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「…アレクセイ、今日のところは一度帰りましょう。ジャスミンも1人でじっくり考えるべきですし、森も夜遅くなる前に抜け出す必要がありますからね」
そう告げたティモンは、顔を真っ青にするアレクセイを支えながら立ち上がった。
「待ってください、ティモン様。良かったら獣よけの香水を使ってください。…それと、色々と巻き込んでしまい、申し訳ありません」
「いいえ、謝ることはないですよ。ジャスミンのおかげで、私は自分の信仰を正しいと実感できています。むしろ私の方が、あなたの力になれなくて心苦しくなるほどです」
そう言ったティモンは、胸元につけていたロザリオをジャスミンに渡してくる。
「すみません、今手持ちがこれしかなく…ですが、ジャスミンに受け取って欲しいんです。エリク様は必ず信じている者を救ってくれます。必ずです。そのことを覚えておいてください」
その言葉はジャスミンが王宮で何度も、ティモンに聞かせられていた言葉だった。王宮に入ったばかりで何も分からなかった頃、ずっと味方になってくれ守ってくれたのはティモンだった。
「はい、ありがとうございます。大切にします。アレクセイ様も、あんなふうに怒ってくださって私は嬉しかったです。本当に…こんな日々は幸せです」
ヴィクトルに誘われるがままに王宮について行って、周囲に訝しめられる日々を過ごしていた間も、ジャスミンが怪しいものではないと誤解を解いて、周囲との距離を縮めてくれたのはアレクセイだった。
2人はジャスミンにとって本当に、大切な恩人のような人たちであり、いつだって何気ない話をしながらお茶を飲みたい相手でもあった。
「また、一緒にミントティー飲みましょうね」
そんな言葉にティモンは微笑み、アレクセイも静かに頷いてくれるのだった。




