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第12話: 神様からのお使い。DX?何それ、美味しいの?

ちょっと重い空気になってしもうた・・・わたしが要らんこというたからかな?でも田島は首を横に振ってる。

「あの・・・誰が悪い奴か分かんない、っていうのはわかったけど、なんか解決策とか、考えないですか? アマテラスさん、すごく辛そう・・・」

それに気づいたように、膝を抱えて震えているアマテラスさんを八幡さんが抱きしめた。

「姫・・・ごめんやで・・・アンタが悪いんとちゃうからね・・・ウマちゃん、アンタもやで。アンタ、救世(ぐぜ)観音として種は十分撒いたやないの。小角はんや真魚くんが出てきたんもそれがあったからやんか。アンタはウチらみたいなただの神とは格がちゃうんやからしっかりせな」

そう言われて、太子のおっちゃんはうんうんと頷く。


「それもそうやな・・・すまん、みんな! 不細工なとこを見せてもうたな。さてさて、ともかく今はやることをやらんとな。夏菜子、美紗ちゃん、ありがとうな・・・」

おっちゃんは、そういうと、セカンドバッグから筆と墨壺(すみつぼ)、和紙を出してそれを広げた。

「ちょっと順番にやることを書いて行こか。先ずは~」

そういうと、おっちゃんは流石の達筆でつらつらと項目を書いていく。それはこんな感じやった。


1.アマテラスさんの安全確保: いつ敵が来るか分からへん。結界を張って、天津軍(あまついくさ)(神界の兵士のことらしい)を呼ぶんやって。

2.うちらの身辺警護: 見張られている可能性があるとかで、なんかすごそうなお守りを貰った。

3.周辺の警戒: この淡路島一帯に式神を送って怪しい人や妖魔、神霊がおらんか見張るんやて。

4.偵察: 伊勢の社に小角のおっちゃんの鬼神を送る。これはさっき決まった。鬼神ってめっちゃ強いらしい。

5.スサノオさん達への連絡: とりあえず那智山に使いを送る。でも補陀落(ふだらく)への扉は閉まっているとかで、すぐには連絡がつかへんらしい。


ここまで書いたところで、おっちゃんはわたしらの方を向いた。

「夏菜子、田島ちゃん、自分らの知り合いで、さっき真魚が見せたファイルの出どころとか、データを調べられる奴おらんか? 真魚よ、さっき言おうとしたんはそういうことやろ?」

真魚さんは頷いて、「そうや。コイツはいわゆるダークウェブにあった。何のためかは分からんけど、コイツを良からぬことに使おうと思てる奴がおることは確かやろう」と言った。

「それって、みんな神さんなんやから、ちゃちゃっと調べられへんの?」

わたしが聞くと、真魚さんは手を振って否定する。


「オレら神仏が読み解けるんは人の心に絡みついてる思念や。全く残ってないわけやないけど、データ化された時点で大半は消える。言うたら夏菜子ちゃんが楽しそうや、って言う字面しか残らん、ってことや」

何をしたらええんやろ? そう思ってたら田島がわたしの肘をつついた。

「なんかさ、洲本市役所に詳しい人いるみたいだよ? 明日行ってみようよ」



その日はもう遅いし、とりあえず家に帰ろう…っと思ったら、田島が一緒にいた方が良いって言う。

「ウチに来なよ。夏菜んちアパートだから、変なやつ入ってくるかもしれないし。ウチはオートロックだからちょっとはマシだし、小角さんにお札もらったじゃん? アレ貼っとけばオバケみたいなのも入ってこないんじゃね?」

