第31話: 石清水の戦い 前編 ~神仏習合サイバーパンクや!・・・けどこれって一体・・・?
「お方様! 皆、参集しましてございます! どうぞご下知を!」 いったん本殿を出て行った護良さんが、四人の、ものごっついオーラを纏ったお侍さんを連れて戻ってきた。 みんな順番に、私の目の前で自己紹介した・・・あ、ちゃうわ、名乗りっていうんやな!
「お方様! 待ちくたびれましたわ! はよ突撃さしてーな! この九郎判官義経の鞍馬流と八艘飛びで、アイツらワヤクチャにしたるさかいな!」
「ほぉほぉ・・・お方様に逆らいよるアホはどこかいな?この楠木正成自慢の悪党トラップ戦法でネチネチ削ったろやんけワーレ~ってな!泣いて謝っても許さへんでぇ!」
「九郎殿、楠公殿! 抜け駆けご無用にござれば! この真田源次郎信繁にも、功名の場を残しおき下され! 我が真田庄の十文字槍、謀反人どもにとくと食らわせてくれようぞ!」
「ふむ……九郎殿に楠公、それに真田の赤備え……こげな日ノ本の大英雄(先輩方)と肩を並べるとは、この吉之助、果報者でごわす。 先輩方の邪魔はいたしもはん! おいは清盛殿の『天磐船』に乗り込み、上空から鉄砲隊で援護いたしもす! 新しき戦の形、薩摩隼人の底力としてお目にかけもそう!」
「ふっ!みんな相変わらずの反骨ぶりやな!よっしゃほな行くで! 時代遅れの骨とう品、物部のアホどもに、日ノ本の武家の戦ぶり、骨の髄まで教えたれ! 全軍、迎え撃てぇーーーっ!!」
「うわぁ・・・かっこいい・・・ってあれ?あーし、たぶんあの人知ってるよ?西郷さんでしょ?」田島が指さした人は、フツーの着流しの着物にステテコを履いていた。あ、ステテコでええんや・・・さすが大物やな~。ウチ、歴史とかよう分からんけど。
◆
4人が率いる部隊の配置が済んで、あとは敵を迎え撃つばかり・・・っていうところで、そろそろわたしらにも敵の軍勢って言うんが見えてきた。
「うっそ・・・なにアレ?」田島が指さした方を見ると、石清水八幡宮がある山(男山っていうんやで)の東の麓に、びっしり兵隊が並んでた。
「こんな町中にあんなに武装した軍隊がいたら騒ぎになりそうなものだけど・・・アレ?」理沙ちゃんが何かに気が付いたみたいで、彼女が言う方を見ると、なんか兵隊さんが、家とかビルの上に浮いてるみたいになってた。
「??なんやこれ??」わたしらが不思議そうにしてると、総司さんがああっと言った。
「俺たちは飽くまで霊・・・常世の住人ですからね。現世のビルだとか車だとか、そんなもんにゃ干渉しない、っていうか出来ねぇんですよ。ほら、あそこ。なんてのかな?現世のビルとか家が並んでる上にガラスの板があって、そこをアイツらが動き回ってるように見えるでしょう?現世と常世は重なり合ってて、特に夏菜子さんたちには現世が見えちまうんだろうが、こっち側のモンにとっちゃ幻みてぇなもんです。それよりほら・・・」
総司さんが指さす方を見ると、空になんか良く分からない気持ち悪い怪獣みたいなんが、いっぱいプカプカ浮かんでて、空を埋め尽くすくらいになってた。
「キモ・・・なんやあれ?」ウチが言うと、総司さんが頷いた。
「ありゃ魔軍ですよ・・・オレらが日々掃除している連中です。」
「掃除?総司さんが掃除?ウケるwww」いや田島、総司さんマジメに話してるからね?
