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第36話: 戦後処理、天照大神の裁定と饒速日さんの弟さん登場!・・・ところで、石切さんはええ神さんやからね!

盤上の信繁さんの姿が消えて、麓からごうっと歓声が聞こえた。勝利を告げる勝鬨や。

護良さんと西郷さんが、ほっと腕を撫でおろしていると、そこに八幡さんとアマテラスが入ってきて、侍のみんなが平伏する。


「ようやく・・・勝てたな・・・さっきの人間の攻撃にはヒヤッとしたけど・・・」八幡さんがいうと、姫が皆をねぎらった。

護良(もりなが)、皆の者、大儀でした。まずは負傷した者の手当てと、投降するものには寛大な処置をするように。何かあれば申しなさい。」

ここで、護良さんが顔を上げる。


「源次郎が饒速日命様を捕縛したとのこと。ここまでお連れするとのことにございます。お会いになられますか?」

これを聞いた姫が、目を瞑って静かに頷いた。

「むろんです。化生(けしょう)によって生まれたとはいえ、我が息子、天忍穂耳命の子ですから・・・」


しばらくして、饒速日(にぎはやひ)さんが縄をかけられたまま、本殿の前の砂利の上に引き立てられた。そこに、巫女姿で冠を付けた姫・・・天照大神(あまてらすおおみかみ)が出てくる。

「しばらくですね・・・饒速日・・・息災でしたか?」姫が、言葉だけは優しく、そやけどどこかよそよそしく饒速日さんに声を掛ける。


「祖母上!祖母上ご無事で何より!この饒速日、天津神として・・・」

「頭が高い。誰が申してよいと言うた?祖母上とはなんじゃ?わらわは日ノ本、豊葦原(とよあしはら)中津国(なかつくに)皇大神(すめらおおかみ)なるぞ?」

その瞬間、場が凍り付いたみたいになった。太子のおっちゃんでさえ、その容赦のない言い方に冷や汗が出てた。


其方(そなた)、何をしにここに参った?物部(もののべ)の民を正しく導き、かつてのように法理(ダルマ)に逆らう振舞をさせぬようにと申したはず。」

「あ・・・いや・・・その・・・」饒速日さんは、砂利に顔を付けたまま、ブルブルと震えてる。え?このめっちゃ怖い女の人が、ウチらの姫なん?


「先ほどのあれはなんじゃ?国を簒奪して東照(あずまてらす)に引き渡したあの女?西戎(てんじく)の神を拝む?・・・息長帯(おきながたらし)比売命(ひめのみこと)(八幡さんのことやで)は、妾が神託を与えて日ノ本(ひのもと)の守りを託した武の神。血などこのアマテラスは知らぬ。瀟洒しょうしゃに溺れる皇族や貴族など尚知らぬ!ならぬと思わば、別の者に我が八尺瓊勾玉やさかにのまがたまを与えよう。」


「はっ・・・し、しかし・・・」そやけど、なんか言おうとする饒速日さんを、姫が遮る。

「お前たちの血を受け継いだものが、楽しゅう化楽けらくに溺れておる間、我が兄様は商いを起こし、我が弟は鉄を鍛える技で国を支えた。己は何をした?加えて、日出る国の御子、ウマヤド様は我らが帰依する方なるぞ?そなた、何と申した?」


「お!お赦しを!お赦し下れませ!太子様!救世観世音菩薩様!なにとぞ、なにとぞ!」こんどは、饒速日さんはおっちゃんの方を向いて平伏する。


「ちょ、待てや・・・ワシ、オブザーバーやっちゅうねん・・・内輪のことは内輪でちゃんとしてくれんと・・・」

「そ、そんな・・・」

「誰ぞ、その痴れ者を黙らせよ・・・救世観世音菩薩様、しつけも出来ておらぬでご無礼を・・・これ、饒速日、妾は飽いた。其方、高天原に帰りや・・・半次郎、天叢雲あめのむらくもをとらす。そのものの首を刎ねよ。」

