第二話(早馬side)
酒の勢いとは、恐いものだ。
「好きでも無い女と戸籍上では夫婦になりました」なんて言ったら、何人位の奴が此の事実を信じるだろう…。
三十云年生きてきたが、こんな話は聞いた事が無い。ってか、もしかしたらあるのかも知れないが、自分の身近ではそんな話は聞いた事が無かった。
チラッと乃利子を盗み見る。透ける様な白い肌に、茶を少し含んだ日本人特有の黒髪が肩まで垂れていて、十人中十人が振返る程の美人。しかも、今年二十代になったばかりらしい。
如何する、俺? 戸籍上夫婦になった以上、別れたくても別れられないわけで、何より別れるとなると自分にしても彼女にしても傷がつくのは確かで、其れだけは阻止したい。
「……あのさ…言っとくけど、俺、独身だった頃と変らない生活をするつもりだから。…其れでも、好い? 」
我ながら、最低な質問だったと、聞いた後に思った。でも、一度発した言葉を撤回する気も無く、彼女の答えを待つ。乃利子は考える素振を見せると、答えが決ったのか早馬の方に視線を戻し、年相応…というには幼い表情で微笑み、言った。
「別に構いません。…だって、貴方の奥さんに慣れただけで、私、幸せですから」
そんな、無邪気に笑わないで
(純粋な君が、酷く、哀れに思えた)
後書き
此の作品のテーマは、「大人の恋愛」です((ガキが何ぬかしとんじゃあ!!
結婚って、別に式を挙げなくても籍を入れとけば結婚したと宣言出来ましたよね?
うーん…結婚記念日って、式を挙げた日なのかなぁ?其れとも、戸籍上で夫婦になった日?皆さんは、どっちを結婚記念日として祝ってるんでしょうか?
初出【2012年5月22日】