「ちょっと・・・美紗さん、失礼ですよ!ねぇ、半次郎様。」と、これは理沙ちゃんやで。
「お? おお……じゃっどん、沖田さぁ(さん)、あや(あれは)、おいが日ごろ見ちょっもん(もの)とは、ちごっちょっ(違っている)ごつ見えもすが?」
「ま、いいじゃねぇか、総司・半次郎さんよ、とりあえず、オレらの役目は姫と嬢ちゃんたちの護衛だ。人間どもの相手もしなきゃならんかもだ。お夏菜ちゃん、お美紗ちゃん、そのーなんだ?すまほってのか?それをお理沙ちゃんも使えるようにしときなよ、オレらを現世に呼べんだろ?常世にいる分にゃ守れるが、外に出ちまったら人間の銃弾は弾けねぇからよ。」
ん?ガム新さん何言うてんの?あ、しんペーを理沙ちゃんにも共有しといたらええんやな。
えーとコイツを・・・と思ったら、しんぺーの新着情報のところがピコピコしてる。なんやろ・・・
「ん?・・・共鳴召喚?・・・なになに、『しんペー』で召喚できる神兵はユーザー毎に一人だけですが、複数のユーザーで同時召喚すると、神兵同士が情報のリアルタイム共有を行い、パーティとして連携技を使えるようになります・・・なんのこっちゃ?」
「なんでしょう・・・?まぁ、とりあえずリンクください。インストールしておきますので・・・」
で、そんなことをしてたら、八幡さんがやってきた。
「夏菜子ちゃん、美紗ちゃん、あんたは・・・理沙ちゃんやったかいな?軍議に出てくれへんやろか?姫が呼んどる。」ん?なんやろ・・・
境内に作られた会議場(陣幕っていうらしい)に行くと、上座に姫が座ってて、周りに4人のお侍と清盛さんがおった。途端に理沙ちゃんが反応する。
「素敵・・・お話の中にしか出てこない英雄に会えるなんて・・・あの大鎧を着た可愛らしい方は義経様!うんっ!やっぱり美少年!いいっ!あっ!こっちのシブいおじ様は楠木正成公ね!やっぱり山岳戦だから胴丸なんだわ!あの不敵な笑顔、見て!夏菜子さん!・・・あっ!六文銭!赤備え!しかもイケメン!!う~ん、やっぱり真田源次郎信繁様が最高!見て!凛とした佇まい!・・・で、あ・・・西郷さんね。うん、あ、ワンちゃん可愛い。」
おいおい、理沙ちゃん、顔で選び過ぎちゃう?確かに西郷さんステテコやけどな。
そしたら、そのイケメンさんが立ち上がってこっちに来て・・・えっ!田島の前に跪いたで!?
「美紗殿・・・自凝島では挨拶もせず失礼いたし申した。それがし、真田源次郎信繁と申す者。西洋式にて御免。」
っていうと・・・信繁さんは田島の手を取ってキスした!!キャーーー!!!なんや!ここに来とる男前はみんな少女マンガの男役なんか!?
・・・あ、理沙ちゃんが固まっている。しかも、なんかワナワナしてて涙が流れてる。どないしてん?
「な、な・・・なんで・・・なんで夏菜子さんだけじゃなくて、美紗さんまで・・・」
「おい信繁!美紗殿は豊受大神のご化身じゃぞ!無礼であろう!まあよい、疾く始めねば・・・お方様、これが現在の敵の配置にございます・・・」護良さんが入って来て、軍議が始った。
◆
「東の麓に物部軍10万、徒歩ではありますが、連中は古代の神器を用いますゆえ、白兵戦は不利にございます。また、西南と南の空に魔軍が展開しておりますが、どうも奇妙な・・・白い、四角い箱を幾重にも重ねたようと申すか・・・あと気がかりなのは、北にある駅舎に停まっておる鉄の荷車にござるが・・・」
護良さんが地図を広げると、その上にホログラムみたいなんが出てきて、それぞれ敵の姿が映ってた。すごー、めっちゃ便利。
「荷車とな?ふむ・・・なぁ夏菜子ちゃん、あんたアレがなんかわかるか?」
吹田SAでわたしらが見たやつとおんなじロゴが書いてあった。京阪の石清水八幡宮駅の前の、ケーブルカー乗り場の駐車場に5台くらい停まってる・・・なんか、後ろにアンテナみたいなん付積んでて・・・あ、重機みたいなん積んだやつもあるな。なんやろ?
