表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

30/39

第30話: 戦いの狼煙や!・・・っと思ったら、伊勢に入れないとか、お好み焼きが無いとか!?

姫の凛とした声が、静まり返った境内に響き渡る。 さっきまで殺気立っていた何百人ものお侍さんたちが、今は誰一人として顔を上げず、砂利の上に額を擦り付けて、その言葉を聞き入っている。 この光景……ホンマに鳥肌もんや。


「神代の昔から幾星霜・・・神仏を敬う心は、徐々に希薄になってきました・・・もちろん、わたくしは(いたずら)に神を畏れることが良いとは申しません。ですが、それによって、人々の心に、驕り・貪り・怒り・無知が蔓延り、その結果、この地球そのものの仕組みが揺らいでいることは、見過ごしてはなりません・・・その人の心の闇から生まれる邪を撃つのが、其方ら天津軍の使命でありましょう・・・」


姫が言葉を区切るたびに、お侍さんたちの背中が震え、嗚咽のような声が漏れる。「ははっ!」「御意にございます!」と、感極まっているのが分かる。 でも、姫はそこで言葉を止めず、深く息を吸うと、カッと目を見開いた。


「しかるに!・・・今このありさまは何ですか!あなた達の棟梁、八幡大菩薩 神功皇后(じんぐうこうごう)が臥せってらっしゃるのに、清盛公が悪いだのなんだのと!わたくしは、其方らにそんなことをせよとは申していません!それとも、神功皇后がそうせよとでも言ったのですか!」


びっくりした・・・ここしばらく、泣いたり、美味しいものを食べて笑ったりしてる姫しか見てなかったけど、改めて気が付いた。姫は、この国の最高神なんや・・・もんのすごい威厳!かっこいいーーー・・・あ、でも、八幡さんがふて寝してんのは、重たい女扱いした田島と理沙ちゃんの所為やで?

でも、わたしが首を捻っているのに気が付いたのか、姫はわたしの方をみて、にっこりしながらウィンクして見せた。

あ、嘘も方便っヤツやね・・・


「いま!わたくしは、皇大神(すめらおおかみ)として其方らに命じます!よく聞きなさい!・・・時を超えてこの地に集結せし、古今の武士(もののふ)たちよ!この国の、この星の未来を!子らを!守らんがためにいざ立て!かつての敵を友と為せ!生者であった時の悔悟(かいご)を、罪の償いを!今この場で晴らせ!己が愛を、義を、誠を!此度こそは尽くさんがために奮起せよ!」

いつのまにか、姫のカッコがTシャツから巫女さんのカッコに代わっていて、背中に後光が射す!


「アレ!?八幡さん!」いつの間にか、布団から出てきて、鎧姿になった八幡さんが、姫の横に控えてる。

「ふはは!姫にかっこいいところを持ってかれてもうたな!せやけど!」

八幡さんはそういうと、弓を掲げて、みんなに号令する。

「皆の者!これが、我ら皇大神のお言葉じゃ!いざ参るぞ!」そういうと、みんなが「おおぉーーーっ」って、雄たけびを上げた。


「ふぅ・・・なんとか恰好が付いたかしら?・・・タラちゃん、重い女くらいで()()寝しないでね?なんかあなたって昔からそういうところあるんだから・・・マネする子たちもいるし、巴ちゃんとか、ねねちゃんとか。」

「いや・・・せやけど腹立つやん?ウチらアレやで?子育てして、仕事もして、闘ってんのに、重たいとか怖いとか言われて・・・挙句の果てにアホみたいな女に自分の旦那取られんねんで?」


「だから、それが重たいってことなのじゃないかしら?わたくし、結婚したことないから分からないけど、いちおう子供はいたから。でも、正直アレコレいったところで、こっちの言う事なんて聞かないでしょ?・・・アレ?でもそう考えたら・・・まぁ良いか。」

そういうと、姫の格好は、またTシャツと短パンに戻ってた。


「はぁ・・・慣れないことするから疲れちゃった・・・わたくしもお好み焼き食べようかな・・・あっ!ないっ!わたくしのお好み焼きが無いっ!」

なんやと思ってみると、田島と理沙ちゃんと、総司さんと半次郎さんが、広島焼も、お好み焼きも(広島の皆さん、ゴメンナサイ!)食べ尽くしてもうてるやん!



