第一章 【日常】ヒナside
少しずつ進みます。
(ヒナside)
家に呼んで、二人で食事をすると、少し心が解れた。
少し話をしていると、遠慮しながらアキラが聞いてきた。
「普段何して生活しているんだ?」
私は普段、この街へ連れてきてくれた叔父のお店、銃の修理工房で手伝いをしている。
本来ならば、叔父にこれ以上迷惑を掛けたくないので、違う場所で働きたいが、戸籍もなく、未成年ではどこも雇ってもらえない。
取り合えず、そのようなことを伝えた。
一拍考えたあと、アキラが
「この拳銃を見たが、かなりの手入れと整備がされていた。さぞかし、立派な職人なんだろう。店名を教えてくれないか」
と言われ、一瞬躊躇ったが、この数時間、この人と過ごしていて、なぜか安心感があったから大丈夫だろうと、店名を教えた。
その後、十数分話したあと、彼は、帰って行った。
(なんか、色々あったな)
今は、どうでも良くて絶望していた朝のような感情はなく、逆に少し高揚している。
(まぁ、もう会うことはないだろうな。違う世界の人っぽいし)
そう思いながら、返し忘れたTシャツを着たまま、就寝した。
数日後。
叔父の工房の裏でいつも通り仕事をしていると、表で接客していた叔父に呼ばれた。
あまり人前に出たくない。
それを知っている叔父が呼ぶとは、珍しい。
仕方なく、表に出て行った。
そこには、数日前に出会った、彼がいた。
確か、アキラって言ってたっけ??
違う世界の人間だから、忘れかけてた。
「アキラさんは、この街を仕切っているお方だ。ご指名だ。挨拶しろ」
叔父に促されて、会釈をする。
お店の名前は教えたが、なぜ来たのか。
不思議に思って、顔を見つめた。
「この店の素晴らしい整備のされた単発式拳銃を見た。これの整備をお願いしたい」
そういうと、一丁の少し円筒の長い銃がカウンターに置かれた。
遠目に見てもわかる、かなり良いものだ。
しかし、整備が甘く、銃の性能を生かし切れていないのがわかった。
叔父は、じっくりと拳銃を確認しながら、
「三日、いただいても?」
「あぁ、かまわない」
そういうと彼は立ち去って行った。
(私の家でみた拳銃の整備が気に入ってお店に来たのか)
それなら納得出来る。
(会いに来てくれたのかと思った)
自然とそんな言葉が脳裏に浮かんで、驚いた。
訳がわからない。忘れかけていた人だし。
取り合えず、叔父に渡されたので拳銃の整備を始めることにした。