第15話 : 土下座でプロポーズ?っていうか、東北男子はウケが良い。
「えっ?神社?なして神社さ来るんだすか?」あたりまえやけど、アレ君は怪訝な顔をする。
その横でわたしがアマテラスからもらった鈴を鳴らすと、鳥居の真ん中がピカッと光って茅の輪が現れた。
そしてそこから、かりゆしでサングラスのおっちゃんと、甚平で無精髭の兄ちゃんという、如何にも怪しい二人が出てきた。
「おぅ、夏菜子!おおきにやで!ほんでこのボンがアレかい?」
「美紗ちゃん、あのLINEはファインプレーやったわ。ま、自分くらい別嬪やったらこないなお登りさんくらいわけないわな!ガハハ!」
怪しいオッサンたち…つまり、聖徳太子のおっちゃんと、真魚さんを見たアレ君は腰を抜かしてへたり込む。
「な、な、何だすか!?この893風のおじさんたぢは!分がった!これはボッタクリ風俗ってヤツだ!ちぐしょう!やっぱしおいが田舎者だんてってカモにされでだんだ!そりゃそうだよな、こんた美人二人デートどが…やっぱしおいだばリア充にはなれねんだ!うわぁーん!」
「ちょっとアンタら!何をほたえとんねん!姫かておんねんから静かにせんかいな!」ここで、騒ぎを聞きつけて来た八幡さんが出てきて、ウチらは全員怒られた。
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「なんや、ほんなら悪いんはウマちゃんやないの。夏菜子ちゃん、美紗ちゃん、堪忍やで。ほんでこの子かいな?デジタルなんちゃらに詳しいって言うんは?」
八幡さんは、ウチらを土間に通すとアレ君にお茶を出しつつ勘違いを詫びた。
アレ君は事情がわからないなりに、目の前の女性が放つ威厳を感じて頭を下げる。
「初めまして、おいだば高橋・アレクセイ・銀次郎ど申します。洲本市役所のDX推進課がら来ましだ。」
「え?なんやて?・・・あぁ、蝦夷の子かいな・・・えーと、ウチらのことは二人から聞いてるんやろか?ウチは神功皇后、八幡宮の神さんや。よろしゅうな。ほんでそこのサングラスのおっさんは聖徳太子、髭面の汚いのんは弘法大師空海、別名真魚や。」
それを聞くとアレ君は一瞬目を丸くしたけど、周りを見廻すとふむふむと頷いてわたしの方を向いた。
「夏菜子さん、美紗さん。こぢらの皆さんどうも普通の人でねみだいだすね。それど、この場所もただの神社では無ぇようだし。どんたごどが教えでたんせ?」
あ、一番肝心なことを説明してへんかった。
「ごめんな、アレ君。実は今日来てもらったのは他でもないねん。実はこの人らは皆神様と仏さまで・・・あと4人くらい居てはって。あと、ここもただの神社やなくて、霊界っていうか、常世の中にあんねんて。じつは今日来てもらったのは大事な相談があったからで・・・」
そういうと、アレ君は「神様?」といって目をパチパチさせた。ほら、びっくりしてるやん。っていうか、信じられへんやんな。
ところが、アレ君は特別驚いた風もなく、妙に納得した風に大きく頷いた。
「あー、これは迷い家みだいなものだすね。まんず神隠しなんて珍しぇものじゃねぁし。」
「え?びっくりせぇへんの?」と、わたしが聞いても彼は首を横に振る。
「おいの地元さも鳥海山や男鹿半島さ霊場があるし、爺っちゃや婆っちゃから、神様の家さ招がれだどが、妖さ攫われだ、なんて話はよぐ聞いだがらね。それど、母っちゃはロシア人だんだども、地元でも精霊ど暮らした男の話どがもあったし。そんたに驚ぐごどでもねべ?それより、おいだば関西の神様さ会うのは初めでだし、ただお邪魔しちゃ失礼なんでねがな?、ご挨拶してもえ?」
これには、わたしらもだけど、八幡さんや太子さん、真魚さんも驚いた。
「あんた・・・きょうび珍しいな・・・まぁそないに信心があるんはウチらからしたら嬉しいことやけど、やっぱり東北はだいぶ違うんやねぇ・・・」
「なんかワシ、神や仏っちゅんは、この辺のもんしか拝んでくれへんもんやと思とったけど、いや、何でも決めつけはアカンな。なぁ真魚?」
「せぁなぁ・・・オレはだいたい高野山の奥か四国におるから、関東や東北は不案内やけど、案外日本も広いもんやなぁ・・・うん!気に入った!兄ちゃん、ちょっとまっとき。他の神さん連中とこの神社の家主を連れてくるさけ!」
