第三章 【最期まで】
ヒナが一通り泣いて、声も出なくなった頃に、アキラが話し出した。
「俺のエゴだ」
目の前でヒナが肉体的にも精神的にも苦しんでいる姿を見続けるのは。
「勝手にしてごめん」
「うぅん、ありがとう」
ヒナは、身体を起こし、アキラに向ける。
「あのね、私、多分無理だ。こんなに出血していたら助からない」
ヒナの周りにどんどん血だまりが出来ていく。
「お兄ちゃんと私の血、毒だから、数日後、気を付けて回収して欲しいな。だから、大丈夫だから。」
アキラには、見られたくない。死にゆく様を見せて、背負わせたくなかった。
そんなヒナを無視して、アキラは近くの壁にどさっと座り込む。
「わかった。最期まで俺はここにいる」
「えっと…ここは感動的に別れるシーンでは……?」
ヒナがクスリと笑った。
「本当はね、お兄ちゃんと仲直りしたら、二人で高校受験して、一緒に高校生になりたかったんだ」
「ヒナは、結局いくつなんだ?」
「今更ー。16歳だよ。13歳から3年間家から出てないけどねー」
自虐的ではない。特に普通な感じで話している。どちらかというと、まったりしている。
「じゃぁ、ヒナが元気になったら、俺が学費出すから、勉強して学校いけよ」
「はーぁい。頭悪いけど大丈夫かなぁー」
ヒナの意識が少しずつ遠のいていく。
頭を撫でたり、手を握って安心させてやりたいが、触れない。
でも、最期まで一人にさせたくなかった。
アキラは、ヒナの意識がなくなるまで話しかけ続けた。




