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第33話: 石清水の戦い 中編② ~神火で迎え撃て!魔の軍勢!(艦隊戦の解説も理沙ちゃんですわ!)~

「うぎゃぁあ!!」「痛いっ!痛いぃぃっ!」あちこちで悲鳴が上がる。でも。守屋さんは兵たちを叱咤して自分も登ろうとする。

「落ち着け!下らぬ罠じゃ!警戒して進め!」ところがそこに、熱い熱湯が降り注いだ!またしても兵士たちの叫び声が!

「あ、熱い!熱いぃぃっ!」「身体が、身体が溶けるっ!」


「灰を煮た熱湯や・・・どや?身体中がただれるやろう・・・たとえ不死の身体でも、この熱さと痛みには耐えらへんやろうて・・・」

不敵に笑う正成さんの顔をみて、夏菜子さんが怯えた顔をしている。気丈な夏菜子さんが震えて、涙を浮かべているわ・・・

「大丈夫?夏菜子さん、顔色が悪いみたいだけど・・・」


「あ、あんなんええんやろか?いくら、神様は死なへんっていうても、火傷したら熱いやん・・・ウチなんかセスキソーダでも手ぇ荒れるのに・・・なぁ、おっちゃん、こんなん正しいことなん?」

あぁ!夏菜子さん可愛い!いじらしいっ!ポロポロと涙を流して太子様を見上げる様がなんとも…ち、違いますわっ!いくら戦とは言え、これはちょっと…


でも、太子様は、カンカン帽を目深に被り直して、八幡様の方を見た…そして、八幡様は頷くと、太子様に替わって応える・・・

「夏菜子ちゃん・・・アンタが優しい子や云うんは分かる・・・姫にもようしたってくれるし、道真や、ガム新・総司・半次郎にも気安う接してくれんのも有難い。せやけどな、今この場で物部の兵に、アンタが優しい気持ちを持っても、どないもならんねん・・・」

「そんなん・・・あんなに痛がってのたうち回ってんのに・・・?」いまや、夏菜子さんはわんわん泣いて八幡様に縋りついて・・・八幡様は愛おしむように、哀れむ様に夏菜子さんの髪を撫でて・・・こっ!これはヤバい!GL案件だわ!しかも、年齢差ってヤツね!

あ、姫様が怪訝な顔で私を・・・いけない、マジメな話をしているんだったわ・・・自重しないと・・・


「夏菜子ちゃん、ここは常世、ましてウチらも物部も神霊なんや。どれだけ斬られても、燃やされても、死ぬことはあらへん。そんなウチらにとってな、闘い続けられるかどうかは、気持ちだけの問題なんや・・・確かに霊核を深く傷つけて、無理やり石切に叩き返すことも出来るけど・・・」

「なにそれ?それってどういう意味なん・・・?」っと、これは夏菜子さんですわ。あ、でも何となく意味が分かるかも。


「斬っても突いても、矢が刺さっても、傷はすぐ治って立ち向かってくる・・・ほなどないしたらええと思う?それが出来へんくらい、神器で深々と霊核を傷つけるとな、下手をしたら、魂魄そのものが砕けて虚無に帰ってしまうこともあるんや・・・さすがにそれは残酷すぎる・・・そやから、神兵同士の戦いでは、恐怖や痛みを植え付けて、闘う心そのものを折るんや。」

「そんな・・・ひどいやん・・・お願い、八幡さん、正成さんとか義経さんに、あんなひどいこと止めさせて・・・こんなことせな、この国は守られへんの?・・・」

懇願する夏菜子さんにしがみつかれて、八幡さんは耐えられなくなったのか夏菜子さんをぐっと引き離した。


「アカン、美紗ちゃん・・・ごめんやけど、しばらく夏菜子ちゃんを本殿で寝かしといたって。この子にはこれ以上見せられへん・・・」

「そうだね、わかったよ・・・夏菜、こっち行こう。しばらく休んでたほうがいいよ・・・」

「そんな!八幡さん!八幡さんーーーっ!」

夏菜子さんが、美紗さんに引きずられるように本殿に入っていくのを見届けると、八幡様は深い溜息をついた。


「理沙ちゃん、あんたは大丈夫そうやな?この戦いの行方を記録してんか・・・護良(もりなが)!清盛と吉之助に信号を!魔軍をせん滅せよ!」

「八幡様・・・神功皇后(じんぐうこうごう)様、よろしいのですか?夏菜子さんを泣かせたままで・・・」私が尋ねると、彼女は眼のあたりを袖で拭う。

「・・・あのくりくりした可愛い目を見とったら・・・ウチは武神でおられんようになってしまう・・・母としての心を思い出してしまうんや・・・それは、ここに集ったすべての武士(もののふ)に対する裏切りや。それだけは出来ん・・・」


