第26話: 吹田SAで敵と遭遇?っていうか、ガム新さんはたこ焼き食べたいねんて!
「ほんで、今日はどないしはるんでっか?ここに泊まっていはかります?」でも、ヒルコ様の質問に太子のおっちゃんはいや、って言うた。
「すまんが、どこに敵がおるか分からん。ここは防備も十分やないし、軍も置いてへんやろ?だいたいヒルコはん自身も戦いは得意やないやろ?」
そしたら、ヒルコ様はブルブルっと震えた。
「せやねぇ……。アマテラスには気の毒やけど、すぐ発った方がええなぁ。みんなで石清水に入った方がええ。 太子はん、すんませんが、妹をお願いしますわ。 アマテラス……甲斐性のない兄でごめんやで・・・」
せやけど、姫は嬉しそうにヒルコ様を抱きしめた。
「謝らないで…とっても色んなことを教えて頂いたわ…それに、兄様に会えてよかった…ねぇ?今回のことが終わったら、ときどき来て良いかしら?お優しい兄様と、もっと一緒にいたい…」
「そら良かった! ……せやけど、こないなグニャグニャの僕に会いに来たりしたら、アレコレ言われてまうんとちゃうか? 無理せんでもええんやでぇ? ふふふ……」
ヒルコ様がそういうと、姫は彼のプルプルの肌?に頬ずりする。
「もう!お兄様のイジワル!誰にも文句なんて言わせません!それに、このお姿を見れば、きっと皆んながファンになるわよ!そうだ!伊勢でお兄様の姿のヌイグルミにして、ヒルコ守りとかいって売ったら良いかも!そして、伊勢参りの後にここにお参りに来たらご利益10倍になるキャンペーンとかしようかしら!?」
「こらこら! 公私混同はやめなさい。まぁ、そんだけ元気やったら大丈夫そうやな。気をつけて行ってきぃや。 夏菜子さん、美紗さん、何かあったら知らせてな? この子を、よろしゅう頼みますわ。」
ヒルコ様はそう言って、前屈みになった。
「よし!ほな行こか!まずは石清水八幡宮や!理沙ちゃん!ようよう頼むで!」
「え?えぇ・・・?いきな名前呼びとか・・・セクハラですよ。聖徳太子様!」
「お?そやったそやった!こりゃ失礼!ヒルコはん、おおきに。落ち着いたらまた寄らさしてもらいまっさ!ビールでも飲みながら阪神の試合見に行こうや!」
「ふふ、太子様はホンマに相変わらずでんな・・・もちろんですわ。そのためにも、こんなアホみたいなことはシャッて終わらさんとね!」
そんな風にして、わたしらは西宮神社を後にした。
◆
「えーと、石清水八幡宮って、どうやって行ったら良いんだっけ・・・?あー、なるほど、名神高速ね・・・ねぇ太子のおじさん、男子は全員霊体になっといてくんない?ぜんっぜん後ろ見えなくて邪魔なんだけど?」
「な!?美紗ちゃん!ワシら霊体やけど、気分的には狭いんやで!?」
「しょーがないじゃん。理沙ちゃんだって乗ってんだから。あーしでしょ、夏菜、姫、理沙ちゃん。このクルマ4人乗りなんだからさ、早く早く!」
西宮から名神高速に乗って移動していると、ガム新さんが話しかけてきた。
「なぁ、お夏菜さんよ、出がけにとっぽい兄ちゃん・・・アレ君だっけか?神兵召喚どうのこうの・・・みてぇなことを言ってやがったが、ちょいと使ってみちゃくれねぇか?」
「お、お夏菜さん?いやウチは夏菜子やねんけど・・・で、なんでなん?召喚して欲しいん?」わたしがそう言うと、ガム新さんは、高速の標識を指す。そこには「吹田SA 2km」と書いてた。
「ん?あ、もうじき吹田やな・・・それがどないかしたん?」そういうと、ガム新さんは気まずそうに笑ってごまかす。
「いやその、なんてのかね?ちょいと今の時代のもんを食ってみてぇじゃねぇか?大正4年にくたばってからずっと霊体だったもんでよ、常世の膳しか食ってねぇんだよ!そりゃまぁ、歳さんはハイカラ好きだからよ、ビールも飲むし牛鍋も食うが、オレぁどうもラーメンってのを喰いたいねぇ!どうだい総司!そう思わねぇか!?」ガム新さんがそういうと、総司さんもうんうんという。
「ま、そうだなー、俺は甘いもんが好きなんだけど、常世って言うのは中々保守的でしてね?いまだに饅頭だの羊羹だのしかでないんですよ~、いや~バームクーヘンっていうのかい?実にうまそうじゃないか!」
「あ?そうなん?まぁもうじき午後2時やし、お昼にした方がええけど・・・っていうか、それと神兵召喚プログラムと何の関係あんの?」
「そりゃおめぇ!霊体のまんまだったら現世の食いもんなんて食えねぇだろ?それにな、そういうんもんはいざ敵が来たって時にいきなり使おうと思っても、慌てちまって上手くいかねぇもんだ。今のうちに慣れといた方が良いだろ?」
なんや、自分らが食い意地はっとるだけやんか。そういうと、太子のおっちゃんも同意する。
「いや、その通りや。道真は、大阪天満宮に行ってもうたから、ここで戦えんのは永倉や総司、半次郎しかおらへん。人間だけが相手ならそれでええが、人間の兵器は別や。試しておいて損はないやろ。」
吹田サービスエリアに入ると、レストランとフードコートがあった。
「海鮮丼、たこ焼き、カスうどん・・・ねぇ夏菜、これなら淡路島にもあるんじゃん?ってかあっちの方が美味くね?」
「うーん・・・一般道に降りた方が良かったかな?なんかもう一つぱっとせん気が・・・まぁええか?ガム新さん、ちょっとやってみる?」
「おぅ!頼まぁ!イヤー楽しみだなぁ!この令和のお上の世ってなぁ、どんな美味いもんがあんだろうな!総司、半次郎さんよ!」
めっちゃ期待してはるなぁ・・・いや、たぶん、魚は明治時代の方が美味いんちゃうかな?知らんけど・・・ともかくやってみよう。
スマホの画面を開くと、「しんぺー」と書いたアイコンがある。いや、しんぺーって。アレ君よっぽど急いでたんやろな。それをタップすると、2頭身キャラのお侍が出てきた。どうも、ガム新さん、沖田さん、半次郎っさんっぽい。
ためしに、浅葱色の羽織を着たオッサンっぽいアイコンをタップすると、こんな表示が出てくる。
「神兵召喚しますか?Yes/No」さらにYesを押すと、画面いっぱいにお経みたいなのが出てきて、こんなメッセージが出てきた!
