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エリク神が人々の前に現れた日。その日のことをそれぞれが思い出して静かになる中、口を開いたのはティモンだった。
「エリク神様にとっては気まぐれでしょうが、あの日をきっかけに人々のエリク神さまへの認識は変わりました。空想上の存在ではなく、確かにこの国を見守っている存在なんだと多くの人が理解したはずです」
「まぁ、だが…本当に恐ろしい存在だった」
ティモンの会話にそう答えたのはアレクセイだった。
あの日、突然嵐が訪れ、一気に運命が変わった。特にティモンはあの日、ジャスミンの処刑を見ていられないと神職者としての仕事を投げ出し、部屋に閉じこもってしまった。アレクセイもそんなティモンの傍にいたため、2人はあの日突然の雷鳴と共に人々が炎に包まれたり、突然やってきた地割れによってのみ込まれていく様子を部屋の窓から見ることとなった。
後に、それはエリク神が引き起こしたことであり、暇を持て余したエリク神に”ヴィクトルの元から最愛のジャスミンの記憶を消す”だなんて面白いことを提供したことで、全ては何事もなかったかのように元に戻ったが…本当に神という人は恐ろしく、そして絶対に叶わない存在なんだと思わされる。
アレクセイも一度、エリク神の機嫌を損ねたことでティモンに危害を加えられそうになったことがあった。最愛のティモンを失ってしまったら、アレクセイはこの先、生きていけるだろうか?
そう考えてまた、それぞれが無言になる中、ルスラン侯爵がなにかに気づいたようだった。
「ん?あれは?」
ルスラン侯爵が示した方を見れば、執務室の窓の傍に立つヴィクトルの姿が見える。その手には何か小さなものを持っているように思えるが…。




