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第五話(早馬side)

「うえぇ…気持ち悪ぅ」



 昨日は飲み過ぎたなぁと思いながら、俺はトイレで吐いていた。といっても、余り食べてなかった事もあり、胃酸しか出てきてなかったけど…。

 途中から、背中をさすられてる事に気付いた。誰かなんてぇのは分ってる。昨日から同居、あー…同棲って言った方が合ってるかもしれないけど、兎に角、勝手に俺の縄張りに入ってきた小娘(俺からすればだけど)だ。名前は確か、乃利子…とかいった気がするが、覚える気が無いので、如何でも好い。


 ある程度楽になると、俺は顔を上げ、後ろへと振返る。乃利子がぱあぁといった効果音でも合いそうな感じで嬉しそうな顔をするが、俺は何も言わずに其の儘彼女の横を素通りする。

 背中に哀愁をただよわせた視線を痛い程感じたが、俺は、一切振返ろうという気はなかったので、其の儘無視してリビングへと向った。


 だってそうだろ?

 勝手に上り込んできた挙句、しかも知らないうちに夫婦になってるんだぞ。自己中も好い処だ。…まぁ…、愛されてるんだろうなという点では、満更でも無く嬉しいわけで、あー…でも、やっぱ好きでも無い奴に愛されるのはキツイ、かな…。



「…あ、あのね…朝御飯……」


「コンビニで済ませるんで、気ぃ利かせてくれなくて好いですよ」


「……あ…で、でも…っ」


「昨日も言いましたが、俺は、独身だった頃と変らない生活を送る予定なんですよ。だから貴女も、俺と夫婦という肩書の、前の生活をしててくだされば其れで好い」


「……っ」



 我ながら、きつい言い方だったと思う。でも、此れは俺の本心で、勿論否定する気はないわけで。其れで別れたい、離婚しましょうというならば別に其れでも好いわけで。だってそうだろ? アンタが先に持ち出した話だぜ。俺の悪い処なんて、あるわけないよな?


 目前でたたずむ小娘の顔は、今にも泣出しそうな顔だった。其れを必死にこらえる様に、貼り付けた笑みを浮べ、小娘はコクッと小さく頷いた。其の時、ほんの一瞬だけ胸がチクッと痛んだ気がするが、多分気のせいだろう。






 良心なんて、捨てちまえ

(冷たくあしらう事に、抵抗なんて持ってはならない)

初出【2012年5月25日】

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