しばらくすると、土間に隣り合った茶の間に全員が集まって来て、小角のおっちゃんが大皿を持ってきた。
「ほいほい、ちょっとごめんやで。夏菜子ちゃん、美紗ちゃん、急やよって簡単なもんしか用意できへんかったけど、かまへんか?姫とマルナカの南あわじ店いうとこ行って買うてきた、今の時期の魚の造りや。」
大皿には、この時期に淡路島で獲れる魚がところ狭しと並んでいる。
造りはマナガツオ、タチウオ、アジ、サワラはタタキ、ハモは湯引きと天ぷら、タコは唐揚げと造り。あと、寿司も並んでて、囲炉裏にはアラ汁の鍋がかかってた。
「すご…これ全部小角のおっちゃんが作ったん?」
「うん?いや、皆んなで捌いたんやで。姫がえらい手伝ってくれてのぅ・・・いや、びっくりしたわ。昔は米もよう研がんかったんやけどなぁ・・・」
「小角のおじ様、何時の話をしてらっしゃるの?それ飛鳥に浄御原宮があった時のことでしょう?わたくしだって、最近はイナちゃんに習って腕を上げたんですから・・・」と、そこにエプロン姿の姫・・・アマテラスさんが皆の分のお椀や箸を持ってやってきた。
「あ、夏菜子ちゃん、美紗ちゃん、ありがとう。あら?こちらの殿方は・・・異人さんかしら?可愛らしい方ね。」アマテラスさんはアレ君を見るとニッコリ微笑んだが、アレ君は雷に打たれたみたいに固まっている。
「ん?アレ君どうしたん?なんか固まってね?」田島が彼をツンツンしても、全く無反応で口を開けたままびくともしない。
「あ、しもた・・・姫が美人すぎて頭がショートしたんとちゃうか?アレ君?おーいアレ君!」
「ぷはっ!さっと・・・え!?なに!?こんたしったげきれいなふと!・・・いや、いげね!こんたごどしてら場合じゃ!すまねぁ、会ったばがりんだどもおいの嫁ごになってたんせ!」わたしと田島が揺さぶると、意識がもどったアレ君はいきなり姫にプロポーズする。
「なんだよ、アレ君!ウチらがいるのに順番おかしくね!?」いや、田島よ、そこちゃうやろ。っていうかいつの間にお前はアレ君の彼女やねん。
もちろん姫は顔を真っ赤にして固まってるけど、小角のおっちゃんは感慨深げに髭を撫でている。
「おお!・・・きょうびハッキリした坊やな。いやー、最近の若いもんはおなごがおってもグジグジしたんが多いのに、兄ちゃん中々見どころがあるやないか!姫、どや?この際このボン連れ帰って、私はもう神婚を済ませましたから、そんな気味悪いバケモンはいりません、って言うたったらどうや?いや~東北の若いもんええのぅ。こんど蜂子皇子はんに会うたらようよう礼を言うとかんと!」
「ちょっとおっちゃん!姫固まってもうてるやん!ちょっとアレ君!いきなり何ゆうてんの!失礼やん!この人はアマテラスさま、日本でいっちゃん偉い神さんやで!」そういうと、アレ君はさすがにアカンことを言うたことを自覚して土下座した。
「すまねぁ、おい、あだがあんまり奇麗なもので!バカなごどいってしまって!知らねごどどはいえ、大変失礼なごど申した!どうが許してたんせ!」
いや土下座って・・・なんかこの子、極端やな・・・。
ご覧いただきありがとうございます。
新キャラ・アレ君(アレクセイ銀次郎)、やってくれました。
神仏の集まりを「ボッタクリ風俗」と勘違いして号泣。
誤解が解けたと思ったら、最高神アマテラス様に一目惚れして即・土下座プロポーズ。
登場早々アクセル全開ですが、そんな彼を「見どころがある」と受け入れる関西の神様たちの懐の深さ(?)も書けて楽しかったです。
そして、小角のおっちゃんが振る舞った「淡路島の地魚盛り合わせ」。 マナガツオ、タチウオ、サワラのタタキにハモの湯引き……。 淡路島は本当に魚が美味しいので、神様たちが宴会をしたくなる気持ちもわかります(笑)。
さて次回、賑やかな宴の最中ですが、道真公が少し真面目な顔をして……? 「神と仏の違い」についての講義、そしてついに「敵」の影が迫ります。
続きが楽しみ!アレ君頑張れ!と思っていただけましたら、ブックマークや評価で応援していただけると嬉しいです。




