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第35話: 石清水の戦い 終幕~この物語はフィクションやけど、この世での行いには気を付けような…(こっからは夏菜子やで!)

「夏菜子さん、この黒服さんたちはどうなさるの?」理沙ちゃんに聞かれて一瞬どないしようかって思ってけど、総司さんが「2-3人ひっ捕らえて吐かせましょう。なに、おれら新選組はそういう事もやってたんで慣れてますよ。」っていうたんで、お願いすることにした。


「ひっ!やめてっ!殺さないでっ!」黒服たちは、どうもプロの人やないみたいやった。なんか、根性がない。ちょっと自分らが負けそうなったらビビッて逃げたり腰抜かしたりしとる。メッチャだっさい・・・と思ったけど、田島に言わせると、

「なんか変じゃね?普通こういうのってさ、警察とか軍隊とか、そういうところの人たちがやる感じすんだけど、こいつら闇バイトの実行犯みたいだよ?やることめっちゃ雑だし。」

言われてみたら変やな?どういうこっちゃ?


「まぁ良いじゃねぇか、とりあえず、あのトラックと人形を壊しちまったら、こいつらなんて敵じゃねぇ。今の俺たちにとっちゃ紙切れか豆腐みてぇなもんよ。」ってガム新さんが言うから、黒服たちの武器とか通信機器を没収して、何人か連行することにした。


「夏菜子さん・・・ずいぶん思い切ったことをするのね・・・さっきは物部の兵士たちを見て泣いてたのに・・・」うんまぁ、理沙ちゃんの言うことは確かやけど、こいつらの眼を見たら・・・

「なんか、ムカつくねん。こいつら遊んでる。へらへらしてる。許せん。多分それだけやとおもう。」


「そいなら夏菜子さぁ、残っちょるもんはどげんすっとか?とりあえず首でんねっとか?」半次郎さんがそない言うけど、それは流石にやりすぎや。

「そのうち警察も来るし、逃げられへんようにしといたらええんちゃう?」っていうてたら、ええタイミングで八幡さんが天磐船で来てくれた。


「ふむ?とりあえず霊体を羂索でしばっといたら動かれへんやろ。警察もウチが呼んどいたるわ。」

「え?八幡さん、そんなん出来んの?」ウチが聞くと、そんなん神職に言うといたら消防も警察も呼んでくれるわ、っちゅうことやったけど、黒服たちはいきなりパニックになって走って逃げだした・・・


「にっ、逃げろ! 俺はまだ犯罪者になりたくない!サツに捕まるわけには・・・」いや、もう犯罪者やで?

「あ、待て! そっちはアカン! そっちは……!」 八幡さんが止めようと声を掛けるけど、その声は届かない・・・


「あ~あ・・・せめて京都地裁とかでお裁きを受けさしたろうって思たんに・・・」そいつらが逃げたんは、石清水八幡宮の北東、つまり表鬼門、艮の方角やった・・・

「まぁ~・・・しゃあないわ。さっきの妨害電波?カラクリの所為でな、現世と常世の境界が曖昧になっとんねん。うっとこの鬼門、まーまーやばいんやけどなぁ・・・まぁこれも定めやなぁ・・・」


ウチと田島は、半次郎さん、ガム新さんと一緒に駅のロータリーの方まで見に行ってみると、音もなく滑り込んでくる一台の高級そうな黒い車が入ってくる・・・

「なんだアレ?すっごく高そうなリムジンじゃね?」田島が指す方を見ると、その車のスモークガラスが開き、中からカネモ(金持ちのことやで!)のお兄さんと、めっちゃ別嬪のお姉さんが手招きしてた。


「お困りのようですね。乗りなさい、助けてあげますよ。」

「早く。追手が来ますわよ?」


「おい!遅ぇんだよ!すぐ助けに来いっての!」そういうと、黒服連中は疑いもせんと、車に乗り込んだ。

あれ?20人くらいおるのに全部乗りよったで?そこまでこのクルマ大きないやろ?


半次郎さんとガム新さんはその車に近寄って、男女に声をかける。

「おい!そいつらは八幡宮のお方様と姫を襲った連中だぜ!天津軍であるオレらに引き渡しな!」

そやけど、その人らはニッコリ笑って首を横に振った。よく見ると、男の人が馬柄ネクタイで、女の人は牛柄の髪留をしている。なにこれ?っていうか、ガム新さん、知り合いなん?


