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それから数日が経った。
隣国ラヴィル国にただ1人交渉に向かったヴィクトルは既に心を決めていた。少し苛立ったような様子で応接間で待っていた隣国の皇帝のイヴァンに対して、「交換条件を飲むことはできない」とはっきりと告げるヴィクトル。その瞬間、イヴァンの眉間の皺はより深くなるのだった。
「…あぁ、そうか。それは残念だな」
イヴァンはそう告げると、部下たちに命じて先に捕らえていたジャスミンをこの場に連れてきた。ヴィクトルがあの夜にエリク神と見た映像と同じ、黄色のドレスを着ているジャスミン。しかし、あの時と違うのは彼女の体中に様々な痣や傷跡があるほか、ドレスも酷く乱れている点だった。そうして彼女は目隠しをされ、言葉も話せないようにきつく布が口に巻いてある。
「言っておくが、交換条件のために俺たちは彼女に一切手出しをしていない。しかし、この女は厄介でなぁ。牢で様々に暴れ回るんだ。そのために少し痛めつけたこともあったが、まぁ、交渉が決裂したんじゃ、そんなことも関係ないだろう」
イヴァンは手にしていた銃の安全装置をかちりと外すと、ヴィクトルを真っすぐに睨め付けてきた。
「交渉は決裂。そして、俺はこの女を殺した後、全兵力をお前の国に向けることを宣言する。お前はがリーリエを差し出さなかったということは、それでいいんだな?」
イヴァンのその言葉に、ジャスミンの方はピクリと動く。彼女はきっと、この交渉条件を初めて聞いたことだろう。しかし、自分の運命を受け入れているのか、そのまま抵抗することはなく静かにしていた。
「…そうだ。俺の大切な妹のリーリエを、お前のような凶暴な男に渡すことはできない」
「ははははは。お前はその言葉、一生後悔することになるだろうなぁ!!」
そう言ってイヴァンが銃に手を掛け、銃声が部屋に響き渡った。目の前で倒れていくジャスミン。ヴィクトルは、そんな姿に手を伸ばしたくなったものの必死に堪えた。ここでこの男に弱みを見せるわけにはいかない。
…そう、考えていたはずなのに。




