたします!




