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第41話: 仏の顔も三度って言うけど、火で焼くのか、すり潰すのか選ばされる話らしいで?・・・

「でもさぁ、ウマくん、人と神の悩みを聞けって言ったって、そのデジタル蟲毒(こどく)?の話聞いた感じだと、ムリじゃない?人類、詰んじゃってるよ。もう一回やり直せばいいじゃん?人口が20%くらいになったら曼陀羅(まんだら)の反転回避できるし。それでよくない?日本の神様くんたちは、神界に転生してるんだし、あの子たちが人間のこと心配するのってさ、自分たちの子孫だからってだけじゃん?もう良いからエグソダスさせてあげようよ?その間に地球再生すれば良いって。」

地蔵さんが、可愛い顔のままぞっとするようなことを言う。せやけど、おっちゃんは、ゴクッと息を吞みながら「大丈夫や」って言うた。


「何か・・・何か手があるはずや・・・ワシはちょっと畝傍山(うねびやま)のご老体に会うてくる。この国の始まりになんかヒントがあるはずや・・・地蔵先輩、もうちょっとでええんや、時間をくれ。その間に対策を考えるから。」


「まぁ・・・それは良いけど・・・文殊(もんじゅ)大師は、反転させて太陽系を更地にしよう、って言ってるよ?普賢(ふげん)大師はそれはやりすぎだ、もう一回リセットしてやり直しのチャンスを与えようって言ってて、僕もそっち派だけど・・・弥勒(みろく)大師はそれこそどうでも良いみたい。あの人来るの56億7千万年後だから、その頃には太陽系なんてとっくにないしね。要は、君たち観音チームだけだよ。今の文明を存続させようなんて言ってるの。」

地蔵さんがそう言うと、真魚さんが手を挙げた。


「先輩、そない言うけど、アンタかて現世の維持が仕事ですやろ?そんな簡単に『火の滅び』で人口8割殺してまうって・・・どないしはったんですか?前はそんな違うたやないですか?」


「ちょっとー・・・真魚くんさぁ、君、大日如来さまの化身なんだから、そういうしょうもないこと言うの止めて欲しいなぁ・・・僕が救済するのは人間の魂であって、物理的身体でも、物質文明でもないんだから。それにさ、この多元宇宙ではもっと深刻な問題を抱えた島宇宙もあるんだよ?たかだかその一個の、しかも特定の恒星系の、しかもある時点での人類文明を維持する/しないなんて・・・ねぇ?・・・ま、ハッキリ言っちゃうとね、飽きたんだよ・・・こないだもさ、秦広王庁に行こうと思ったら、黒い服着た連中が20人くらいいてさ、『オレが何したんだ』って・・・もうめんどくさくて。バッカじゃないの?そりゃ人間なんだから、悪事に手を染めることくらいあるだろうけど、自分が何してるかくらい分かっておこうよ?現代人って、甘えたこといってる子たちが多過ぎてウザいんだよ…」


地蔵さんは、もんのすごーくうんざりした顔で、すーごく嫌そうに言って…さすがにその場にいたお坊さんたち全員が凍りついた。


一人の、日本人のお坊さんが手を挙げる。後光が差してないから、生きた人間みたいや。

「地蔵菩薩様…いま仰ったことを、多くの御仏が思っておられる、と言うことでしょうか…?」

そやけど、地蔵さんが質問に答えようとした時に、金堂の扉が開いて何人かの人らが入ってきた。


「なんですか、あなた達は!いま重要な会議中で…う!」

ここ四天王寺のお坊さんっぽい若い人が引き留めようとしたけど、入ってきた人たちをみて慌てて道を開けた。


その人は、青いゴスロリ風の衣装を着て、その上に鎧みたいなんを付けてて、腰に剣(サーベルっていうやつ?)を下げてる。

背はウチとおんなじくらいやから、155㎝ないくらいや。黒髪のショートボブで、色白のメッチャ可愛い娘やけど・・・目が凄い鋭くて、猛獣みたいな殺気を放っている。

他の人たちも、似たような可愛い女の子やったけど、みんなやっぱり目付きがきつくて、こわい感じやった。


その人は、地蔵さんと太子のおっちゃんの前まで来ると、跪いて名前を言うた。


「地蔵菩薩様、救世観世音(ぐぜかんぜおん)菩薩様、お取込み中のところ申し訳ございません。私は、崑崙山(こんろんさn) 電脳特殊作戦室 室長、樫原真琴と申します。我が崑崙山の主、鞍馬の御大(おんたい)よりの書状を預かってまいりました。今この場にて、皆様に伝えよとのことでございます。読み上げてもよろしいでしょうか?」