「すみませんが、十王のご決定なんです・・・いかに皇大神(すめらおおかみ)のご関係者と言われましてもねぇ・・・」と、男の人が答える。

「良いじゃありませんか、ご異存ありましたら、秦広王庁でお聞かせ下さいましね・・・ではごきげんよう・・・」きれいなお姉さんがそういうと、ウィンドウがゆっくり上がっていった・・・


「へっ!ざまぁ!おいお前ら!覚えてろよ!」黒服たちはへらへら笑ってたけど、馬ネクタイの男の人の口角が歪に上がった・・・

「さて……行きましょうね・・・『庁舎』の方へ。心配ありませんよ。あなた達はちゃんとお裁きを受けることが出来ますからね……フフフ。」

女性の妖艶な笑みと共に、車のタイヤが青白い火花を散らす。


次の瞬間、車はロータリーの出口ではなく、黒い「穴」に向かって加速し、そのまま吸い込まれるように消えた・・・


「……行ってもうた。ガム新さん、あれなんなん?逃がしたらアカンやん!」そやけど、ガム新さんは冷や汗をかいて、首を振る。

「無理言わねぇでくれよ・・・十王庁の決定だぜ?俺にゃどうにも・・・あ、女将さん!」振り返ると、八幡神さんが追いかけてきた。いつの間にか、太子のおっちゃんもおる。


「あ~あ。牛頭(ごず)馬頭(めず)が迎えに来よったか。一番キツイとこ連れて行かれたなぁ・・・」せやけど、太子のおっちゃんはニコニコ笑う。

「ま、神殺しっちゅうんは、今まで出来へんかったからリストに無いけど、阿鼻地獄ちゃうか?姐さん、かまへんがな、あんなカスどうでもええて。ワシにとっては、マジメに生きてる夏菜子や美紗ちゃん、理沙ちゃんとか、アレ君の方がよっぽど大事やっちゅうに。」



本殿に戻ると、護良さんと西郷さん、清盛さんが盤上に見入っていたけど、ウチらに気付くと手を振った。

「おお!夏菜子殿!見やれ!お陰で正成(まさしげ)の軍も持ち直したぞ!」護良(もりなが)さんが言う方を見ると、物部(もののべ)の兵隊さんたが、初めにおった参道の前の広場のところまで押し戻されてた。


「やつら、必死で立て直しを図ろうとしちょる・・・ほれ、物部守屋が懸命に叫んでおりもすぞ?じゃっどん・・・」

「うむ、魔軍は討った。人間のカラクリも破壊した。吾輩なら此度(こたび)はいったん引くが・・・あぁ・・・護良親王殿下、南洲殿、これは如何なることか?どうも再び攻め入らんとしておる様だが?」

清盛さんがいうと、護良さんも溜息を着く。


「どうも・・・あの御仁は戦争が下手過ぎる・・・とどめを刺すほかあるまい。源次郎に伝令を。仕舞じゃ。」

護良さんが冷たく言うと、ヒューっと鏑矢(かぶらや)の音が響き、次に、ドン、ドンって陣太鼓の音がする・・・盤上に、真田源次郎信繁さんと、その部下のお侍さんの、真っ赤な鎧が浮かび上がった・・・


そっから先は一方的やった・・・後方から大音声を上げて襲い掛かる真っ赤な鎧の群れにパニックを上げる物部軍。

そこに、馬上から鉄砲を撃つ真田の騎馬隊、降り注ぐ矢の嵐。一人、また一人と物部の兵隊さんが倒れていく・・・


赤い鎧の群れが一直線の槍みたいになって(鋒矢(ほうし)の陣っていうらしい)、本陣に突撃すると、あっさり敵は散り散りになって・・・最後に、敵の神様と信繁さんだけが残って、お互いに武器を構えた。


なんか、饒速日(にぎはやひ)って神さんが、信繁さんに一生懸命話しかけてるみたいやった。

「源次郎よ!其方(そなた)のごとき忠義と信心深き武士が、()に刃を向けるとは何事ぞ!其方は・・・そなたは良いのか!

