第一章 【初めてのお出かけ】アキラside
(アキラside)
それから何度か、お店に足を運ぶようにした。
あの日から、何故かヒナのことを時々思い出して、心が震えるから。
少しでも繋がりを持っていたくて。
数度目に思い切って「次の休みはいつか」と聞いてみた。
「一応、5日後の予定」
最近ヒナも笑いかけてくれるようになり、笑顔で答えてくれた。
「その日、俺も休みだし、いつも古い服着てるから、買い物でも連れて行ってやる」
今までしたことのない、【デートのお誘い】というものをしてみた。
ヒナは一瞬困惑したあと、「よろしくお願いします」と笑顔のまま答えてくれた。
5日後
ヒナの家に向かっていると
「アキラさん、本来仕事なのに、勝手に約束して遊びに行くのはどうかと思いますよ」
秘書兼悪友のヒカルが、笑顔で話しかけてきた。目の奥は勿論笑っていない。
「明日明後日その分仕事するから今日くらい、いいだろ」
横を歩くヒカルに文句を言う。
俺は今日という日をどれだけ楽しみにしていたか。
もう自覚していた。俺はヒナにすごく興味がある。
見た目は性的興味はないし、何なら女にすら見えない。
しかし、あの日見た、男を躊躇いなく切った顔を思い出すとゾクゾクしてどうしようもなくなる。
「はいはい、二人を邪魔するのもなんですし、今日はあなたの代わりに仕事しますから、明日以降は3倍は働いてくださいね」
あと少しでヒナの家、というところでヒカルと別れた。
ヒナのアパートに着いた。
2階から怒鳴り声が聞こえる。
嫌な予感がして、階段を登った。
鉄製のドアが凹み、開けられているのが見える。
「お前を連れて行かないとカズヤ様に殺されんだよ」
「いやだ、触るな」
数人の怒鳴り声とヒナの声が聞こえた。
俺は急いでヒナの部屋に入った。
そこには、ヒナを押さえつけて馬乗りになっている男と、頭から流血してピクリとも動かない男、両足を押さえつけている男がいた。
瞬時に足を抑えている男を蹴り飛ばして、馬乗りになっている男の脊髄を殴り、気絶させる。
喉を絞められていたのだろう。
苦しそうに肩で息をしているヒナを連れて家から出て行った。
ちょっと展開していきます。