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悪役令嬢のモブな取り巻きは同調力で幸せを掴みます  作者: 虎依カケル


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第18話 おまじないと呪い

 リオノーラの問いに、デイミアンはクローディアを見た。クローディアは不思議そうに首をかしげる。

 デイミアンは小さく笑うと、こちらを見た。


「そうだ。僕が個人的に叶えたい願いがあって、調査していた。もちろん、王族として利用価値を見出したのも嘘じゃない。だけどそれは、僕の個人的な願いのおまけみたいなものだ」

「そうですの」


 ここでどんな願いを叶えたかったかは聞くべきではないだろう。そう思い、それ以上追及しなかった。


「どのような願いを持たれているかわかりません。……ですが、私の話を聞いていただけまして?」

「どんな話かな?」


 リオノーラはぎゅっと手を握りしめる。


「私は、おまじないは呪いと一緒だと思っています」


 その言葉にデイミアンは表情を引き締める。


「……どうしてそう思うのかな」

「クローディア様にも以前お話しましたけれど……妖精の使う魔法は奇跡みたいなもののように思われています。けれど、実態は強制力の高い術です。無理にあらゆるものを捻じ曲げます」


 たとえば、田畑が枯れて水が欲しい場合、雨が降れば恵みになるだろう。だが、水害に悩まされている地域に大雨を降らせれば、それは災害になる。


「おまじないは人によって良いものにもなり、悪いものにもなります。……妖精がただ願いを叶えるだけの存在であれば」

「それはどういうことだろうか」

「妖精は意志があります。そして気まぐれです。だから、願いが叶うかどうかわからないのです。……もし、妖精が気まぐれに願い事の逆の魔法をかけたり、願いを叶えるために無茶苦茶なこと……たとえば、願い事を叶えてもらいたい誰かの意志に沿わないような方法を使って願いを叶えたりすれば……それはもう友好的な存在ではなく、自分たちを害する存在となります」


 妖精は道具じゃない。生きている。自分で物事を判断する。そして、間違いもするのだ。

 デイミアンは腕を組んで考える。眉を寄せているが、不機嫌ではない。真剣に考えていた。


「……君の言うことは一理ある。たしかに、妖精はそう簡単には扱えない存在だ。慎重になる必要があるだろう。だけど、おまじないは誰でも使っている。そこまで警戒する必要はあるだろうか」

「私は、自らの願いを叶えるためにおまじないを使い……自分の意図とは反した結果を得た人を知っています。……その人はただ願い事を叶えてほしかっただけなのに、結果として他者を傷つけることになりました。妖精はそういったことを汲んでくれないのです」


 彼はそう言いながらこちらを見た。人を見定めるような目をしていた。


「人を救うために願い事を叶えてもらうはずだったのに、その人を傷つける可能性もあります。……きっと、殿下は自分のお力で解決することができる方です。どうか、おまじないに頼りすぎないようにしてくださいませ」


 リオノーラの言葉に、デイミアンは目を細める。


「……リオノーラは妖精に詳しいね。どうして?」

「私は子どものころ、おまじないが好きな少女でした。願いが叶わずとも、いろんなお願いをしていましたの。……だからです」


 彼が聞きたかったのは、こういうことではないだろう。だが、深く話さなかったリオノーラに対して彼はそれ以上何も聞いてこなかった。


「調べてくれてありがとう。もらった情報はいざというときのために取っておこう。王族としては利益にもなるが、対価となると不利益も被りそうだ」

「デイミアン殿下の願い事はどうされますか?」

「願いを叶えたいとは思っている。だが、対価によってはためらってしまう。一度考えてみるよ」


 そういうデイミアンにリオノーラは発言する。


「これはあくまで私の意見ですが……人々はみな、おまじないに頼りすぎていると思いますわ」


 心の弱さは誰にでもあるものだ。何かにすがりたくなるのも理解できる。だが、それは自分自身を信じていないのと同じだ。


「おまじないは確かに便利なものですわ。けれど、自分で成し遂げることを忘れさせてしまいます。……ほかに解決する方法もあるはずですのに」


 もちろん、自分の力では解決できないこともたくさんあるだろう。だが、人々は解決方法を考えず、すぐに妖精に頼る。


「今一度、その願いは自分で叶えられないか、考えてみてはいかがですか? もし、一人だけで解決できないのであれば……ここにはあなたを手助けしたいと考えている者はたくさんいます」

「…………」


 デイミアンは黙ったまま周りを見渡した。クローディアとエルウッドは力強くうなずいている。それを見て、彼は頬を緩めた。


「……君の言うとおりだね」


 デイミアンは目を細めて、優しいまなざしでリオノーラを見た。


「僕だけでは無理かもしれないと考えていた。だが、誰かに協力してもらえるなら、叶えられるかもしれない」


 それを聞いて、リオノーラは笑みを浮かべ、腰に手を当てて胸を張る。


「そーよ、そーよ! デイミアン様の周りには素敵な方々が集まっておりますわ! 私を含めて、頼ってくださいませ!」

「ありがとう。じゃあ……ここでみんなに聞いてほしいことがあるんだ」


 デイミアンがそう言うと、周りのみんなが姿勢を正す。彼は周りを見渡すと、クローディアの方に目を向けた。


「クローディア。君に隠してたことがある」


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