姫・・・いや、天照大神がそういうと、ブンと音がして、黄金色に輝く剣が現れる・・・


「「はっ……じゃっどん、おかみ……おいのごたる者が、尊き祖神おやがみさぁに、そげな真似を……」さすがの半次郎さんも躊躇してる・・・そやけど、天照大神の眼は厳しい。

「半次郎、聞きゃれ。己の一身を賭したものこそ、この剣に相応しい。ならば、其方ほどの遣い手はおらぬ・・・()くせよ。」

「な、ならば……畏れながら、つかまつもそ……」半次郎さんが、輝く剣を鞘から抜き、蜻蛉(とんぼ)に構えて、饒速日さんの前に立つ。その背中は、岩みたいにゴツイのに、なんか震えてるように見えた。


「ひっ!そなたっ!神を殺さば、地獄行きじゃぞ!」

「そいは(地獄行きは)よか・・・おい一人のことったい・・・じゃっどん……始末はつけねばなりもはん……」

嗚咽を押し殺したような声やった・・・この人は今、自分の中の「一番大事なもん」をへし折って、無理やり剣を構えてはる・・・。


あかん、もうウチ、我慢できへん。


「半次郎さん、アカン、やめとき。」ウチがそういって、半次郎さんの背中に触れると、彼は泣きそうな顔で振り向いた。いや、泣きそうなんやない。あのいかつい目から、ボロボロと涙がこぼれ落ちてた。


「か、夏菜子さぁ……よか! よか!」 (※訳:やめろ!構うな!来るな!)

彼は、ウチの手を振り払おうとした。 「そげなこつをしたら、おはんが……!」

そやけど、ウチは首を横に振った。自分は地獄に落ちてもええやって?ウチはそんなん嫌や!


「ちゃう!そやない!」


「あー、あーしもそう思うかな~?」

「全くですわ・・・これは裁判とは申せません。独裁です。」

ウチがそういうと、田島と理沙ちゃんが出てきて、半次郎さんと饒速日さんの間に立った。


姫・・・天照大神が、めっちゃ怖い目でウチらを睨んでる!

「夏菜子、理沙よ・・・これは神々のまつりごとの話。人が口を挟むでない。姉様・・・いくら稲荷神とは言え、妾の裁定に口出しならぬぞ!」

こわい!全身から殺気が迸ってる感じする!漏らしそう!せやけど、田島と理沙ちゃんが手を握ってくれたおかげで、なんとか我慢できた・・・


「ちゃうねん・・・そら、ウチら、神様たちのことは分からへんけど、たぶん色々あるんちゃうんかな?さっきな、信繁さんが、ナガスネヒコさんっていうてたやん?それに、饒速日さんって石切さんの神さんやろ?ウチ、子どものときに近鉄電車で行ったけど、ごっつい面白かったで?あ!あとアンタもアカンねんで!いつまで天津神とかヘチマとか言うてんねんな!」


「な!?ヘチマとはなんじゃ!無礼であろう!・・・モゴモゴっ!」とりあえず、やいやい言う饒速日さんの口を、ウチは手で塞いだ。

「ウチら人間にな、血筋とか天津神とか関係ないねん。」こう言うと、田島が笑う。

「だーよーねー!ってかさぁ、あーしも別に『お稲荷さんだから』とかじゃないし。なんかほら、ヤじゃん。」


「ええか?おっちゃん、これよう見てみ?」ウチは、スマホを取り出してマップで「石切劔箭(つるぎや)神社」の写真を見せたった。 「ほれ見ぃや。あんたんとこの神社やで。『石切さん』言うてな、毎日ものすごい数の人がお参り来てんはんねん。」

「こ……これは……」 「みんなな、『高貴な神様やから』拝んでるんちゃうで。『デキモノ治してくれた』『病気治してくれた』って。

横から田島も口を挟む。 「そうそう! フツー神様の名前なんて知らないって!理沙ちゃんみたいなオタクじゃなきゃ!」

「ちょっと!誰がオタクですか!・・・あ、それは良いや・・・饒速日様、此度の出兵、何か理由がおありのはず。先ずそれをお話しくださいませ・・・」そういうと、理沙ちゃんはアマテラス様の方を向いて土下座し平伏する!?


