第2話:「初戦闘!その敵、規格外」
目の前の光景に、みちるは言葉を失った。
街角の交差点。ひときわ目立つ、大きな人影。
全身黒鉄のボディ、重厚な足音、鋭く光る目――それは人の姿を模した“何か”。
だが、明らかに人間ではない。
腕からは銃火器、背中からは鋸のような刃が伸び、まるで“兵器”そのものだった。
「Dr.H! なにあれ!」
「うむ、あれは《量産型ヒューマノイド兵・TYPE-Λ(ラムダ)》!
旧軍事研究所が廃棄したはずの個体だが……まさか、動いていたとはな!」
「って、それどころじゃないでしょ!? こっち見てるし!!」
咆哮とともに、ラムダ型が地面を抉りながら突進してくる。
速度と重量、どれをとっても素人が相手にできる相手じゃない。
「変身だ! みちるくん、やれるかね!?」
「もうっ、しょーがないなあっ!」
> 「変身っ!!(……もぉー!何で毎回競泳用水着なのよ〜!!)」
身体を覆う黒のスーツが光を放ち、スッと姿勢が整う。
背中のデバイスから展開される銀の弓――《月弓・零式》。
その手に握った瞬間、みちるの目つきが変わった。
「……静かに、深く吸って……放つ」
ビィィン――!
一条の光の矢が、空気を切り裂いてラムダの左腕を貫いた。
鋼鉄の装甲が砕け、油と火花が舞う。
「やるじゃないか! みちるくん! その調子だ!」
「次……いくよ……!」
彼女の背筋は、まさに弓道部仕込みの“凛”そのもの。
狙い、呼吸、放つ。
一切の無駄がなく、敵の動きさえ計算に入れている。
しかし、相手もただの機械ではなかった。
ラムダ型の胸部装甲が開き、光の粒子が渦を巻く。
「高熱レーザー!? まずい、避けろ!」
「避けなくていい……撃ち落とす!」
> 「必殺――月影一閃ッ!!」
空中に生まれた巨大な光の矢。
それはまるで満月のような美しさと破壊力を備え、
ラムダ型のレーザー砲口ごと、爆砕した。
ズドォォォォン!!
振動と熱が辺りを包み、風が吹き抜ける。
煙が晴れたその先に――まだ油煙を上げながらも、膝をつく機械の巨体と、
無傷で立つ、ひとりの少女の姿があった。
競泳用水着のようなスーツ姿で、銀の弓を構えるその姿は、
どう見ても……ヒーローだった。
「……やった、の?」
「うむ! 初戦にしては上出来すぎる! いやー素晴らしい! 変身美少女、バンザイ!」
「……うわ、テンションきもい」
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(次回へ続く)