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エリク神が去った後、ジャスミンの隣でヴィクトルの体が突然揺らぐ。ジャスミンは慌ててヴィクトルの体を受け止めるものの、耐えきれないままに床に倒れこんでしまった。今は眠るように目を閉じているヴィクトル。しかし、次に目を覚ました時、ジャスミンに向ける瞳は今までとは変わっているはずだ。
そう考えたジャスミンは、ヴィクトルを周囲の兵士たちに任せてゆっくりと神殿から出ていく。ジャスミンの心は決まっていた。ヴィクトルに忘れ去られたことに傷つきながらこの王城で暮らすくらいなら、全ては夢だったのだと森の中でまた1人で暮らした方が良い。
王城へと元々持ち込んでいたジャスミンの荷物は少ない。薬草の管理を今から人に引き継いで、明日の朝に薬草の様子を見て王城を後にしよう。後は、エリク神に助けてもらったリーリエの顔も見たい。きっと長い間寝たきりだったから、滋養を付けるような薬や食事が必要だろう。そうして…考えれば考えるほど、ジャスミンはこの王城でやり残したことが残っていた。
それでも時間はもうない。
ヴィクトルに出会ってしまう前に、王宮を去る準備をしなくては。