第23話: 車内は霊体で満員?っていうか、この仕事、デッチ上げなん!?
「なんかさぁ・・・車内せまくね? コレ、軽だし、マックス4人乗りなんだよね? 後ろ見えねーし」
田島が運転しながらバックミラーをみて文句を言う。
「美紗ちゃん、どないしてん? 乗ってんのは自分と夏菜子だけやないか? ワシと姫その他は勘定に入ってへんやろ?」 うん、おっちゃんの言うことには一理ある。確かに物理的な乗員として乗ってんのはウチらだけやろ。 せやけど、車内は暑苦しいオッサンら(霊体)でみちみちになってた。
「あの・・・わたくし後部座席に移ろうか? ほら、霊体だからいくらでも消えたり現れたりできるし・・・」 姫はそう言ってくれたけど、わたしらは断固きっぱりと断った。 姫みたいな可愛い女の子がとなりにおるから田島も気分よう運転してくれるんやし。問題はそれ以外のおっちゃんらである。
「おい、沖田君、きみら姿現してる必要ないやろ? 霊体になっといたらどや?」 と太子のおっちゃんが言うのに対して、
「なんでです? 俺らだって姫様といっしょにいたい・・・もとい、姫様をすぐお守りしなきゃならんのだから、隠れていちゃあいかんでしょう? ね、永倉さん」
「ああそりゃ違いねぇ。太子様、姫さんを独り占めしようったってそうはいきませんぜ。そんなこと言うんなら、そこのゴツイ薩摩野郎に言えば良いでしょうが」 ん? ガム新さん、願望言っちゃってるからね?
「ないをゆか。薩摩隼人は帝をお守りせんがために挙兵したんじゃで、皇大神をお守りすったぁ一にこん半次郎と決まっちょりもす!」
なんやこの人たち・・・ただの姫のファンになってもうてるやん・・・いちおうウチと田島の護衛なんちゃうん? っていうか、霊体やし座る必要ないんわかるけど、天井に張り付いたり後ろのトランクに入ったりすんのはどないなん? 邪魔でしょうがないんやけど。
「あんなおっちゃん、いま思ったんやけど、この人らに霊体になれって言うんやったら、おっちゃんもならんとあかんのとちゃう? ほら、言行の不一致的な」
「オマエ、親の親のそのまた親的なワシに向かって何ちゅうことを! だいたいワシ仏やで? 観音さんやで? 君ら武士なんやったらワシをもっと尊ばんかい!」 うわ、ここに来ていきなりの権威主義サイテー。太子のおっちゃん見損なったわ。なんなら親戚なんが恥ずいわ。
「いやー、オレ浄土宗なんで。南無阿弥陀仏なんで」 うん、沖田さんひどいな。分からんでもないけど。
「オレも、小樽の墓は宗派なんてねぇからなぁ・・・岡山の墓は臨済宗だし、東京の墓は、あれぁ勇さんの墓だしなぁ・・・」 「オイは墓自体がありもはん。廃仏毀釈でのうなってしもたじゃっどん、時宗じゃったかなぁ?」
「太子さん、もうその話よくない? 運転してんのあーしだし。あ、着いたよ。ここ西宮神社じゃね?」 田島にとどめを刺されておっちゃんはシュンってなったけど、わたしと田島はとりあえず文化庁の担当者に会いに行った。
◆
「あ、どーもどーも! 夏菜子ちゃん、美紗ちゃん、お久しぶり! って言うか昨日ぶり! 元気してた?」 神社に入ると、なぜか見慣れたサラリーマン風の人がおる。
「ん? 何で道真さんがここにいんの? 文化庁の担当者って道真さん?」 田島が怪訝な顔で尋ねると、道真さんは首をなんべんも振って否定した。
「まさか! そんなわけないやん。担当者って言うんはこちら、紹介するわ」 道真さんが言うと、アフリカ系っぽい、わたしらと同い年くらいの女の子がお辞儀をした。
「はじめまして! 滝沢・バーキン・理沙って言います! 今回は文化庁の事業へのご協力ありがとうございます!」
はい? 文化庁の事業への協力? なんのこっちゃ? そう思いつつ受け取った名刺を見ると、そこには「文化庁 文化財部 文化観光振興係」って書いてあった。
「えーと・・・すみません、わたしらは、兵庫県庁 淡路県民局 洲本健康福祉事務所 監査・福祉課の小路夏菜子と・・・」
「同じく田島美紗です。よろしくお願い致します・・・あの、ところで滝沢さん・・・文化庁の事業への協力って、どういうことなんでしょう? わたしたち、文化庁様の方からお話があるとお聞きして、こちらまで来たんですけど・・・」
田島は質問すると、滝沢さんはニコニコしつつも「??」という顔をする。
「ん? アレ? ・・・あのー・・・菅原先生? たしか兵庫県庁の方で、淡路島の自凝島神社にとても神道の神様に詳しい人がいる、文化庁の事業に興味があるようだからご紹介しましょう・・・的なお話でしたよね?」
滝沢さんに可愛く問い詰められて、道真さんはしばらくあさっての方角を向いていたけど、ウチの方をチラっと見ると小声で滝沢さんに聞こえないように言った。
(ちょっと! 話合わせてくれな困るやん! 太子さんがむりやりでもエエから仕事作ったれ、っていうから段取りつけたのに!)
