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第28話: 石清水が要塞化してて空飛ぶ船まである件。え?みんな「バチ当たり」って知らん?

参道を上がって参道をしばらく歩くと、もんのすごい立派な本殿が見えてきた。

「まぁ…素敵!これが石清水八幡宮なのね!私、初めて見たわ!やっぱり関西は違うわ!ね、夏菜子さん、美紗さん!」

なんか、理沙ちゃんがめっちゃはしゃいでるけど、別に関西やからとちゃうで?神域やからすごいんやで?


せやけど、確かに子供の頃来たのとはぜんぜん違う。

現世(うつしよ)にある実際の八幡宮も、そら確かに綺麗で立派やけど、そもそもサイズが違う。

門が大坂城の門くらい大きいし、朱塗(しゅぬ)りの柱とか、ところどころにある金細工も燻んでなくて光ってる。


「すご…なんか、神社っていうより、お城とか要塞みたいじゃね?」田島もポカーンてなってて、ときどきすれ違う鎧姿のお侍さん達をキョロキョロ見てる。

そう言えば、参道を登ってくる間も、小さいお(やしろ)みたいなんがいっぱいあったけど、壁があったり土壁で覆われたりしていて、お社っていうよりコンクリート製のシェルターに見える。もちろん、ホンマの八幡宮にはそんなものはない。


「あれはトーチカですね。夏菜子さん、ゲームとかアニメで見たことないですか?」ウチが首を捻ってると、理沙ちゃんが教えてくれた。

「ほら、シミュレーションゲームで防御用に設置したりするじゃないですか?アレですよ。」いや、そんなんせぇへんし。っていうか、理沙ちゃんってなんかオタクっぽいな・・・


「おっちゃん…何コレ?どないなってんの?ウチが見たとこある八幡さんとだいぶちゃうんやけど?自凝島(おのころしま)神社は、見た感じキラキラしてたけど、大きさ自体は普通やったで?西宮神社も…」

「ん?ああ…コレが日の本の武家の総領、八幡宮の真の姿や。八幡宮は、日本の霊界を魔物や夷狄(いてき)、それと良からぬことを企む神々の勢力から皇大神すめらおおかみを守る使命を担っとる。ほれ、警察と自衛隊みたいなモンや。一番の拠点は大分の宇佐やけど、他にもここ石清水と、鎌倉の鶴岡が何か事があるときの城になるっちゅうわけやな。」

「へえぇ…そうなんや。」


わたしはそう言うたけど、境内にはそこらじゅうに鎧をつけたお侍さんがいて、正直ちょっと怖い。

この人ら、いつでも刀の柄に手を掛けてたり、矢を弓につがえたカッコで、ずっとあたりをギョロギョロ見廻してるやん…

「あ!?夏菜さん!アレ見てください!」理沙ちゃんに呼ばれて振り返ると、船が空を飛んでる!?なんやアレ!?

空飛ぶ船は、石造りの鳥居をくぐるようにして滑り込み、本殿脇の広場に音もなく着地した。ふわりと浮いたままタラップ?が出てきて、そこから鎧を着たお侍さんたちがゾロゾロ降りてくる。


「なぁ、おっちゃん、あの空飛ぶ船ってなんなん?」

「ん?アレか?天鳥船(あまのとりふね)とか天磐船(あまのいわふね)っていうてな。神の乗り物や。もちろん現世のものやないから、人間の眼には見えんけどな。」

「そうなんや・・・せやけど、めっちゃ多ない?空を埋め尽くすくらいいっぱい飛んでるけど?」

「そらまぁ・・・日本中の武士がここに集まって来とるからなぁ・・・しゃあけど、だいたいあっちゃこっちゃ飛んどるもんやで?自分ら人間が知らんだけや。」

「ほんまに?ほな、淡路島の空の上とか、大阪の空の上もアレがいっぱい飛んでんの?」わたしがそういうと、太子さんはちょっと考えてから首を横に振る。


「そうやなぁ・・・天津軍、特に八幡宮麾下の武士が見張っとんのは、邪霊、悪霊の類や。そやから大阪の上空は、そらようけ見回っとる。京都と神戸もそうや。そやけど、淡路島は田舎やからなぁ・・・そもそも大して人がおらんやないか?邪霊ちゅうんはな、人の悪い想いが凝り固まったところに生まれるもんや。ほいで、自然ちゅうんは、人の中に巣くった淀んだ想いを清める力がある。ほいだら、洲本みたいな田舎やとそないに人の想いは凝り固まらへんやろ?自分とかアレ君を見てみ?あと、美紗ちゃんもや。」

?なに言うてんの?意味わからへん。


「あのな、どない言うたら分かりやすい?夏菜子は、洲本がド田舎やとか嫌いや、とかヘチマとか言いながら、人に優しゅうて自分の生活をちゃんと整えられる。アレ君は、自分は田舎もんや、とか言いながら、まっすぐな心意気を持ってて困難に立ち向かっていく勇気がある。美紗ちゃんは、人の気持ちを慮ることができて、分け隔てなく明るい。それはな、全部神さんの心の現れなんや。」


「え?そらまぁ・・・田島はええ奴やし、アレ君は、今回のことでメッチャ頑張ってくれてるけど、そんなん当たり前やん?ウチら公務員やし、市民・県民のために頑張るもんやろ?あと、ご飯つくるんと掃除するんとかフツーやん。田島はアカンけど…アイツお嬢やし。」


