第六話(早馬side)
朝のコンビニというのは、OLやらサラリーマンやらで大変混雑してる。俺も其の中の例外では無く、朝食用に買おうと思っていた焼きそばパンは既に完売していて、仕方なく、隣に置いてあるサンドウィッチに手を伸ばすと、もう一つの手が伸びていて、誰だ? と思いながら隣に目を向ける。
「…あ…、上原部長…」
「あら、明智君。…何、貴方。甘いもの好きなの? 」
え? と思い、再びサンドウィッチに視線を戻す。サンドウィッチに挟まれているのは苺やら何やらで…、部長の言ってた意味を理解する。
「あー…まぁ…部長は? 」
「私は好きよ。だって、女の子だもの」
「女の子ぉ? 誰が? ってか、どちらかっていうと、オバサンの間違いじゃ……イテッ! 」
「明智君。女性に対して、禁句の言葉を言うんじゃないの」
流石、女性社員にモテるワケだ。だって男っぽいんだもんな。まぁ、そーゆう処に惚れたわけなんですがね、俺は。
部長は、結婚したら専業主婦になるのかなぁ? あー…其れ、ありかも。何時も仕事人間というイメージの人物が、実は家庭的とかって、結構萌えるよな、うん。…あ、そういや俺、結婚してたんだった。形だけだけど…。
「しっかし貴方、仕事出来るくせに、時間にはルーズよね」
「へへっ…いやぁ、元々、手先が器用なもんでして。昨日は缶コーヒー、御馳走様でしたぁ」
「……ハァ…夜遊びも程々にね。会社では一応、貴方の事一目置いてるみたいなんだから、其の期待、裏切っちゃ駄目よ? 」
そう言うと部長は、俺の手元にあったサンドウィッチを掻っ攫い、レジの方へと行ってしまった。彼女の耳の裏は、此れでもかって位、真っ赤に染まっていた。
多分、自分で言った言葉に照れたものなんだろうけど、俺からすると――
期待しちゃいますよ?
(其の反応は、反則です)
初出【2012年5月26日】