第13話: 反魂法?っていうか、米研がれへんお嬢さんと美少年
ご飯を食べ終えてお茶を飲みながら、わたしらは今日真魚さんが言うてたことを話し合った。
「ねぇ夏菜、金烏玉兎集ってさ。言ってたじゃん。」
「うん?あー、ジュソ?とハンゴンホウ?が書いてある、みたいな。」
「そうなんだけど…あーし気になってAmazonで買ってみたんだけどさ。Kindle版があったから。」
コイツはわたしが飯作ってる間にそんなん買うてたんか…
「でね、それって占いの本みたいなんだよね。方位とか暦とか風水とか…ちょっとは呪いについてのことも書いてあるみたいなんだけど…」
「そやけど…小角のおっちゃんメチャ驚いてたやんな。反魂法やったっけ?」
「なんかー、あーしも気になって調べてたんだよね…そしたら似たようなお話で、撰集抄っていうのがあって。ほら百人一首で西行ってあんじゃん?」
誰やそれ?っていうか、百人一首って。田島はちょくちょくカシコの片鱗を出してくる。
「その西行ってお坊さんがさ、反魂法っていうのをやったんだって…他にも、長谷雄草紙って話にも出て来て、それは鬼が死人を蘇らせるとかさ。」
「どゆことやねんな?昔は死人を蘇らせんのがメジャーとか?」
「でも、小角さんのリアクション見る感じだと、やっぱりダメなことなんじゃね?」
「まぁでもネットやろ?その手のオカルトっぽい話って、なんぼでもあるやん。」せやけど、田島はうーんと言って思案する。
「真魚さんがさ、ダークウェブで見つけた、って言ってたじゃん?それって、あのファイルが本物か、ワンチャン本物って思っている悪いヤツがいるってことじゃない?」
「?どうゆうことな?」わたしは意味がわからなくて聞き返した。
「よく分かんないけどさ、ダークウェブって、本当は良くないことだけど、あるとお得な情報があるってことなんじゃないの?個人情報とかさ。でもそう言うとこって、へーきで人殺しちゃったりする極悪人がいるんだから、デタラメなこと言ったら逆に危なくない?ってことは、逆にホントのこと…みたいな。」
逆、逆ってなんやねん、と思ったけど、言われたらそうかもしれへん。とりあえず、あした洲本市役所に行ったらなんかわかるやろ、ということでわたしらは寝ることにした。
「ベッド一個しかないな。ウチはソファーで寝るわ。」というと、田島はぶんぶんと首を横に振る。
「なんや?アンタがソファーで寝るんか?ウチはどっちでもええけど、家主を差し置いてベッドで寝るんもどないやねん・・・っておい!」寝る用のタンクトップと短パンに着替えてソファーに寝っ転がろうとすると、田島が抱き着いてきた。
「なんでだよ!一緒に寝たらいいじゃん!ウチのベッドダブルだし!」
「ちょっと待ちいや。ダブルで二人寝るん狭いやろ。だいたい落ち着かへんし。」しかし、田島はそんなことないない、といってわたしをぐいぐい寝室に連れて行ってベッドに押し込むと自分も入って来てしがみついた。
「んふふ!いっしょに寝ようね!わっ!夏菜の肌すべすべ~柔らか~い。」
「おいちょっと、腹さわってくんなよ。あとちゃんとパジャマ着ぃや。ほぼマッパ(真っ裸)やん。」
「そんなことないよ、ちゃんとパンツもナイトブラも着てるし。」
「いやいや、ウチが言うてるんはそういうことやのうて・・・」と、ここでウチはあることに気が付いた。
「なんかアンタ、アマテラスさんに似てるな?」
「え?あーしが?そんなわけないじゃん。あんな美少女じゃねーし。それ、髪の色だけじゃね?」
「いやなんか・・・顔の感じとか、だいたいアンタ別嬪やし。」
「それいったら夏菜もなんじゃないの?」
「ウチが?それおかしいやろ。色黒いし、あんな細ないし。」
「うんまぁ、アマテラスさんは夏菜みたいに眼がクリクリで可愛い、っていうんじゃないけど・・・なんだろ?雰囲気?」
そんなわけないやろ、とかなんとか言ってるうちに、いつのまにかわたしらは眠っていた。
◆
「ねーねー、朝から料理とかしなくてよくね?っていうか、夏菜、朝起きるの早すぎ。」寝ぼけている田島を起こしてキッチンに連れて行くと、わたしは昨日買うてきた出汁パックを鍋に入れるように言う。
