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悪役令嬢のモブな取り巻きは同調力で幸せを掴みます  作者: 虎依カケル


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第10話 悪い感じ

 リオノーラは図書館にいた。改めておまじないについて調べるためだ。

 この学園は大妖精が設立に関わっているとされている。そのため、おまじないについての本がたくさんを置いてあった。


 本によれば、この学園はほかの場所とは違い、少し特殊だった。

 この学園には学園の創立にも関わった大妖精がいる。その大妖精は泉に住んでおり、その場所は学園のどこかに隠されている。


 その泉に辿り着いた者はどんな願いでも叶えてくれるという。

 よくいる妖精は小さな存在だ。シュガーで小さな願いを叶えてくれる。だが、その願いには際限があり、どんなものでもというわけではない。それに対して大妖精はどんな大きな願いでも叶えてくれるという。


 その泉の大妖精がいるせいか、この学園で行われるおまじないは普通よりも少し成功確率が高いようだ。

 本来のおまじないは二割程度の確率でしか叶わない。妖精は気まぐれだからだ。そのため、妖精局も人々がおまじないをするのも放任している。だが、この学園では妖精局の人が派遣されており、常に警戒しているようだった。


「警戒してるなら、シャノンのおまじないにも気づいてくれたらいいですのに」


 学園に通う生徒も少なくない。一人の担当者だけでは管理しきれていないのだろう。

 クローディアはシャノンの話をその担当者には話しているという。警戒してくれているだろうが、彼もほかの仕事があり、それだけにかまってはいられない。きっとすぐには解決に向かわないだろう。だから、できればシャノンのためになんとか解決してあげたかった。


(新しい情報はありませんわね)


 リオノーラは諦めて本を閉じ、教室に戻ろうと立ち上がる。


「あの」


 声をかけられ振り向くと、フェリーナが立っていた。そういえば、この前読んだ妖精の本の主人公はフェリーナだった。思わず警戒しながら返事をする。


「何ですの?」

「悪い感じがするんです」

「……はい?」


 言いたい意味がわからなくて眉を寄せる。だが、フェリーナは何かを必死に伝えようとしていた。


「エイミーから悪い感じがするんです。それをあなたに伝えたくて……」


 エイミーとはフェリーナとよく一緒にいる女子生徒だ。どうして彼女の話題が出るのだろうか。


「いったいどういう……」

「すみません、私はこれで」


 フェリーナはそれだけ言うと、頭を下げて図書館から出て行った。


「……悪い感じ」


 思い浮かんだのはシャノンがかけられそうになった悪いおまじないだ。フェリーナはエイミーが関わっていると伝えたかったのだろうか。

 だが、わざわざ友達を差し出すようなことをするだろうか。


(……あの方の考えていることはわかりませんわ)


 だが、真剣な瞳をしていた。彼女の言う通り、気にしてみるのもいいだろうと思った。





「あら、リオノーラ。まだ残っていたのですね」


 教室には生徒会を終えたクローディアがいた。その隣にはシャノンがいる。


「私たち、今から帰るところなのです。リオノーラも一緒に帰りませんか?」

「はい!」


 クローディアに誘われて、ルンルンで帰る準備をしていると、視界の端にエイミーが見えた。手を止め、彼女の方に視線を向ける。

 彼女は廊下からこちらを見ていた。その手には何かが握られており、両手を合わせて何かを呟いている。


「クローディア様! あの人……!」

「シャノン!」


 クローディアはリオノーラが指さした先を見ると、すぐさまシャノンに声をかけた。シャノンはエイミーを視界に捉える。気づけば、シャノンは彼女の元に駆けていった。彼女の手首をつかんで捻り上げて、手に握られているものを奪う。


「クローディア様、見つけましたよぉ」


 シャノンはにこりと笑うと、小瓶を掲げた。そこにはシュガーとあの禍々しい色をした石が入っていた。


「シャノン、その子をこちらに連れてきなさい」


 シャノンはエイミーの腕を捻りあげたまま、教室に入ってくる。


「痛い! 何よ、いきなり!」


 エイミーは状況を理解できていなかった。だが、クローディアが取り出したものを見て、顔色を変える。


「これがシャノンのカバンから出てきましたの。あなた、見覚えはないですか?」


 それはあの禍々しい色をした石だった。クローディアが保管していたらしい。

 エイミーは言い訳をしようと口を開いた。だが、同じ石を持っていたため、何も言葉が出てこない。

 クローディアは息を吐くと、教室の中にいた生徒に声をかけた。


「申し訳ないのですが、妖精局の方を呼んでくださいますか?」

「は、はい!」


 声をかけられた生徒は急いで教室を出ていった。妖精局に連れていかれるとわかったエイミーは顔を赤くした。


「シャノンが悪いのよ! 私の婚約者をたぶらかすから!」

「シャノンはそんなことしないよ?」


 エイミーを取り押させたまま、シャノンはきゅるんとした表情をする。


「嘘言わないで! あなたが彼を特別扱いしたから、彼は……!」


 どうやら、エイミーは自分の婚約者とシャノンが親しくしていたことが気に入らなかったらしい。彼女は鋭い目でシャノンを睨んでいる。だが、シャノンは怯えた表情を見せず、にっこりと微笑んだ。


「何言ってるのか、わかんないんだけどぉ……シャノンが特別扱いするのはクローディア様だけだよ。その男が勝手に勘違いしたんだよ」

「何ですってぇ!」


 二人の諍いを見て、クローディア様がパンパンと手を鳴らす。


「そこまでですよ。シャノン、もう彼女を離していいわ。こうやって自白したんですもの。逃げられるわけがありませんから」


 それを聞いて、エイミーは顔を真っ青にする。シャノンが手を離すと、彼女はうなだれるようにその場に座り込んだ。妖精局の担当者が現れ、騒ぎを聞きつけた生徒たちが教室の外にあふれかえる。その様子を見て、リオノーラは考え事をしていた。


(フェリーナはエイミーと仲が良かったはずですわ。それなのに、どうして彼女を売るような真似なんてしたのかしら?)


 教室の外に視線を向ける。そこにはフェリーナがいた。彼女はこちらが見ていることに気づくと、目を伏せてその場から立ち去った。


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