第3話 課金
悟りを開き完全に死を受け入れていた所だったがスマホのバイブレーションに驚き、思わず尻餅をついてしまう。
幸運なことに、俺めがけて体当たりをしてきたキングなスライムは、俺が尻餅をついたことにより狙いを外し川へと突っ込んでいった。
バシャンッと水飛沫が上がり冷たい川の水を全身に浴びたことで悟りが解けて我へとかえる。
慌てて振り返り、距離を取る。そして奴が体制を整える前にスマホに目をやり、アプリの通知を見る。
【10ゴールドを手に入れた!!】
どうやらRPGでよくみる敵モンスターを倒したときに手に入るゲーム内通貨を獲得したらしい。
恐らく最初のスライムを倒した時のものだろう。
すると目の前にいるキングなスライム達はあのスライムの敵討といったところか?モンスターの癖に殊勝な心がけだな。
しかし、ゴールドを獲得したところで殆ど今際の際。宝の持ち腐れである。
せめて装備などが手に入っていたらなと思った所に、アプリから更なる通知が届いた。
【課金に関するお知らせ】
課金?というかこのゲーム課金要素なんてあったのか。確かに、基本無料だが一部有料のサービスがあるという形が最近のアプリでは主流である。
マッチングアプリも例に漏れず、課金するとマッチする確率が高まったりマッチ範囲が広くなるという特典があったりなかったり。
だが、異世界に来てから人など見ておらず見るのはモンスターばかり。それもスライムオンリー。
課金したところで誰ともマッチせずご臨終がオチだとは思ったが、背に腹は変えられん。
とりあえず有料サービス一覧を開く。
すると、様々な特典があったがその中でも特に目を引いたものがあった。
【初心者様限定!!10ゴールドで取り合えずマッチング!!】
⚠️注意⚠️
完全ランダムマッチになっており、必ずしも貴方様の好みの女の子とマッチングを保証する物ではありません。
あくまでもお試しで、異世界にはどの様な女の子がいるのかを知っていただくためのものです。
ご了承下さい。
今の手持ちの10ゴールドで丁度足りる額だ。
ランダムマッチと書いてあるが、今の状況ではランダムマッチでもたいして変わりはない。
早速、購入ボタンを押して特典を購入した。
藁にもすがる思いだったが、このランダムマッチが運命的な出会いをを産むことになった。
キングなスライムが川の中から這い出て、体制を立て直し、もう一度ぶちかましをかまそうと体を揺らし、俺目掛けて飛びかかって来た。
流石にこの数秒でマッチが成立するわけもない。本日、2度目の死を覚悟した瞬間、
「はあっ!」
鋭い、だけどどこか優しさを含む可憐な声が響いたかと思うと、その声の主は瞬く間に敵に対して無数の攻撃を浴びせた。
攻撃を受けた敵は一秒ごとに数が増えていき、十秒たつ頃には細切れになり、その後すぐに消滅した。
「だいじょうぶ?」
俺が呆気にに取られているとその人は手を差し伸べ、にっこりと笑って見せる。
黒い髪をたなびかせ切れ長な目で笑う少女。背丈は160程か。
声は少し高め。
まさしく、俺が異世界マッチングのプロフィール欄で好きな女のタイプで記述した特徴を全て持っていた。
「結婚してください」
思わず口に出してしまった。
それに対する返事は
「え?」