第3話:「猫、戦場に降り立つ」
「……なんで猫なのよ」
みちるは呆れ顔でつぶやいた。
その視線の先。自分の肩に、堂々と座っている黒猫――いや、猫型アンドロイドが一匹。
「猫ちゃう。KUROや。正式型番、KUR0-∑ prototype。君の戦闘支援ユニットやで」
「いや、どう見ても猫じゃん」
「にゃーん」
「それやるなや!!」
Dr.Hのせいで、また変な生き物(?)が仲間に加わってしまったらしい。
だが、KUROはただのマスコットではない。
---
KUROの支援能力、発動
その日、みちるは小規模な“事件”に駆り出された。
郊外の倉庫で、暴走した旧式ドローン兵器の群れが発見されたのだ。
軍事遺産回収班が対応していたが、どうやら1体、異常に強化された個体が混じっていた。
「いくで、みちる。敵数12、空中型8、地上型4……目標、Aタイプ異常個体は奥に潜伏や」
「ドローンなら動きも早いし……距離取りながら、一体ずつ落としていく!」
> 「変身っ!!(……もーう!スーツ、恥ずかしいんだから!)」
変身の光が走り、みちるの身体はいつもの競泳用水着ボディに包まれる。
背中に、月弓・零式が形成され、気持ちが戦闘モードへと切り替わる。
「KURO、空中敵は任せる!」
「言われんでも。レーザーで一網打尽や。いったれ、にゃー!!」
肩から離れたKUROの背中から、ビーム砲が展開され、空中のドローンを次々と落としていく。
命中率、驚異の97%。ちょっとムカつくほど優秀だ。
「みちる、右から2番目、地上型が回り込み狙ってきとる!」
「了解! 月影二射!!」
シュッ、シュッ――
二連の光矢が地を這い、見事に脚部を貫通。動きを止める。
「……ふっ、KUROがいると安心感が違うわね!」
「せやろ? やっぱ賢いアンドロイドは違うやろ? 天才の造ったボディやで?」
「それ自分で言う?」
---
敵異常個体、覚醒
だがその時だった。
倉庫の奥――鉄扉をぶち破って、ひときわ大きな影が現れた。
全身にドローン兵器のパーツを纏い、目は赤く光り、背中には回転する6枚の羽根。
「反応……ヤバいくらい高いで。これ、Aランクどころか――Sクラス相当や!」
「S!? Dr.H、聞いてないんだけどっ!!」
そして、その巨大な兵器が叫んだ。
> 「敵、認識……処理、開始スル」
ブォォォォン――
放たれたエネルギー砲がみちるを直撃――する、その寸前。
> 「しゃーない、オレの本気……見せたるわ!」
KUROがみちるに飛び込む。
光の粒子が走り、彼女の身体にまとわりつくように融合していく。
---
融合形態:《MICHIKURO》、起動
耳にフッと触れる重み。長く、しなやかな尾が腰から揺れる。
そしてスーツは、より引き締まった猫耳付きデザインに進化。
みちるの目に、KUROのクールな光が重なり、双声で響く。
> 「融合モード、MICHIKURO。起動完了」
「……って、猫耳!? なにこれ!? でも、めっちゃ動きやすい!!」
融合により、反応速度は200%増し。
矢の追尾機能が進化し、尻尾による近接斬撃も可能に。
「いくよKURO!!」
「任せとき、相棒!」
――次の瞬間、光矢が軌道を曲げ、敵のコアを正確に射抜いた。
爆音とともに、敵は崩れ落ち、静寂が訪れる。
---
戦闘後
「ふぅ……KURO、今の……すごかった」
「……まあな。でも、オレ基本サポートやで。今日は……特別や」
「ふふっ、ツンデレなのね」
「うっさいわ、照れるやろ」
---
(次回へつづく)