第七話(R15)
今朝、麗子に言われた事もあり、仕事を切り上げると真直ぐ自分の家に帰宅して、ソファーに体を沈める様に座り、早馬はテレビを見ていた。そんな彼の隣にさり気無く腰を下ろし、乃利子もテレビを見る。室内には、テレビの音だけが響いた。二人の間に、会話の一つも無い。
何だ、此れ? 此処、俺ん家だよな? なのに何で、こんなに息苦しいの? 家って、自分を癒す為の場所だよな? と、早馬は此の何とも言えない気まずい空気に耐えていた。
チラッと、隣でテレビを見詰める乃利子を盗み見る。乃利子も自分と同じで、此の空気に耐えている様だった。
(朝の事もあるし、俺の方から話掛けるなんてぇのも癪だが……しかし…、此の状況は耐えられない…)
だがなぁ…、と一人、此の雰囲気を打破する為に自分のプライドを捨てるか、其の儘にしとくかと好い年齢した大人が情けなく葛藤してると、ソファーに置いていた手に、自分のものではない手が添えられた。誰のものかなんて、此の室内には二人だけしかいないので、隣に座る女のものであるのは間違いない。
添えてきた手の下から自分の手を引き抜くと、何食わぬ顔で立上り、台所へと向った。背中には、今朝と同じ視線が突き刺さってきた。
「……止めてくんね…」
「…え…? 」
「そのさ、悲劇のヒロインぶんの。…ってかさ、俺、アンタに何したわけ? 嫌がらせにも、限度ってもんがあるでしょ? 」
冷蔵庫から冷えた缶ビールを取出すと、其れのプルトップを指で抓み開け、足で乱暴に冷蔵庫のドアを閉め、リビングに戻るとソファーの向いに腰を下ろした。乃利子とは、対面になる。
「……なぁ…、俺、アンタに何したんだ? 」
間を置いて、同じ事をもう一度訊いてみる。今度は、少しどすを利かせながら。
再びの沈黙。テレビの音は何故か耳に入らず、聞えてくる音は自分の鼓動と、目前の女の息を呑む声だけ。乃利子に射るような視線を向けるが、目を逸らされる。答える気はなさそうだ。
仕方ない…。此の手だけは使いたくなかったが…とブツブツと呟きながら腰を上げ、テーブルの上に片膝を乗せると、身を乗り出し、乃利子の肩を掴むとソファーの背凭れに彼女の体を押え付けた。
早馬の瞳に、驚きと今にも泣出しそうな表情を浮べた乃利子が映る。桜色の唇を噛締め、目を伏せ耐える姿に、自分の中の本能が疼いた。喉を鳴らす。
「……夫婦…なんだもん、な…」
「……」
「…だったら……好いよな? 」
「…!? …え、ちょっ!! 」
何かを言おうとしてる小さな唇に自分のソレを重ねる。酸素を求め、薄く口を開いた乃利子の口内に舌を滑り込ませる。そして深く口付けた。角度を変えて、何度も。
そして、其の晩…
(俺は、無理矢理彼女を犯した)
初出【2012年5月27日】
再掲載するにあたって読み直して……うん。
読んでて、結構照れるね、これ!書いてる時や、あげた当時はなんとも思わなかったけど、結構あれだわ……恥ずかしい:;(∩´﹏`∩);:!!!(←⁉️)
なんか、若さを武器にした内容というか……すっっっごい、痛くて、恥ずかし過ぎる…泣く。。(←………。)
多分、これ…私にとって、結構な黒歴史だと思った
忘れてたかった…(泣)(←ま…まあ、、どんまい?)