第一章 【誰?】ヒナside
相手の少女のヒナちゃんです!
(ヒナside)
どうでも良かった。
もう、本当にどうでも良かった。
兄から逃げてこの街に来て。
この街に来ても、兄に怯える日々。
そんな中で、食料を調達するために街を歩いていると、道の端の方で男三人に絡まれている女性が見えた。
その中の一人に左手を握られ、路地裏に連れ込まれそうになっている、この街に似つかわしくない、キレイな女性。
普段は気にも止めないけど、何となく、もうどうでも良くて、気付いたら男達に声をかけていた。
すると女性の手を放して、キャンキャン喚きながら私を路地裏に投げ入れてきた。
乱暴に襟をつかまれ、無理矢理立たされてお腹を殴られた。その衝撃で、擦り切れて薄い布になっていた服が破れる。
(どうでもいいか)
そのまま、私を殴って蹴ってしている男達を受け入れていた。
痛いことは痛い。でも、心が壊れている私には、どうでも良かった。
反応がない私に満足できないのか、男の一人が私の首筋にナイフを当てた。
(あー、この人、切ったら死ぬのにな)
そう思いながら、抵抗せずにいた。
その時、一人の男性が、路地裏に入ってきた姿が見えた。
赤い鋭い目、茶色の短髪、ぶかぶかなTシャツにぶかぶかなズボン。ジャラジャラつけたアクセサリー。
首や腕に、入れ墨も見える。そして何よりも、威圧感がすごかった。
一目で、この街の中でもヤバい奴とわかる。
彼を見た瞬間、私の中で何かが起こり、脈がドクンと打った。
私を襲っていた男達は、彼を見て、私から離れて彼に何か言いに離れていった。
気付いたら、男の落としていったナイフを持って、私は男にとびかかり、両腱を切っていた。
慣れている。人間の急所に、自然と体が動く。
目の前の男が血を吹き出しながら倒れこみ、残りの二人が逃げていった。
この場には、彼と男と私。
正確にいうと、その裏に一人男がいるが。
「……ありがとう」
気付いたら声が出ていた。
人に礼を言うのは、何年ぶりだろうか。
何故か言葉が出てしまったことに、内心動揺する。
表情に出さないように必死に無表情を貫いた。
「そんな服で出歩くことなんか出来ないだろ。俺の家がこの裏路地からすぐいけるから、これ着てついてこい」
確かに、こんな状態で帰ることなどできない。
大人しく彼の後ろを付いていくことにした。
そんなこんなで、シャワーを借りて。
(さて、今からどうするか)
ここを出たら、何をされるのだろうか。させられるのだろうか。
単純に人助け?
そんな人には、到底見えない。
心の中の何かに惹きつけれれ、家についてきたのはいいが、何も思いつかない。
(このまま無事に返してくれるのだろうか……)
まぁ、もうどうでもいいや。
そう思いながら、私はシャワーを終えて、用意してくれていた服に袖を通した。