③
「いきなり“後釜”を押し付けられても困るぜ!」
資料室で二人きりになると“ナポリ”は“チノパン”にぶーたれる。
『それはオレのセリフだ!』と心の中で愚痴り、その意趣返しの様にチノパンは“ナポリ”の目の前に顔写真のファイルをどっさり置く。
「拳銃密売事件の容疑者の顔写真です」
「こんなにあるのかよぉ~」
「センパイの記憶にある顔もケッコウあるんじゃないすか?」
「なんだ!脅かすなよ! だったらよ! こんな作業の前に見せてくれよ!」
「何をですか?」
「腕前をだよ」
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射撃場には他に人は無くチノパンとナポリだけ
向うに見える標的の中央が綺麗に撃ち抜かれている。
「次は9、8,7……と数字を撃ち抜いていきますよ」
チノパンが銃を構え連射すると、言葉通りに数字が撃ち抜かれて行く。
「上手いじゃねえか!」
「オレは相棒としては役不足ですか?」
「そうじゃねえが、ちょっと違うな」
「何が違うんですか?!」
「いいか!拳銃はライフルじゃねえんだ!その名の通り拳だ!」
「どういう事です?!」
「こう言う事だ!」
ナポリのコルト・パイソンから発射されたマグナム弾はチノパンが開けた穴の複数を巻き込んで標的をグシャグシャにした。
「いいか!拳銃は拳だ! 殴る様に撃つんだよ!犯人を1発でノックアウトさせるためにな!」
「それがセンパイの矜持ですか?」
ナポリはそれには答えずチノパンにパイソンのグリップを向ける。
「撃ってみるか?」
「ハイ!」
新しい標的に交換したチノパンはパイソンを両手でホールドして狙いを付ける。
「弾ねえんだからな!1発だけだぞ!」
轟音と共に発射された弾は中心を逸れ7から上をグシャグシャにした。
「やはり反動が違いますね! これは練習が必要だ」
「そいつは残念だな、あいにく銃も弾もスペアはねえよ!」との言葉に苦笑いしてチノパンはナポリにパイソンを返した。