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悪役令嬢のモブな取り巻きは同調力で幸せを掴みます  作者: 虎依カケル


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第17話 大妖精のもとへ行く方法

 エルウッドが話を通してくれたため、放課後デイミアンのもとへ報告することになった。

 その間も情報を得ようと、お昼休みに図書館に向かう。

 図書館への道の途中、踊り場に姿見が置いてあるところにフェリーナが立っていた。一瞥して通り過ぎようとすると、フェリーナが「あの」と声を出した。


「……リオノーラさん」


 呼び止められ、リオノーラは足を止める。


「何ですの?」

「その……」


 フェリーナは何かを言いたそうにしながらも、ためらうように口を閉じた。


「忙しいですから、用事がないならもう行きますわよ」


 そう言って、歩き出そうとすると、フェリーナが口を開いた。


「図書館に向かう三階まで階段を昇って、二階まで降りる。職員室に向かう渡り廊下を渡って、また階段を昇る。一階まで階段を下りたら、裏庭を通り過ぎて大妖精の前へ。そこで『泉の大妖精のもとへ、我来たり』と呟く。そうすれば、道が開かれるって……言ってました」


 フェリーナはじっとこちらを見ている。その内容はまるで泉の大妖精のもとへ行く道筋を説明したもののように聞こえた。


「……どうして、あなたがそんなことを教えてくれるんですの? 誰から聞いたのですか?」


 フェリーナは自分の肩を見た。だが、すぐに目を外し、こちらを見る。


「……それだけですから」


 フェリーナはそれだけ言うと、頭を下げて、階段を駆け下りていった。


「待って!」


 呼び止めても、フェリーナは振り返らずに行ってしまった。

 彼女が何を考えているのかわからなかった。なぜか泉の大妖精へのもとに行く方法を知っていた。そして、なぜかそれを教えてくれた。


「……あの子、いったい何者ですの?」




 リオノーラは図書館に行くのをやめて、教室に戻った。だが、そこにはフェリーナの姿がない。

 教室で話していたクローディアとシャノンに声をかける。


「クローディア様、フェリーナの姿を見まして?」


 クローディアは首をかしげて教室内を見渡す。


「わからないです。見ていないと思うのだけれど……」

「フェリーナなら、カバンを持って教室を出て行ったよぉ。帰っちゃったんじゃないかな?」

「お昼からも授業がありますのに?」


 リオノーラに言いたいことだけ伝えて、帰ってしまった。これ以上、追及してほしくないということだろうか。


 フェリーナがよく座っている席を睨みつける。

 そういえば、前にもこんなことがあった。シャノンが呪いをかけられたとき、フェリーナが犯人を教えてくれたのだ。どうして知っていたのかわからない。そのときは犯人だったエイミーの友達だったから、知っていたのだろうと思っていた。


 だが、今回は違う。簡単に得られる情報ではない。


「……お二人はフェリーナがどんな子が知っていまして?」


 リオノーラは空いている席に座って、二人に問いかけた。


「フェリーナですか……? 男爵家の一人娘ということは知っているのだけれど……」

「たしか、結構田舎の領地の出身じゃなかった?」


 結構田舎の領地という言葉が胸に刺さる。リオノーラ自身、結構田舎の領地出身だからだ。


「……ほかには?」

「ほかには……ねぇ?」

「私たちもあまり知らないのです」


 フェリーナはよくエイミーと一緒に行動していた。最近は彼女と一緒に行動していないようで、一人でいるところをよく見た。今は誰とも深くかかわっていない。彼女のことをよく知る者は少ないだろう。


「フェリーナがどうしたのですか?」


 クローディアの問いかけに、リオノーラは小さく笑う。


「あとで話しますわ」




 デイミアンは学園の空き教室を借りていた。そこで話を聞いてくれるようだった。


「ご存じかもしれませんが、学園の生徒会長のアラーナさんが泉の大妖精と遭遇しています」


 本来、王子に対して報告するのは公爵家の令嬢であるクローディアが行うべきだ。だが、公式の場ではないこと、調べると言い出したのはリオノーラだったことから、自分で報告するように言われた。


「ああ、知っているよ。でも、彼女はあまりそのことを話したがらないと聞いた。だから、彼女から話を聞いたことはないよ」

「クローディア様が約束を取り付けてくださって、お話を聞くことができました」


 それを伝えると、デイミアンは嬉しそうに笑う。


「さすがクローディアだね」


 デイミアンに褒められて、クローディアは照れたように両頬に手を添えた。


「アラーナさんは泉の大妖精のもとへ至る道筋を教えてくれました。ただ、記憶が曖昧で正確な道筋がわかりませんでしたわ」

「そうか……」


 デイミアンは少し落胆した様子を見せた。その様子を見て、言葉を追加する。


「ですが、フェリーナから道筋に関する情報をもらいました」

「フェリーナから……?」

「はい。彼女が言うのは、図書館に向かう三階まで階段を昇って、二階まで降りる。職員室に向かう渡り廊下を渡って、また階段を昇る。一階まで階段を下りたら、裏庭を通り過ぎて大妖精の前へ。そこで『泉の大妖精のもとへ、我来たり』と呟く。すると、道が開かれると……」

「どうして彼女がそんなことを知っているんだ?」

「わかりません。彼女がどうして知っているのかも、この情報が正しいのかも……」


 デイミアンは難しそうな顔をした。そうなるのも当然だ。フェリーナはただの男爵家令嬢。泉の大妖精のもとに行ったという噂もない。入学してから半年も経っていないのに、どうして妖精局もつかんでいないようなことを知っているのか。


「フェリーナのことは置いておこう。彼女からもたらされた情報は生徒会長から得た情報と矛盾はあるのか?」

「何回か階段を昇って降りて、裏庭を歩いて、大妖精の像の前まで歩いてきたと言っていました。おそらく矛盾はないかと」

「そうか」

「それともう一つ大切なことが」

「なんだい?」


 アラーナを変えてしまったもの。彼女は重く取っていなかったが、きっと大切なことだった。


「泉の大妖精に願いを叶えてもらうと、対価を奪われるようですの」

「対価だって?」

「はい。アラーナさんは友達に対する思いを奪われていました。そして、友達すらも失っていましたわ」

「普通、妖精におまじないをする際には対価を奪われないはずだ。なぜ、大妖精は対価を奪う?」

「わかりません。……ここからは私の推測ですが、よろしいでしょうか?」

「かまわないよ。言ってみて」

「おそらく、普通の妖精に対してはシュガーがそれの代わりとなっているのだと思いますの。願い事が叶うと、持っていたシュガーがなくなるでしょう?」

「……なるほど。つまり、妖精に願い事をするときは必ず対価を求められるということか」


 デイミアンは少しがっかりしているように見えた。もし、大妖精に願い事を叶えてもらえるようになれば、国に対して強く貢献することができる。……だが、それだけじゃないような気がした。


「……デイミアン殿下。私の勘違いじゃなければ……大妖精に叶えてほしい願い事でもありましたか?」

 

 それを聞くと、デイミアンは大きく目を開き、自嘲気味に笑った。


「……君は鋭いんだね。かなわないよ」


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