50/69
-5
ふと、思い出したヴィクトルは執務室のデスクを開け、そこにある小さな小箱に手を伸ばした。中に入っているのはヴィクトルの瞳の色と同じサファイアの宝石がついたピアスであり、ピアスには小さくジャスミンの名前も刻印してしまっている。
だが、こんなピアスを渡せるはずもない。ジャスミンは一度この国を去った後、隣国で仲良くした男がいたはずだ。それとなくリーリエに話を聞かせたところ、ジャスミンと共に住んでいたというユーリと言う医者はジャスミンにとって恩人なのだという。
イヴァンの一件で酷く怪我をしたというユーリだったが、今は命の別状もなく、変わらずラヴィル国で医者をやっているのだと聞いた。しかし、ユーリとジャスミンは少しの間でも2人で暮らしていたといい、ヴィクトルは余計にそんな部分が引っかかっていた。
きっとジャスミンにとって自分はもう過去の男になったはずだ。そんな男からこんなにも重たいピアスを贈られ、求婚されたところで困るだけだろう。そう考えたヴィクトルは、椅子から立ち上がり窓へと向かった。
こんなもの…またどこかへと捨ててしまおう。もう最近は何度も何度も、このピアスを見つめてしまっているのだった。
そう考えたヴィクトルは、そうして窓を開けて______