それはそうやな。太子のおっちゃんからは身の廻りに気をつけろって言われとるし。

田島が妙に嬉しそうなんは気になるけど、わたしはアパートに寄って貴重品と着替えを持つと、田島の家に行くことにした。


「うわぁ…なんやコレ」 田島の家に行くのは初めてやったけど、わたしはちょっと絶句した。

「エラい、なんちゅうか…豪華やな…アンタ、これ家賃なんぼすんの?」

田島は部屋の鍵を開けながら、?と首を傾げる。「え? これ買ったんだよ? 東京と違って安いし」

「安いって…クルマとかやったらわかるけど…なんぼすんねんな?」


わたしが聞くと、田島はんー?と一瞬考えて、「たしか、1500万円くらい? だったと思うけど?」という。何をサラっと言うとんねん、ようそんな金持ってるな、というと、

「え? パパとママが買ってくれたんだよ。あーしが持ってるわけないじゃん」やって。

なんやこいつ・・・お嬢やったんかい!ウチがしがないブドウ農家の娘やっちゅうのに! 久しぶりに地団駄踏んでると、田島が手を引っ張る。


「何してんの、早く入りなよ。今日はおでんでお腹いっぱいだし、軽く飲んで寝よ?」

「えーと、確か玄関と部屋の四隅にこれを貼って・・・」

田島は小角のおっちゃんにもらったお札を部屋中にペタペタ貼っていった。



翌日。県民局に出勤して、わたしらは課長に相談してみた。

「あぁ、小路くん、田島くん。あのお年寄りは大丈夫かいな?」

「あ、はい…ちょっと娘さんの職場でいろいろあるみたいで。ところで、課長、洲本市にIT関連の部署なかったでしたっけ?」田島が聞くと、課長はあぁっと言ってチラシをくれた。

「DX推進課?」

「そうそう、最近そこに東京から来た民間登用のごっつ優秀な子が入ったみたいやで? 明日にでも会うて来たらええわ」


よし、手がかりゲットや。

仕事を終えたわたしらは、スーパーマルナカで買い出しをして、今日も田島のマンションへ向かった。

「ふぅ、…うわ、夏菜、めっちゃいい匂いする! 今日の晩ご飯なに?」

「何て…アンタ、さっき一緒に買うもん見とったやろ? イサキとタコが安かったからな。今日は簡単にアクアパッツァとタコのペペロンチーノや」

「え? なに? それってお店で食べるヤツでしょ? そんなの出来んの! 夏菜天才じゃん!」

「ちょ、アンタ何言うてんねん。あんなんフライパンで焼いて野菜入れて炊くだけやんか。っていうか、この家の調理器具全般に使われた形跡が無いことにウチはビビってる。アンタちゃんとメシ喰うてんのか?」

「な、なんだよ…ちゃんと食べてるよ。ご飯と味噌汁と…インスタントだけど。だいいちマルナカにお惣菜売ってんじゃん! 全然困らないし!」

「こりゃアカン…アンタ淡路島サイコー! とか言うてる割にあんまり…アレやな。ちょっと飯喰ったら明日の朝飯の用意しよ。特訓したる」

「えー!! 今日はもう良いじゃん! 美紗つかれた〜! ビール飲んで寝たいよ〜!」

ホンマに…コイツをアイドル視してる地元の男どもに聞かせてやりたい。


ご覧いただきありがとうございます。

さて、今回判明した田島ちゃんのお嬢様疑惑(1500万を即決…!)。 そして、夏菜子の意外な得意料理「アクアパッツァ」。


「なんで河内(大阪の田舎)出身の夏菜子が、そんなオシャレな料理を?」 と思われたかもしれませんが、実はこれには理由があります。


夏菜子の地元・太子町や藤井寺を含む南河内エリアは、古くからのブドウの産地であり、「河内ワイン」という地ワインの名所でもあるんです。


地元の野菜を使ったイタリアンや、ワインに合う家庭料理。 実家がブドウ農家である彼女にとって、それらは気取った料理ではなく、身近な「お袋の味」だったりします。


淡路島の新鮮な魚介と、河内の食文化。 この二つが融合した夏菜子の手料理、きっと絶品だと思います(笑)。


さて次回は、課長から得た「DX推進課」の情報をもとに、いよいよ市役所へ乗り込みます。 そこで待っていたのは、東京から来たという「ごっつ優秀な子」。


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