「ごめんな、姫、ウチがすぐ焼いたげるからな!何がええ?ホルモンミックス?お腹すいてんのやったらモダンにしようか?コラ!田島!キャベツ切るん手伝わんかいな!理沙ちゃんは長芋を擦るんや!ホンマにもう・・・せっかく八幡さんと清盛さんがいっぱい焼いてくれはったのに、なんで全部食うてまうねん!総司さん!はよ小麦粉計らんかいな!半次郎さんは・・・あ、九州男児はそういうん出来へんねんな・・・ほなとりあえず、姫にお茶出しといてな?おおきに、ありがとう。」

みんなが、ブーブー文句を言いながら手伝ってるところへ、清盛さんがやってきた。


「おお娘御!…夏菜子殿と申したか!…大阪焼ではあるが、見事な手並みじゃ!…ときに、其方はアレか?皇大神の世話をしておるのか?ずいぶん親しげじゃが…」

え?…まだ言うんかい!これがお好み焼きやっちゅうねん!あ、せやけどウチも広島焼き食べたい!


「あぁ、ウチな、なんか太子のおっちゃんの子孫らしいねん。ホンマかウソか知らんけど。たまたま淡路島で会うてな。」

「太子様の?誠かっ!?これはご無礼を・・・よもや太子様の玄孫(やしゃご)・・・まぁ玄孫の玄孫のそのまた玄孫の、ではあろうが、ご無礼仕った。しかしのぉ・・・」清盛さんは、箸をもってお好みやが焼きあがるのをワクワクしながら待ってる姫をみると、腕を組んでウーンうなった。


「どしたん?清盛さん、姫に会うたん初めて?」

「あ?うむ・・・生者であったころに会うたことが無いのは無論じゃが、死した後ものぅ・・・我らは、そもヤマトと所縁(ゆえん)深き宗像(むなかた)の姫さま方を祀り奉る氏族ゆえ、本来お許しあって良いはずなのじゃが・・・伊勢の宮に入れたことは無いのぅ・・・聞くところによると、源氏とその後裔の武家も、左様なことのようじゃが・・・」


「なにそれ?どういうことなん?やって、源氏っていっちゃん八幡さんラブな人らやろ?そやのにお伊勢さんに入られへんの?」

わたしが聞くと、清盛さんはふむ、って言うた。


「いや、むしろそれ故なのじゃ。聞いておるかな?お方様は、京に都があった折、貴族らによる専横著しきゆえ、我ら武家に加護を与えた。むろん、ただ加護を与える、ということでは無い。武の鍛錬に励み、質素を旨とすることを誓わせたのじゃ。

そして、ここからが問題じゃ。我ら、宗像の姫君にお仕えする者らはともかく、お方様は東国の蝦夷(えみし)に近しい者にも加護をお与えになった。どちらかというと、その者らを好んで加護を与えた、と言うてもよかろう。」


「?それの何がアカンの?確かにウチかて東京もん苦手やけど・・・」って言うたら、田島が急に反応する。

「えっ!?夏菜、あーしのこと嫌いなん!?」

「いや、そういう話ちゃうて。一般論や。なんちゅうの?東京の人って、冷たいし、ギャグ分からへんやん?田島はコテコテやけどな。」


「あー…?えー…?コホン、夏菜子殿、済まぬが、其方らはヤマトと蝦夷の戦いを知らぬのか?」

え?ウチ、なんかおかしいこと言うた?

そしたら、いつのまに作ったんか、太子のおっちゃんがイカ焼きをつついてハイボールを飲みながら、ウチの質問に答えた。ん?ハイボール?なんでそんなんあるん?