「唱えて下さい!南無ガム新、来臨守護急々如律令!」
「え?なにこれ!?ウチのスマホ壊れた!?」やけど、ガム新さんは、ちがうちがう!その通りに言うんだ!って教えてくれた。
「召喚するもんが、直に自分の意志を宣言せにゃなんねぇのよ、その手のモンはさ!だから言ってくれ!」
「え?えーと、」
「えーとこれかな?南無ガム新、来臨守護急々如律令!」すると、突然辺りを白い光が覆って、無数の文字コードが螺旋状に走って人の形になっていく!
目を開けると浅葱色の羽織を着たガム新さんが立っていた!
「え?なにコスプレ?」周りの人がじろじろ見るので、適当に誤魔化していると、とたんにスマホから警告音がした!
画面をみると、点滅しながら赤い文字のメッセージが流れる!
「敵発見!敵発見!タダチニ神兵召喚セヨ!」
「なに!敵か!総司、状況を確認しろ!ガム新さんが他の二人に声を掛けるんで、びっくりして辺りを見回すと、淡路島で見たトラック・・・Homines Creavit corp.って書いたヤツが止まっている・・・でも、こっちには気が付いてないみたいやった。
「ちょっと、ガム新さん・・・そのカッコやと目立つから車の中に入っといて・・・」わたしと田島は、ガム新さんと姫を車の中に隠して、さっきのトラックを見張った。
「ねぇ夏菜、この間みた白い服の奴らが出てきたよ・・・あ、フードコートの中に入っていった・・・どこにいくんだろ?」
すると、太子のおっちゃんが声を掛けてきた。
「なぁ夏菜子、ちょっとアレ君と真魚に連絡してくれへんか?式神を付けられへんかって・・・」
田島が連絡すると、画面から白い人型がにゅっと出てきた。
「うわっ!なんやこれ!」
人型はヒューっと連中のトラックの方に飛んで行って、ぴたっと張り付く。同時に、アレ君からLINEが入った。
『お手柄だね、夏菜子ちゃん。アジトに入ったときに敵を式神が見失ったみたいだったからちょうどよかったよ。僕たちは、いま高野山にいる。真魚さんのところに高スペックのワークステーションがあって、それなら金烏玉兎集ver2.0がフルスペックで運用できるから、敵を見失うことが無いと思う。』
「え?アレ君たち、いま高野山にいるの?早くね?ってか、なんで真魚さん、そんなの持ってんの?」
「あ、美紗さん、白服の連中が戻って来ましたよ!アレは・・・たこ焼きを持っているんですかね?あ、行っちゃいました・・・」
いつのまにか白いトラックは行ってもうて、もう一度アレ君からLINEが入る。
『しんぺーをアップデートしたのでリンクを送ります。敵の居場所を突き止められるようにしたから。』
リンクを開くと、しんぺーの更新が始って、マップに赤い点で敵の位置が点滅するようになった。たぶん、さっきのトラックっぽいヤツが名神高速を京都の方に向かって動いていくのが分かった。
「アレ君てホンマにすごいな・・・でも、これで敵の動向は全員で共有できるようになった。僥倖やな。」
太子のおっちゃんがいうと、ガム新さんは窮屈そうに不平を言うた。
「太子さん、もう良いでしょう?たこ焼きでも海鮮丼でも良いから食わしてくれませんか!?」
【祝・1,000PV突破!&第26話お届けしました!】
いつも『神話夫婦のやりなおし』を読んでくださり、本当にありがとうございます! おかげさまで、累計PVが1,000を突破いたしました! 画面の向こうで読んでくださる皆さまの存在が、毎日の執筆の何よりの励みになっています。
さて、今回の第26話は「嵐の前の静けさ(?)」回でした。 西宮のえべっさん(ヒルコ様)の「はんなり商売人」な優しさと、ガム新さんのまさかの「サイバー召喚」&食い意地、楽しんでいただけましたでしょうか? 敵までたこ焼きを食べているという……(笑)。関西の敵はどこか憎めませんね。
次回からは、いよいよ物語が動き出します。 ガム新さんたちの実力行使はあるのか? そして美味しいものは食べられるのか? 引き続き、応援よろしくお願いいたします!