「八幡さん、たぶん敵のトラックやと思う。ここに来る途中で見てん。そやけど、だいぶ大きいな・・・観光バスくらいあるし。それになんか、ユンボみたいなん乗ってるで。」
「ふむ・・・人間の兵器は、我らでは攻撃できへんしな・・・先ずは、物部と魔軍や。みんな、献策してんか。」
そしたら、正成さんが髭を撫でながら手を挙げた。
「お方様、相手の意図が分からんかったら献策も何もあらへん。せやから、ワシんとこの草がちょっと調べてきましたわ・・・行軍の速度がやけに速い。そら速いに越したことないけど、アイツら天磐船使われへん。徒歩でっせ?二刻・・・今風に言うたら4時間ほどや。こっちに支度の暇を与えへんほど早いんやったらともかく、そもそも戦支度しとるところに慌てて行って何の意味がある?しかも、行軍の隊列が乱れとるらしいし、今の陣形も奇妙や。なんで東側に固まっとる?周囲を調べさしたけど、西の参道にも、北の参道にも敵影が見えん。そんなアホな事がありまっか?」
次に、イケメン!信繁さんが手を挙げる。
「楠公、それは誠にござるか?露骨にこちらを誘い出さんがための餌にも見ゆるが・・・魔軍の動きは如何に?」
これには、お好み焼きを焼きながら(!)清盛さんが答えた。
「我が一門の者らが哨戒にあたっておるが、何とも奇妙じゃ・・・近くに船を寄せると、何とも奇妙なからくり人形のような声で、「ウザイ」とか「ガイジンイラネ」とか「アイシテ、アイシテ」とか・・・ふつう、ああいうものは、怒りや憎しみをまき散らしているものじゃが・・・何と申すか、うわべだけと云うか・・・」
「清盛公!そんなんにビビっとったかてしゃあないで?ちょっと突っかけてみようや?なぁ源さん(信繁さんのこと)、そしたらあいつらの狙いも分かるやろ?」
「九郎殿・・・まぁ、ならぬとは申さぬが・・・!いや?まぁ・・・各々方、この源次郎、些か思うところあり申す。そも、何ゆえ物部は動いたのでござろう?御上、畏れながら、何か思い当たることはござりませぬか?」
信繁さん・・・ちょっとややこしいけど、源次郎・信繁さんな。ふたつ名前あんねん・・・は、姫に質問した。
「どうでしょう・・・これは、少し前のことですが、明治のご維新の時、物部の主神、邇芸速日命が赦免を願い出たことがあります・・・このままでは子孫らが不憫・・・って。わたくしは許してあげたかったんだけど・・・」
「ウマちゃんがアカン、って言うてたな・・・あの子がそんなん言うん珍しいんやけど・・・」と、八幡さん。
「え?そうなん?観音さんやのに?」なんでやろう?ウチは不思議に思った。あの気さくなおっちゃんが?
「えぇと・・・その時彼が言ってたのはね・・・『おまえ、姫を便利使いしたいだけやんけ、笑かしよんな。』って・・・ものすごく冷たい目だった・・・ハッキリ覚えているわ・・・」
ここまで聞いて、信繁さんは、パンと膝を打った。
「凡そですが、分かり申した・・・あ奴ら、お上に直訴するつもりではありませぬか?・・・ならば楠公、物部は本気で戦をしようとしているのでは無いやもしれぬ・・・が、そうすると人間どもの動きと、魔軍が怪しい・・・」
ここで、それまでじっと聞いてた西郷さんが、ぱっと目を開いた。
「僭越ながら……おいに一つ、策がありもす。 各々方、耳を貸してくれもすか?」
【第31話投稿! 神仏習合サイバーパンクと、勘違い紳士たち】
いつも『神話夫婦のやりなおし』を読んでくださり、ありがとうございます! お正月休み、いかがお過ごしでしょうか? 第31話、お届けしました。
今回は、まさにこの作品のジャンルである「神仏習合サイバーパンク」全開の回になりました。 神々の軍勢(天磐船や侍たち)と、現代のテクノロジー(トラックや謎のアンテナ)。 そして、空を埋め尽くす不気味な魔軍(ポリゴン?)。 この異質なものが混ざり合うカオスな戦場こそ、本作の醍醐味です。
ところで……。 今回、真田信繁(幸村)や護良親王が、美紗の手をとって**「手の甲にキス」**をするシーンがありましたね(理沙ちゃんが悶絶してましたが)。
「なんで日本の武将が西洋騎士みたいなことするの?」と思われたかもしれません。 実は彼らなりに「現代の風習(時流)」に合わせてアップデートしようと必死なんです。 ただ、彼らのベースが室町や戦国時代なので、 「今の世は西洋風が流行りらしいぞ」 →「西洋の紳士はこうするらしい!」 という情報がどこかで極端に歪んで伝わっているようで……(笑)。
必死にカッコつけようとして、ちょっとズレちゃってる「頓珍漢なイケメンたち」。 そんな微笑ましい姿も愛でていただければ幸いです。
次回、いよいよ開戦! 西郷隆盛の「策」とは一体……? 熱い展開にご期待ください!