(え、ウソ!? ウチ太子のおっちゃんから、ワシオマエ、文化庁の上の方にツレおんねんって聞いたで! 嘘なん? ハッタリなん!?)
(ちがうちゃう! それ僕やから! だいたい上の方でもないし!)
「菅原先生? なにヒソヒソ話をしているんですか? もしや『ウソ、大げさ、紛らわしい』っていうヤツじゃないですよね?」
滝沢さんが可愛く、しかしややキレ気味になりながら道真さんのネクタイを掴んで締め上げると、彼は鼻の下を伸ばしながら冷や汗を流して、嬉しいのか苦しいのかよう分からん顔をした。
「いや! ちがうちがう! そんなウサギとカメとワシが出てくる宣伝みたいな話ちゃうから! ある意味間違うてへんから! な、夏菜子ちゃん、美紗ちゃん!」
これなんて答えんのが正解なん? 自凝島神社で朝ごはんもおでんも食べました、とか、神様も仏様も知り合いです、って言うのは詳しいことになるんやろか?
「うーん…」 道真さんが首を締められている間に悩んでいると、太子のおっちゃんが姿を隠したままわたしに耳打ちした。
(アレちゃうか? どのみちヒルコはんに会わなあかんねんから、この娘も一緒に神域に入ったらどないや? ワシらそのタイミングで出てくるし)
(え? そんなポンポン人間入れてええの? アレ君も含めてこれで四人目やろ?)
(大丈夫大丈夫! そんなんサイアク夢オチとかにしたらええから!)
(それやったらええけど…あ、そやけどアロハシャツはやめてや! せめて観音さん風にせな! 姫もやで、Tシャツ禁止! 巫女さんの服にして!)
(え!? わたくしも!? アレ着付け面倒だから嫌なんだけど…)
(ちょ、ワシもアレ嫌やねん…滅多に着いへんから一人で着られへんのよ。ちょっと恥ずいし…)
(二人とも何言うてんの! アロハのオッサンとTシャツのJK出てきて誰が神さんやと思うねん!)
「あら? 小路さん、どうかされました? なんか固まっておられますけど…」 わたしが頭の中で、おっちゃんと姫と話してると、滝沢さんは不審そうにこっちを見る。なんちゅう目ざといやっちゃ。
とそのとき、田島がパッと前に出てきた。 「すみません、小路は車に酔ってしまったみたいで…とにかく、中に入りませんか? 経緯は道々話しますので…」
やたっ! 田島ナイスフォロー! 境内に入ったらこっちのもんや。 姫がそっと柏手を2回打つと、神域が開いて、わたしらは滝沢さんをその中に連れ込んだ。
◆
「わぁ…素敵。わたし横浜出身で、こちらの神社って来るの初めてなんですけど、すごいですね…床も天井もみんなキラキラ輝いていて…これって金なんでしょうか? あ! この朱塗りの柱もとっても鮮やか! 光っているみたい! やっぱり関西って文化遺産の宝庫ですよね! 関東と全然違う!」
そんなわけないやろ。どこの神社や寺の柱が光ってんねん。 まぁここは知らん顔しとこ。知ったかして後でどつかれても敵わん。 この娘、見た目の可愛さに反比例してなかなかバイオレンスな気がする。
ここで、おっちゃんがまた耳打ちしてきた。
(そろそろ出て行った方がええわ。ほら、そこに遥拝所ってあるやろ? あそこで姫が出ていって、それにびっくりしてる間に観音様ルックのワシが出ていくんや。どや? 神様仏様っぽいやろ?)
ん! 確かに! わたしらは滝沢さんを遥拝所の方に誘導した。
「滝沢さん、本殿にお参りする前に、遥拝所で天照大神に参拝しましょう。では・・・」 わたしらは、柏手をパンパンと打ってお辞儀をしようとした・・・
「あ? あれっ!? た、田島さん! あなた、頭!? あ、あの! お尻に金色のフサフサが!」
滝沢さんが急に叫んで何やと思ったら・・・
「ちょう、田島・・・あんた、あたまにイヌの耳と、お尻に尻尾生えてんで・・・」 わたしがソレを指さすと、田島は驚いた自分の頭を触り、お尻にいきなり生えた金色のフサフサを見てわなわな震える・・・
「ウソー! なにこれー!」 いや、何これなんはウチやって。 そしてそのタイミングで、姫とおっちゃんが現れた。
「どういうことやこれは・・・もしかして稲荷神?」
もー、おっちゃんもアロハシャツに戻ってもうてるやん。姫もTシャツと短パンやし。
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護衛の英雄たち(霊体)でギュウギュウ詰めの車内、運転手の田島ちゃんお疲れ様でした(笑)。 そして、文化庁から新キャラクター「滝沢・バーキン・理沙」が登場! 彼女を巻き込んでの「神様ルーツ調査」が始まりますが……。
せっかく神々しい雰囲気で登場しようとしたのに、アロハシャツとTシャツで全部台無しにする神様たち。 さあ、この状況をどう誤魔化すのか!?
次回、西宮神社で待つ「ヒルコ様」がいよいよ登場します。
第24話は【12月20日(土)】の更新予定です。 週末の更新もぜひお楽しみに!
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