第1話:「改造、美少女につき。」
第1話「改造、美少女につき。」
その日、月影みちるは、通り魔に刺されて死んだ。
人生、なにが起こるか分からない。
ほんの数分前まで、彼女は部活帰りにコンビニでプリンを買っていたのだ。
だが彼女の死は――ある男の心を異様に高鳴らせた。
「こっ、これは……! なんという……っ! 完璧な造形! この柔らかそうな頬、この絶妙なバランスの瞼と唇……そして、折れた眼鏡。尊いっ!!」
白衣をなびかせ、屍体の前に膝をつくひとりの男。
名を、**Dr.H**という。
世界的に知られる天才科学者。
その正体は――ただの、重度の美少女フェチ・変態博士であった。
「これはもう、運命だ。彼女を……私が救う。いや、再構築する。究極のボディで、永遠の命を与えようではないか……!」
目はギラつき、鼻息は荒く、指先は震えていた。
倫理観という名のリミッターはとうに外れている。
その夜から、Dr.Hの“初めての美少女改造プロジェクト”が始動した。
ただの変態の、ただの好奇心によって――。
* * *
「……う、あ……っ」
まぶたが開く。
世界はまぶしく、音は遠く、身体は……重いようで、軽い。
「よお、目覚めたかい? 月影みちるクン!」
目の前に、満面の笑みの白衣男がいた。
その手には、謎のスイッチとペンライト。そして、自作らしき変なぬいぐるみ。
「……だれ?」
「私はDr.H! 君の命の恩人であり、改造者であり、ファン第1号さ! さあ、起きてごらん? 君の身体はもう……人間じゃない!」
意味不明な言葉を浴びせられ、みちるは上半身を起こす。
鏡を見せられた。映っていたのは、確かに自分……だが、やたら肌の質感が良すぎる。
Dr.Hがスイッチを押す。
「変身、だ!」
みちるの身体に、黒い光が走った。
パシュウウウッッッ!!
その瞬間――
制服は分子レベルで消失し、代わりに光沢ある競泳用水着のようなメカスーツが形成されていく。
肩、脇腹、膝、背中。各所にインターフェースが浮かび、内部駆動音が響く。
「……なにこれ……!?」
「それが、君の戦闘形態だよ。戦闘用改造美少女《Project:MICHIRU》の誕生だァァァ!」
「待って! なんで戦うの!?」
「そりゃあ……美少女が戦う姿、最高じゃないか!」
やっぱりこいつ、ただの変態だった。