「えーとな、今の夏菜子らの感じやと、日ノ本(ひのもと)って、北海道の端っこから、沖縄までやろ。そやけど、まず姐さんのころは、福岡から関西までがヤマトで、それも色んな同盟関係で出来たフワフワしたもんやった。高知とか謎の土地やしな。そんでな?こないだ姐さんが、朝廷の貴族がムカつくさかい、武士に加護を与えた、ちゅう話覚えとるか?」


「あ、なんかそんなん言うてはったね。」

「せや、最初に平家に与えてんけどな、平家って言うても宗像のお姫さん方を拝んどるやん?云うてそないに今までとちゃうことは出来ひんのよ。それで、姐さんは・・・」おっちゃんが続けて言おうとすると、いまはたこ焼きを作っている八幡さんが、もうええ、って言うた。


「ウマちゃん、言わんでええ。自分でいうさかい・・・まぁ、清盛らのやりよった専横がアカン、っていうんもある。せやけど、ウチはもっと地べた這いずり回っとるようなもんに国を治めさせたほうがええんちゃうかと思った。あとな、正直ヤマトはもう限界やと思った。そやから、蝦夷の末裔に、この日ノ本全体を治めさせたろて思たんや。それが鎌倉から江戸に至る幕府ってやつやな。まぁでも、武士はけっこう頑張ったで。次郎三郎(家康さんのことやで!)は、自力で神さんになるまで努力したしな。武士の世がアカン様になったら、吉之助ちゃんみたいに自ら変わって見せた。やっぱり人間、質実剛健がいちばんや!」

八幡さんが、こない言うてドヤ顔になると、太子のおっちゃんはハァーって溜息をついた。


「ま、そういうことで伊勢を牛耳っとる連中は、姐さんの息のかかっとる奴は嫌いなんよ!道真が言うとったやろ?姫を、武家の本拠地である石清水に連れてったらエライことになるって。」

えー・・・そんなん大変やん・・・どないすんの・・・って思ってたら、スマホが急にピーピーなった!


「夏菜!やべーよ!ほらっ!」田島がスマホの画面をわたしに見せると、そこには「しんぺー」のアラートが表示されてる!

『敵接近中!警戒せよ!警戒せよ!』

同時に、護良さんが本殿に飛び込んでくる。

「お方様!ただいま斥候より報告が!現世の東南の方角に人間どもの怪しげな鉄の荷車トラックのことらしいを見ゆ!また、こちらは常世の南方の空に敵影を発見とのこと!魔軍です!更に東海道を北上する敵影あり!石切の軍勢です!」


八幡さんはそれを聞くと、焼けたタコ焼きをわたしに預けて、とたんに鎧姿になった。

「来よったな!物部のアホどもが!言うに事欠いて魔軍と同盟やと!?ゆっるっさん!!!護良(もりなが)!義経、正成、信繁、吉之助を呼べ!返り討ちにするのじゃ!」

八幡さん、ごっつい怒ってる・・・お侍さんたちもすんごいテンションや・・・負ける気はせぇへんけど。


ウチらはこの時気が付いてへんかった。この戦いが、より大きくて、深い、この国の闇に切り込んでいく入口やったっていう言うことを・・・


【謹賀新年! アマテラスの大号令と、武士が伊勢に入れない理由】

あけましておめでとうございます! 新年一発目の第30話、お届けしました。


元日にふさわしい(?)、アマテラス様の神々しい大号令! 「かつての敵を友と為せ」……痺れましたね。 と思ったら、すぐにお好み焼きパーティーに戻っちゃうギャップも姫様らしいですが(笑)。


そして今回、物語の核心に触れる「歴史の解釈」が出てきました。 なぜ、源氏や平家といった武家は、伊勢神宮(ヤマトの朝廷側)から疎まれるのか? 八幡神が「東国の武士(蝦夷の末裔)」にこの国の舵取りを任せた、という解釈。 歴史好きな方は、この辺りの設定も楽しんでいただければ嬉しいです。


しかし、のんびりムードもここまで! ラストでついに敵襲のアラートが鳴り響きました。 次回、いよいよ「石清水の戦い」が開戦します!


おせち料理やお餅を食べながら、神様と武士たちの熱い戦いを見届けてください! 本年も『神話夫婦のやりなおし』をよろしくお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