そうやって話してたら、田島が突っ込んできた。「どしたん、夏菜?なんかあーしのわるぐち言ってたっしょ?」

「あ?うん、言うてたで?田島は米もよう研がれへんって。そんな女はアレ君は嫌なハズやって。」

「な!?いいじゃん!明日から本気だすんだよ!見ててよ、夏菜もビビるくらいの絶品フレンチとか作ってやっから!」

いや田島。いきなりフレンチやめとけ。最初は白ご飯と味噌汁だけで充分や。

そんなウチらのやり取りをみて、おっちゃんはカラカラ笑った。


「ま、そういうことや。美紗ちゃんは、金のある家のお嬢さんなんやろうけど、気取るところが全然なくて、いつでも裏表がのうて正直や。まぁ、外宮のトヨウケヒメの化身ちゅうんもあるやろけど、そういうんを直霊(なおひ)って言うんやで。」

「なにそれ?ナオビノカミ?まえにクシイナダさんが言うてはったけど?」

「まぁ、ナオビノカミも、直霊あらわれの一つや。それはな、心の奥の方にあって、何をどないしたらええんか、導きを与えてくれる。そやけど、心の中に(けが)れがあったらそれはよう分からん。そんでな、自然はその穢れを自ずとキレイにしてくれるんや。ほんで、神の世界と人の世界のゲートは山とか海とか自然の中にあることが多い。ホレ、有名な神社はたいがいそういうところにあったり、鎮守の森とか、神木を守ってたりするやろ?」


「へぇー・・・そしたらさ、おっちゃん。東京とかほぼ街じゃん?そういうところって、人の悪い想い、穢れが溜まりやすい、だからサムライさんたちが巡回してる、ってこと?」

「あ、そうそう!やっぱり美紗ちゃんは頭がええわ!話が早うて助かる!・・・そや、バチ当たりって分かるか?夏菜子、どないや?」


「いや、分かるかって・・・当たり前やん。盗んだり、人いじめたり、嘘ついたり・・・地獄行きってやつやろ?何でそんなこと聞くんな?」ウチがそない言うたら、おっちゃんはニヤッと笑った。

「美紗ちゃん、理沙ちゃん、どないや?」でも、二人はポカンとして、首を横に振った。


「え?なにそれ?イミフじゃね?そんなのパパからもママからも聞いたことねーし。」と、これは田島や。

「私もちょっと…ママンはフランス人だし、パパは日本人で、横浜の港北区出身ですが、そんな言葉は聞いたことがありません。」と、これは理沙ちゃん。

え?なんやて?どういうこっちゃ?


「え?…バチ当たりて言わへん?…ほら、近所のお好み焼き屋のおっちゃんがしょっちゅう言うてるやん。ワシのお好み焼きを食われへんって、なんちゅうバチ当たりなやっちゃ…みたいな。」

「え?なにそれ?あーし、洲本の方言だって思ってたけど?」

ええ…そうなんや…東京って、なんかキモいな。


わたしらが喋ってたら、姫が振り返って言うた。

「ウマヤト君、そろそろ本殿に入りましょ?タラちゃんが待ってるわ。」

タラちゃん?誰ですか、それ?


「八幡の姐さん…息長帯比売命おきながたらしひめのみこと のこっちゃ。姫からしたら子孫やねんから、八幡さんとは言わんやろ。」

太子のおっちゃんが説明してくれて、わたしらは「あーっ」といって納得した。

今更やけど、姫って可愛い女の子みたいやから気が付かへんけど、この国の神様のご先祖の一人やねんな…

「ご先祖様やのに、JKみたいな見た目やんな…?クシイナダさんとか、八幡さんはめっちゃ貫禄あってお姉さんっていうか、お母さんみたいな感じやのに・・・」


「あら?夏菜子さん、どうしたんですか?」理沙ちゃんに独り言を聞かれたわたしは、なんでもないって言って本殿に入った。


【神の要塞と、「バチ当たり」について】


いつも『神話夫婦のやりなおし』を読んでくださり、ありがとうございます! 第28話、お届けしました。

ついに足を踏み入れた石清水八幡宮。 そこは、私たちが普段見ている神社とは全く違う、まさに「神の要塞」でした。 理沙ちゃんのゲーマー知識が光りましたね(笑)。


今回、すこし神道の背景にある考え方を書いてみました。「穢れ」と「バチ当たり」ですね。田舎の農家出身の夏菜子と、東京や横浜で育った美紗や理沙。ちょっと感覚の違いがあります。

これは、僕が関東に住んでいた時の感覚を書いてみたんですが、 地域格差って、あるのかもしれません。皆さんはどう感じましたか?


次に、「直霊 なおひ」という言葉。じつは、この物語のキーワードにもなっています。

この言葉、なかなか聞き馴染みが無いと思いますが、仏教では「仏性 ぶっしょう」、儒教では「誠 せい」と言ったりします。

良かったらググってみて下さい。


それから、最後になりましたが……。 26日で仕事納めだった方も多いのではないでしょうか? 一年間、本当にお疲れ様でした。 今は、お家でのんびりされていたり、帰省の準備や大掃除をされていたりする頃かと思います。


そんな年末の貴重な時間に、僕の物語を読んでくださり、本当にありがとうございます。 親愛なる読者の皆さんが、この物語を通して少しでも楽しい年末年始を過ごせることを願っています。 暖かくして、続きも楽しんでくださいね!

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