「あ?彼が動いたんだ。良いよ、みんなに聞こえるように読んでくれる?」


「では失礼して・・・一つ、今般の事態の重大なるを鑑みて、崑崙山は今回の事案を直接引き起こした人間・神々の魂魄を焼却し、その霊的因子の影響を完全に排除する。一つ、崑崙山は今回の事案に鑑みて、インターネットならびにSNS上にて三毒を拡散させるアカウント保持者について、その霊核を随時強制洗浄する。一つ、本作戦は1週間後を目処に開始されるが、トリガーは地球圏全体のカルマのマイナス指数による。一つ、本作戦は、電脳特殊作戦室、清掃1から5課の合同とし、持明院(じみょういん) パラミタ監督官、ならびにアチャラナータ監督官が監察する。以上。」

ここまで言うと、ゴスロリの人…樫原さんは、書状をおっちゃんに渡した。


「おい…これはどういうことや?さっきのチーム内打合せではそんなことは言うてへんかったやろ!だいたいパラミタとアチャラナータって、全てを無に帰す般若(はんにゃ)菩薩と、全てを焼き尽くす不動明王やないか!」

おっちゃんが眉間に皺を寄せて樫原さんを睨んだけど、彼女は気にすることもなく立ち上がった。


「わたしは、観世音様がたが、何をどないに話し合わはったかまでは存じません。ただ、御大の言葉を伝えに参ったまでのことです。」


「ウマくん、良いんじゃない?これなら反転も起きないし、4回目の滅びも回避できるよ。さっすがクマラさんは手回しが早いなぁ。」

地蔵さんはニコニコして手を叩いているけど、その場にいた誰も、人間のお坊さんも、後光が差した阿羅漢さんも、もちろん、真魚さんもおっちゃんも、沈黙していた…


「あんの、樫原さんだすか? 霊核の強制洗浄って、なじょして(どうやって)やるんすか?」アレ君が恐る恐る聞くと、樫原さんはこともなげに答えた。

「基本は、ネットを媒介とした認知工作、サブリミナルですが、汚染度が高い要介護者については、ナノマシン治療、それでも難しい場合は、汚染源となる思念体を強制的に切除します。」


「なっ…アホか!?そんなもん、人間の脳みそ弄って思い通りにするだけやんけ!ほんでそれでもアカン奴は思念体の切除て…普通に廃人か、死ぬかやろ!?」


「重ねて申しますが、異議は直接御大に仰って下さい…ひとつ、御大より太子様へのご伝言です…『みんな仲良うで済むんやったらお前の息子は死んでへん』たしかにお伝えしました。では・・・」

何か言おうとするおっちゃんに背を向けて、樫原さんはそのまま金堂の扉に歩いていく。

ウチの前に来ると、足を止めてこっちを向いた。


「あんたが小路夏菜子さんやな?四天王寺に付いとったかてラチは開かへんで?ホンマに物事を変えたいんやったら崑崙山に来いや。」

「え?なんでウチの名前を・・・?」

「アンタな・・・アタシは『戦士』やで?そんなもん聞かんかて分かるて。まぁええわ。ひとつ言うとこ。太子様がどない言うてはんのか知らんけど、観音チームはこの人類文明の維持と、現世で生きてる人類の幸福が最優先や。太子様は自由意志って言うんを大事にしはるみたいやけど、アタシらの親分は、先ず生きててナンボや、って思てる。そのためには手段は選ばん。まぁ気が変わったら連絡してき。」

そういうと、樫原さんは名刺をウチに渡して、そのまま金堂を出ていくと、光る輪を通って消えて行った・・・


あとに残されたのは、凍り付くような沈黙だけやった。 おっちゃんは、幽霊みたいに青ざめた顔で俯いてる。

「……せや・・・あの子らは……ワシの教えを守って死んだんや。 ワシが……『和を以て貴し』とか、綺麗ごとを言わんかったら……戦って生き延びとったかもしれん……」


「太子……」 真魚さんが声をかけようとするけど、かける言葉が見つからへんみたいやった。

せやけど・・・


ウチは、手の中にある樫原さんの名刺をギュッと握りしめると、おっちゃんの背中をバシッ!と叩いた。

「痛っ! ……な、なにすんねん夏菜子!」

「しっかりしぃや! おっちゃん!」 ウチは大声で言うた。「おっちゃんの息子さんらが可哀想なんは分かった! せやけど、ウチらいま生きてるやん!ナガスネヒコさんも言うてたやん!河内の民は皆幸せに生きとるって!