「お方様、西郷殿より信号にござります。魔軍接近、鶴翼の陣にて迎え撃つ、とのこと!」

「相分かった。吉之助には「了」とのみ応えよ。正成には、物部軍を押し戻せと伝えるがよい。今頃源次郎が罠を張って待ち構えておろう・・・」



盤上に、西郷さんを示す青く丸い点と、麾下の僚艦を示す青い菱形が二つあった。

「これは?・・・」私が護良親王殿下にお聞きすると、殿下が独り言のようにつぶやく。

「鶴翼の陣・・・まさか、そう使うとは・・・さすが、西郷南洲よな・・・伝令!各砲座に伝えよ!焼夷弾、炸裂弾、交互に装填!西郷南洲殿の旗艦に呼応して迎撃せよ!」


「あの親王殿下、鶴翼の陣とは、どういうことなのでしょうか?あれは鶴が翼をひろげた様子を例えたもの。この盤上を見る限り、西郷様の旗艦と僚艦が二隻しかないように思うのですが・・・」私が尋ねると、殿下は今初めて私に気が付いたようで、微笑みながら非礼を詫びた。


「おお理沙殿、これは気も付かぬで失礼をした、許されよ。確かに、元来鶴翼の陣とは、中軍で敵を引き付け、両翼に展開した左右の軍で押し包む様に包囲し、せん滅するもの。まぁしかし・・・ここで種明かしをするのもな。おや?動いた様じゃぞ!この一戦、しかと記されよ!」


盤上の青い点を中心に画像が現れる!西郷様と清盛様ね!

「南洲殿!思うた通りじゃ!アレに知性はないものと見た!まんまと餌に引っかかりおったわ!」

(しか)り・・・一見不気味ではあっし、数は多かどん、おそらくあいは、字面(じづら)としてん悪意を吹き込まれただけん人形・・・我らが日ごろ相手をしちょっ、まことに邪念が凝り固まり、恨み、憎しみを募らせたもんじゃありもはんぞ・・・」


「ふっ・・・ふははっ!そこまで見抜きおるか!ならば西郷南洲殿!そこもとの采配や如何!」清盛様がさも面白そうに哄笑すると、西郷様は口元に僅かだけ笑みを浮かべる・・・

「清盛入道!焼夷弾、徹甲弾を交互に装填!会敵と同時に徹甲弾発射!微速にて本陣まで後退しつつ、敵が集結した頃合いで焼夷弾を最前列ん敵に打ち込んで下され!」


「はっ!よかろう!我ら平家水軍の櫂捌き!とくと見るが良い!」

魔軍の群れは、男山の南側に群れ集まっていて、西郷様が乗る旗艦は、ちょうど本殿と魔軍を結ぶ線の中間で待機しているみたいね。

距離にして、本殿から凡そ2㎞ほどかしら。


西郷様の船と二隻の僚艦は、左右に展開すると徐々に南下・・・魔軍に接近する。

「あっ!動き出しましたわ!」わたしは、盤上の赤い点を指して思わず叫び声をあげた!赤い点が、西郷様たちの船めがけて徐々に集まりだす!


「まだじゃ、まだじゃぞ・・・」西郷様が一人呟いている様子が映像に映った。

いつのまにか、無数の魔軍…邪霊たちが集まってくる。


不定形の、苦悶に苦しむ人の顔や、助けを求めるように伸ばされた無数の腕。

映像をよく見ると、それらは人形の顔や腕で、あちこちにある裂け目からは歯車や導線がのぞいている。


「なんじゃあれは…恨み憎しみを溜め込んだ鬼がへばりついているのはよく見るが…アレではまるで鬼を演じる浄瑠璃(じょうるり)人形のようではないか…」

護良親王殿下が思わず呟く。


その間にも、邪霊たちは続々と集結した。邪霊たちが上げる苦悶と苦悩の叫びが、通信越しでなく、直にここまで(とどろ)いた!