大王(おおきみ)の国を簒奪して東照(あずまてらす)(徳川家康)に引き渡したあの女や、西戎(てんじく)の神を拝むウマヤド様なぞに首を垂れるのが、そなたの忠義なのか!?」


「・・・饒速日様、それがしの如き下人(げにん)に、八幡大菩薩ならびに、救世観世音菩薩のご神慮(しんりょ)など、分かろうはずもござりますまい?されど・・・この源次郎には一事のみ、お聞きしたき儀があり申す・・・」

信繁さんが槍の穂先を降ろしてそう言うと、饒速日さんは息を切らせて応える。


「な、なんじゃ申してみよ!許す。」

「されば、お聞かせ下され・・・なにゆえ長髄彦(ながすねひこ)殿を討たれた・・・?」

「!そ、それは・・・知っておろう!あ奴が磐余彦尊(いわれひこのみこと)(神武天皇のこと)にお仕えすることを拒んだからじゃ!吾が・・吾がそうせよと申したのに!」

饒速日さんがそういうと、信繁さんは小ばかにするように笑った。


「ふふ・・・左様なもの、説得でも、捕らえて軟禁でも致さば良き事。殺すとは・・・はは・・・殺すとは!さぞや無念でござったであろ・・・よもや、主君と仰ぎ、兄と仰いだ方に討たれようとは・・・!」

みるみる、饒速日さんの顔が真っ赤になる。


「だ、黙れ!貴様に何が分かるかぁーーー!!」饒速日さんは、突然剣で切りかかる!十文字槍で受ける信繁さん!ものすっごく重いみたいで、剣と槍がぶつかるたびに轟音が響く!


「みたか!吾が高天原より齎した八束剣(やつかのつるぎ)!貴様如き人間が鍛えた鋼とはわけが違うわ!」饒速日さんは勝ち誇ったように連続で打ち込むけど、信繁さんは冷めた目でそれを受けてた。

そして・・・

「ギュイィン!・・・ンンン・・・カァーン!」 信繁さんが、相手の剣を十文字槍の鎌で引っ掛けて強く一回転させると、高天原の神剣「八束剣」が手元を離れ、悲しい音を立てて宙を舞い、虚しく地面に突き刺さった。


丸腰となり、呆然と立ち尽くす饒速日さんに、信繁さんは槍の先っちょ(切先っていうらしい)を下ろして、槍を引きはった。

「饒速日様……。十種神宝(とくさのかんだから)、確かに素晴らしき神器なれど、剣は畢竟(ひっきょう)ただ不肖の器、それを用いるのは人にござる。」


「な……なに……?」

饒速日さんは、信繁さんの言っている意味が理解できへんみたいで、震える声で問い返す。 信繁さんは、諭すように、せやけど、厳しく言葉を継いだ。


「その(ひょう)を用いるにのりあり。のりを知らざれば、人を殺すとて人に殺さるるならい……」

信繁さんは、静かに目を瞑る・・・長い間、武士たちが血を流し、次代に次いで積み上げたことわりを反芻してはるみたいや・・・


「柳生但馬守(たじまのかみ)殿の言葉にござる……。  我ら武家の習い、存じおきいただくべきものにござったな……」

勝利宣言と違う。自分を見失ったらどうなるか・・・それを言うてるみたいやった。


「ばっ……馬鹿な……吾が……一介の修羅などに……」 ガクリ、と膝をつく饒速日さん。完全に戦う意思を折られて、その背中は小さく見えた。

信繁さんは、静かに配下の者に命令を下す。 「勝鬨を上げよ。敵の大将、とらまえたり。  ……そして、この方を本殿に護送するのじゃ。  尊き祖神(おやがみ)であらせられるゆえ、くれぐれも無礼なきようにな。」


【地獄行きのリムジンと、真田の槍。戦いは終わったけど……?】

お読みいただきありがとうございます! 「石清水の戦い」、これにて物理的な戦闘は終結です。


■ 今回のポイント①:現代の悪党への「お仕置き」 黒服たちを迎えに来た高級リムジン。運転手と助手席にいたのは……。 牛の頭と馬の頭を持つあの獄卒たちでした。 「地獄の沙汰も金次第」とは言いますが、彼らの行く先(阿鼻地獄?)はお金では解決できなさそうですね。


■ 今回のポイント②:真田信繁 vs 饒速日 「神の血筋(八束剣)」を、「人間の研鑽(十文字槍)」が打ち破る。 信繁が引用した柳生但馬守の言葉は、時代を超えて武士たちが積み上げてきた「ことわり」の象徴です。 力で勝つだけでなく、精神的にも相手を諭して見せた信繁さん、さすが「日本一の兵」でした。


■ 次回予告: さて、饒速日ニギハヤヒ様を捕縛しましたが、これでめでたしめでたし……とは行きません。 彼はどんな裁定を受けるのか? 次回、『戦後処理、天照大神の裁定と饒速日さんの弟さん登場!』 ……おや? タイトルに「弟さん」?


シリアスな空気から一転、驚きの新キャラも登場します。 涙あり、笑いありの第36話も、ぜひ続けてお読みください!

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