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「陛下、こちらは大切にお持ちください」


アレクセイはなにか思うところがある様子で、サファイアの宝石が光るネックレスをヴィクトルに押し付ける。


「陛下、余計なお世話かもしれませんが、ジャスミンと素直な気持ちで話をしませんか?陛下の気持ちも良くわかりますが、ピアスを捨てていたこと、ジャスミンも誤解しているかもしれません」

「…いや、誤解などしていない。こんなもの、渡すべきじゃない」


ヴィクトルはそうして、アレクセイから渡されたピアスをまた池の中に沈めてしまう。


「ジャスミンには、隣国で幸せにしてくれる男がいるようなのだ。だったら、こんな重たいもの渡さずに、素直に背中を押してやりたい」


そう告げるヴィクトルだったが、傍にいたティモンは怒ったように声を荒げる。


「それがジャスミンの幸せだって言うんですか?」


ティモンはそう叫んだあとに池の中に入っていき、ゆっくりと沈んでいたアクセサリーケースを手に取る。


「私は絶対無理です。もし、アレクセイが他の女に目を向けたって、絶対に自分から諦めたりなんかしません。立場も身分も捨てて、絶対に自分のものにするんです!自分が一番愛している人が、他の奴と幸せになるところなんか絶対に我慢できない!」


そうヴィクトルに言い捨てたあと、ティモンはアクセサリーケースを持ったまま去っていく。一方で、残されたアレクセイはそんな様子を少し苦笑して見つめた後、近くに置かれていた小さな箱の方を手に取った。


「陛下がたまに執務室の机から鍵を取り出して、じっと見つめていたのを知っています。ずっとどこの鍵かわからずにいましたが。この小箱と装飾が同じなのに気づいて納得しました。ここに入っているのはきっと大切なものですよね。捨てたはずのものがこうして見つかったってことは、きっと…そういう運命なんですよ」


アレクセイは手にした小箱をヴィクトルに押し付ける。


「これからティモンの機嫌を取りにいかなきゃならないので、今日は戻りません。溜まった仕事は明日一緒に片づけることとしましょう。だから陛下も、今日はゆっくり休んでください」


そういってアレクセイも去っていき、その場に残ったのはヴィクトルと…そんな様子を遠くから眺めているエリクだけだった。


ヴィクトルはじっと、手にした小箱を眺めている。


エリクはそれ以上は見ていられなくて、今日は家へと戻ることとした。彼らのやり取りは、自分の心にぐさぐさと刺さるものも多かった。何よりティモンの「自分が一番愛している人が、他の奴と幸せになるところなんか絶対に我慢できない!」なんて台詞が、何度もぐるぐるとエリクの頭の中を巡っている。


「…はは、同じ気持ちだよ。ティモン」


エリクはそう考えて、今のリーリエと向き合うことに決めたのだった。


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