「ウザイ!」「アイシテ!アイシテヨ!」「マジムカツク!」「シネ!シネェ!」


「なんて多さなの…本当に空を埋め尽くすほど…そして…何アレ?…なんだか、憎しみっていうより、文句ばかり言って逃げているような…?」

その時、映像の中の西郷様がバッと軍扇を翻す!


「いまじゃ!全艦徹甲弾斉射!奴らん目を醒させてやれ!」

軍扇が振り下ろされた瞬間、三隻の天磐船のカノン砲が一斉に火を噴き、邪霊の群れを貫いた!


「アガぁ!ギャアアァァァ!ユルサナイ!ユルサナイィ!ドウシテらいんReplyくれないんだょぉ!」

なんだかよく分からないリアクションだけど、徹甲弾で貫かれた痛みのためか、邪霊の群れは真っ赤に怒り狂い、西郷様達の群れに突進してくる!

「ダメ!このままでは西郷様たちが!護良様!」


しかし!邪霊の群れが、西郷様たちの鑑のほんの500mのところに来た時、再び船の両舷が火を噴いた!

「グァァ!アツイ!アツイィ!」

真っ赤な炎に焼かれて、邪霊たちが腕や脚を振り回してのたうちまわる!

それでも…


「護良様!敵が多過ぎます!徐々に戦線が押されていますわ!」

護良様は、私の声を聞きつつも、じっと盤上の一点、西郷様たちの船の位置を凝視する。


そして、船が三の鳥居の最終防衛戦に接触した瞬間!

「ドガトガガァァン!ズダダダァァン!」

突如、上空から二十隻ほどの天磐船が急降下し、炸裂弾を斉射するとともに、八幡宮の各砲座が一斉に火を噴く!


「みたか!これぞ鶴翼の陣、令和バージョンじゃ!雲間に隠れた両翼の部隊が急降下、包囲して上方から十字砲火!同時に下方からは八幡宮の砲座が奴らの柔らかい腹を吹き飛ばす寸法よ!」

なんてこと!本来平面で用いる鶴翼の陣を三次元で用いて、しかも上下から挟み撃ちにするなんて!


一箇所に固まった邪霊の群れ次々に炎上し、そこに炸裂弾が打ち込まれると、ボロボロと崩れ去った…


「すごい…さっきまであれほどいた邪霊の群れが、次々に焼き尽くされていく…殿下、これが種明かしですか?」

私が尋ねると、親王殿下はふぅーっと安堵のため息をついた。


「邪霊は人の邪念から生ずるゆえ、半端に攻撃しても回復するのじゃ。ゆえに、一気に火で焼き尽くすのが常道じゃが、ことのほか上手くいったのぅ。とはいえ…」

そこに八幡様がやってきた。未だ厳しい目をしておられるわ…


「護良、仕上げじゃ。正成、信繁に伝令、物部軍を山より押し戻せ。一気に殲滅せよ!」

ふたたび、正成様の部隊が物部の軍に猛攻を仕掛けましたわ!

巨石・丸太の下敷きになる者、灰を溶かした熱湯、煮詰めた酢にもだえ苦しんだところに、矢を受けて斃れる者、次第に被害が大きくなると、物部の兵士らが浮足立ち、遂に雪崩を打ったように戦線が崩壊、兵士たちが我先にと逃げ始めましたわ!


「いまじゃ!追撃せよ!・・・ぐっ!?」追撃の合図をしようとしたとき、護良様が急に胸を押さえてうずくまる!?どうなさったの!?


【鶴翼の陣(令和3D ver.)と、承認欲求ゾンビたち】


お読みいただきありがとうございます! 今回は「石清水の戦い・空戦編」でした。


見どころ①:西郷どんの「立体・鶴翼の陣」 本来は平面で行う陣形を、空中の「高さ」を使って立体的に再現する……さすが幕末の指揮官! 理沙ちゃんの解説のおかげで、戦況がわかりやすかったですね(笑)。


見どころ②:敵の悲痛な叫び 「Replyくれないんだょぉ!」「既読スルーすんな!」 ……お気づきでしょうか。彼らは単なる悪霊ではなく、現代のネット社会に渦巻く「負の感情(承認欲求や嫉妬)」の集合体です。 物理攻撃(大砲)で吹き飛ばしましたが、根っこにあるのは人間の心の闇……深いですね。


そしてラスト、完璧な指揮を見せていた護良親王に異変が!? このタイミングでの離脱はマズイ! 次回、さらに戦況が動きます。お楽しみに!

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