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「あぁ、彼女が手に負えないのならここに置いとけ。俺が嫁にもらってやる」
「…へ?」
イヴァンに話しかけられると思わなかったのか、こちらを向いて驚いたような顔を見せるルスラン侯爵。
「彼女ほどそそられる女は他にはいないんだ。お前じゃ手に余る存在だろう?いつ酒瓶で頭を勝ち割られるか、怯える日を過ごすだろうなぁ」
「…ふふ。確かにそうね」
イヴァンの言葉を聞いて、どこか楽しそうに笑うリーリエ。一方のルスランの顔は少し強張っていた。
「いえ、それは出来ません。私には彼女が必要です」
「そうか?今後苦労するのは目に見えているがな。それでも彼女がいい理由はなんだ?」
先ほどまで怒っていたリーリエも、今は機嫌が良さそうに酒を片手にしながらルスラン侯爵の返答を待っていた。イヴァンも傷に染みこむ酒のせいか思考が鈍くなっているものの、気にせず目の前の者たちとの会話を楽しむ。
「それは…ここでは言えません」
「どうしてよ!?お兄様が倒れた今、私たちが国を支えていかなきゃならないの!ここでプロポーズくらいできるでしょ!」
「リーリエ、君は一体誰の味方なんだい!」
「くっ…はははははは」
2人のやりとりを見て、つい声を出して笑ってしまうイヴァン。あんなにも退屈だった日常が、彼女と過ごしている時間はやっぱり刺激的で楽しくなるのだ。
「なぁ、俺の物になるつもりはないのか?」
イヴァンがリーリエに対してそう告げると、リーリエは少し考えた素振りをした後、隣にいるルスランの腕に抱きついた。
「残念。あなたよりも先に侯爵様に出会ってしまったの。もし順番が違ったら、私はあなたに惹かれていたかもしれないわね」
「へ!?リーリエ…なんてことを」
「だって本当のことよ!私と同じだけのお酒が飲めて、どれだけ飲んでも酔わずに会話を楽しんでくれるなんてイヴァン様しかいないんだもの」
そんな言葉に、イヴァンは口端を上げながら目の前の酒を一気に飲み干した。
リーリエのことは寝台につれこむよりも、こうして、一緒に酒を飲んでいる時間の方が心地よく感じる。そんな平和ボケした考えになるのは、この部屋に香る蜂蜜の甘い香りのせいなのだろうか?
イヴァンはそんなことを考えながら機嫌よくワインをグラスに注ぎ、目の前で空になったリーリエのグラスにも同じだけ注ぐ。
「おい、今度からうまい酒は飲むために持ってこい」
「そうね…正直もったいなかったわ」
その後なぜか、両国間の緊張状態は解かれ、リーリエはイヴァン相手に和平交渉まで結んで帰国してきた。そんな様子を、ずっと後ろに控えて見ていたアレクセイ。
途中からルスラン侯爵が不憫すぎて、アレクセイが笑いを堪えていたのはここだけのお話。
書きたかったリーリエの大暴れシーンです。
本編で書けなかった分を書けて大満足!