「大神、私のような一介の小娘が無礼を申す事、お許し下さい。ですが、ただ訳も聞かず饒速日様を討たれては、御神名に(きず)がつきます。どうか・・・」

それを見た八幡さんが、目を丸くすると、パチパチと瞬きして、呆れたように笑いだした!


「こら参った!なんなん、えー!?ほんまに!女の子らの方がよっぽど根性据わってるやん!姫、こらアカン!ウチらの負けや!」

そしたら、本殿の上空がピカって光って、一隻の小さい天磐船(っていうかこれ原チャリ?)が現れた。


「おーい、おーい!あ!アマテラス様!お久しぶりです!八幡さーん!このまま境内に降りてもええすかー!?」

若々しく、朗らかな声があたりに響く。船はそのまま境内に着地すると、中から人のよさそうなヤンキー風の、エプロンしたお兄ちゃんが飛び降りてきた。


「いっやー・・・やっぱりや・・・アニキ、アカンで!勝手に行ってもうてホンマに・・・アマテラス様!八幡様!押忍!お久しぶりです!あ!太子様!この間、古本市行きました!さっすが四天王寺のラインナップ、わけわからん本多い!」

な、なんやこの、ハイテンションのお兄ちゃんは・・・?


「え?なに自分?めっちゃ可愛い―やん!日焼け跡めっちゃセクシー!オレの彼女ならへん?うわっ!こっちのギャルとミックスの子も超――っ!別嬪やし!困るわぁー!オレそんな同時に付き合われへんわぁー!三又なってまうやん!」


「ちょ・・・あんた何言ってんだよ?今大事な話してんだから下がりな・・・ったく、これだから関西のヤンキーはダメなんだよ、ちょっとは空気読めっての・・・」

田島に言われて、ヤンキーの兄ちゃんはあっと言って頭を掻く。屈託なく笑って謝るところが可愛い。


「ごめんごめん!先言わなあかんわ!オレ、ナガスネヒコ!この人の嫁さんの弟!いっつもは、石切と生駒山はさんで反対側の添御県坐そうのみあがたにいます神社っちゅうとこにおんねんけどな、なんか石切のへんが騒がしいって聞いてな、慌てて追っかけてきたんよ!せやけど、オレの船、原チャリやしメッチャおっそいっちゅうーねん!」

これを聞いた信繁さんが、目をまんまるに開いて固まってた!


「ま、まさか!お前様がナガスネヒコ殿にござるか?しかし、何故、御身を討った者をお庇いに!?」せやけど、ナガスネヒコさんは信繁さんをきっと睨みつけると、近寄っていってインネンをつける。


「ちょう!おまえー!ウチのアニキに何してくれてんねん!ちょっとメチャメチャ強いからって・・・あ、なんかコイツめっちゃ怖い、目で殺されそう・・・めっちゃ怖いからって・・・いちびってんちゃうぞ!激辛たこ焼き食わしたるからな!オレオマエ、アニキがしんどそうにしてるん見たないから、自分で首さしだしたんやし!おまえらに言われる筋合いないし!」


これを見た、八幡さんと姫がお腹を抱えて笑い転げてた!

「ちょっと!アカンアカン!ナガスネちゃん、あんた笑かしすぎやろ!ここはグランド花月とちゃうんやで!ああおかし・・・ほんで、饒速日はん、アンタ結局どないしたかってん?」


更新が遅くなってしまい、申し訳ありません! 待っていてくださった皆様、ありがとうございます。


今回は、半次郎さんの涙に貰い泣きしそうになり、最後はナガスネヒコのまさかの原チャリ登場で吹き出しました(笑)。

重い空気からのこの急展開、楽しんでいただけましたでしょうか?


「神様だって、現代では愛されてるんだから関係ない!」

Googleマップを武器にアマテラス様に説教する夏菜子の姿に、現代の人間の強さを感じます。


さて、ナガスネヒコ(弟分)も合流し、物語は新たな局面へ。

歴史ファンならニヤリとする演出も用意していますので、次回の更新もお楽しみに!

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