「水入れて火ぃ点けてな、沸騰したら弱火にして5分待つねん。その間にネギと豆腐用意してや。」
「え!?そんな色々できないよ!もっと簡単なことに・・・」
「なんでやねん・・・ほな飯炊いてんか。あ、早炊きモードでええで。米は2合な。おにぎり作るから。」
「え?え?ご飯炊くって・・・水を入れて・・・」そういうと、田島はお釜にコメを入れてそのまま炊飯器にセットしようとする。
「ちょっとちょっと!米研がんかいな!ええか、こうやって・・・」あかん、これ一人でやった方が早いヤツや。飯の炊き方知らんて・・・ホンマのお嬢やな。ウチなんか子供の頃は炊飯器ですらなかったし。おばあちゃんちカマドやったし。薪やし。
そんなことを言いながら、とりあえずネギ切るんと味噌を溶かすんだけさせる。おっ?この麦味噌うまいな、こんど買うてこ。
「ねー夏菜、きょう市役所のDX推進課に行くじゃん?でさ、いきなりダークウェブに呪詛のファイルあったんです、調べてください、ってヤバくね?アホだと思われるんじゃね?」
ご飯を食べながら、田島はもっともなことを聞いてきた。
「うーん・・・確かに。アポなしやから、挨拶ついでみたいな感じにしとかな・・・」
「アレじゃん?最近は淡路島の各市でもネット詐欺が頻発してまして・・・みたいな。いちおうホントの話じゃん?」
その手で行こうか、ってことになって、わたしらは局に登庁すると、そのまま洲本市役所に向かった。
◆
「えーと・・・DX推進課はどこやろ?あ、受付ある。聞いてみよ。」わたしらが受付に聞くと、受付の女性は眼を丸くして逆に聞いてきた。
「あら・・・県民局のアイドルコンビがウチにって・・・せやけど二人ともホンマに可愛いねぇ~。アンタらもアレ?アレ君目当て?」アイドルコンビって・・・田島は分かるけど、なんでウチがアイドルやねん。っていうかアレ君て誰?
「あの~、アレ君って?」
「あ、ごめんごめん。最近ウチの市役所に来た男の子やねんけど、なんちゅうの?ハーフ?あ、いまミックスて言わなアカンわ!めっちゃ男前やから!アンタらとようお似合いやわ~。」
受付の女性はたぶんわたしのお母ちゃんくらいの年代で、典型的な関西おばちゃんのリアクションで場所を教えてくれた。
「あ、DX推進課・・・ここやここや。すみません、淡路県民局 洲本健康福祉事務所から来ました。本日はご挨拶までに・・・」そういうと、作業の手を止めて一人の男の人がこっちに向かってきた。えっ!なに?めっちゃイケメンやん!
男の人はわたしらと同じくらいやろか?亜麻色の髪の毛、碧い目、色白の肌、男の人にしてはそんなに背は高くないけど少年っぽい顔立ちで、漫画の中にしか出てけぇへんような北欧系ハーフの美少年や。
「す、すご・・・超美形だよ・・・あーし緊張してきちゃった・・・言葉通じるのかな?」
「アホ、何言うんてんの、聞こえるで・・・ちょっと、落ち着き・・・」たぶんわたしらの顔は真っ赤になっていたと思うけど、その男の人は丁寧に頭を下げて名刺を出すと、少し高い透明感のある声で挨拶した。
「初めまして、DX推進課の高橋・アレクセイ・銀次郎です。よろしくお願い申し上げます。」
ご覧いただきありがとうございます。
第13話は、田島美紗の「意外な一面」てんこ盛り回でした。
見た目はギャル。
でも古典文学(西行法師の反魂など)に詳しい。
ダークウェブの心理を読み解く鋭さがある。
ただし、お米は研げない(笑)。
「天は二物を与えず」と言いますが、夏菜子とのデコボココンビ感を楽しんでいただければ幸いです。 (それにしても、ベッドでの「アマテラスに似てる」発言……気になりますね)
さて次回、二人は洲本市役所の「DX推進課」へと乗り込みます。 そこで待っていたのは、予想外の「方言美少年」!?
新キャラクターも登場してさらに賑やかになります。 続きが気になる!と思っていただけましたら、ブックマークや評価で応援していただけると嬉しいです。




