【 番外編1 甘い酒の香りに包まれて 】
書きたかった番外編 その1です
時系列は最終章より少し前のお話。
エリク神によってイヴァンが倒され、ヴィクトルも覚ましていない頃。
「え!!ちょ、困ります!誰か…!!誰か!!!」
廊下からそんな騒がしい声が聞こえ、イヴァンは騒ぎの方向に目を向ける。手にしていたワインの入ったグラスを近くのテーブルに置き、突然の来訪者を迎えるためにベッドの側に置いている銃の安全装置を外したイヴァン。
つい先日、エリク神によって酷く傷つけられたイヴァンは、傷ついた体を完治させるためにもほとんどの時間をベッドの上で安静にするように医者から命じられていた。そのため、イヴァンの体は動く度に鈍い痛みをもたらし、閉じかかっていた傷も開いて包帯には血が滲む。…そんなタイミングを見計らって、イヴァンの座を狙おうとしているものも多いだろう。
イヴァンに敵は多いのだ。多くの部下に恨まれ、信用できる部下も少ないイヴァンはいつだって気が抜けない日を過ごしていた。だからこそたまには、酒を飲んで全てを忘れたくなるのだが…今日もゆっくりと酒に酔うことはできなかった。
一気に現実に引き戻されたイヴァンは、拳銃を構え、自室の扉が開く瞬間を待った。侵入者がやってきたら、その頭を打ち抜いてやる。
「お、おい。リーリエ、これじゃぁ大きな騒ぎになる」
「どうだっていいわ、私は今、最高に苛立っているの!!!」
扉の奥からはそんな会話が聞こえて、イヴァンは持っていた拳銃を下ろす。
まさか彼女が…直接ここに来るなんて。
「あの男はここにいるんでしょ!入るわよ!」
その後、彼女の不機嫌そうな声のあと、ガンッと大きな音を立てて扉が開く。彼女は一国の姫らしく豪華なドレスに身を包み、高いヒールを履いているものの…そんなことを気にしない様子で、扉を大胆に蹴って開けたようだった。長く美しい銀の髪と、零れるばかりに大きく揺れるサファイアの瞳。そんな瞳に見つめられた途端、イヴァンの胸は一気に高鳴った。
あぁ、彼女がようやくここまでやってきたのだ。