それが、ロボットみたいにされるか、焼き殺されるか、魔神に殺されてブラックホールに放り込まれるか、三択しかないのん!?」


「そ、それは……」

「クマラさんか何か知らんけど、その人ウチらのことペットみたいに思ってるやん! 脳みそいじって『良い子』にして、それで生きてて楽しいんか!? ウチは嫌や! 失敗しても、喧嘩しても、自分で決めて生きたい!」


ウチの言葉に、おっちゃんはハッとして顔を上げた。 その瞳に、少しずつ光が戻ってくる。

「……せやな。あいつ(クマラ)は『千手観音』、千の眼と手・・・あらゆる手段で無理やりにでも人類を救う・・・独裁者みたいなもんや。対してワシは『救世観音』…一人一人の思いに寄り添って人を導く・・・それが『三十三身』や。」

そういうと、おっちゃんは自分の頬を両手でパン!と叩いた。


「……あぁ、目が覚めたわ。おおきに、夏菜子。ワシは自分の誓願を忘れるとこやった。ここでワシが折れたら、それこそ息子らの死が無駄になる! 人間は、管理されな生きられんほど弱ない! それを証明できるんは、ワシらだけや!」

おっちゃんは、地蔵さんやの方を振り返ると、ビシッと指を突きつけた。


「地蔵先輩!すんまへんけど、ワシは『全消去』も!『間引き』も!『洗脳』も!全部却下や!人間が、ただのデータでも人形でもないちゅうこと、ワシらが証明して見せたろやんけ!」

そしたら、その場にいたみんなが歓声を上げた!


「あそ。……でも、時間は本当にないよ?まぁ僕としては、ウマくんでも、クマラさんでも、観音チームで処理してくれるんならどっちでもいいけど。じゃ、よろしく。」

地蔵さんがそういって立ち上がると、今まで黙ってた田島が急に「あの!」って言った。


「なに?僕忙しいんだけど?」

「あの…その、20人の黒服はどうなるんですか…?」

「え?阿鼻地獄だよ?当たり前じゃん、八幡ちゃんを殺して、アマテラスちゃんを誘拐しようとしたんでしょ?神々って仏のサンガの一部だからね。魂が摩耗して浄化するまで、あと数億回くらい死なないとだから。僕は救うのが仕事だけど、へらへら笑って邪悪なことする子たちはもういいや。じゃね、オン・カカカ・ビサンマエイ・ソワカ」

地蔵さんは、そう言って、そのままフッと消えた。


「クマラの作戦開始まで1週間……それがタイムリミットやな…行くで! チーム・四天王寺!先ずは畝傍山と談山神社!この国の『物語』を書き換える鍵を手に入れるんや!」


【あとがき】 第41話、更新しました!

今回のサブタイトルにもありますが、神仏から突きつけられた「救済(処分)」の選択肢が怖すぎます。


曼陀羅の反転(文殊案):ブラックホールに放り込まれ、量子レベルまですり潰されて「虚無」へ。

火の滅び(地蔵・弥勒案):メタンハイドレート爆発&極度の温暖化で、人類の8割を物理的に焼却処分。

千手観音の洗脳(鞍馬案):脳と魂を強制洗浄・切除され、管理された「良いロボット」として生かされる。


「仏の顔も三度まで」と言いますが、四度目はもうありません。 悪い人間を排除するためとはいえ、神々が提示するのはこの究極の三択デッド・オア・アライブ・オア・ロボット


「どれも嫌や!!生きててナンボや!!」 そう叫んで、たった1週間の猶予をもぎ取った夏菜子と太子。 人類の自由と尊厳をかけた「第四の道」は見つかるのか?


ここからが正念場です。応援よろしくお願いします!

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