【番外編】据え膳食わぬはなんとやら(R12)
日が出ようとする時間帯。静寂した部屋に、男の溜息が酷く響いた。
「……ったく。飲めないなら、最初っから飲むなっつーの」
早馬はそう言うと、寝室から持ってきたタオルケットを寝ている乃利子に優しく掛け、彼女が横になっているソファーとは向い側の座布団の上へと腰を下ろした。
数十分前の彼女とは打って変って寝顔の彼女は天使だと早馬は思った。大袈裟等では無く。
「あー…、俺は此れからどうすっかなぁ…。奥さん居んのに○○すんのもなぁ」
自己主張してる分身を何とか宥めながら、早馬は数十分前の事を思い出す。
◇◆◇
そう。其れは、何時も通りの日常でしか無かった。彼女が、何を思ったのか分らないが、アレを飲んでみたいと言わなければ、今の様に自分は寝不足になる事は無かっただろう。
そして、自分の発言。アレを飲みたいという乃利子に対し、御前には無理だと言ってしまったのがいけなかった。火に油を注いでしまったのだ。
「何よ早ちゃんのバカ!! 私だって飲めるんだから! 」
そう吐き捨てると、テーブルに置かれたアレ――焼酎の瓶を片手に持ち、空いてるもう片方の手は腰に当て、瓶に唇が触れたかと思ったら其の中身をゆっくり、ゴックゴックと良い音を立てながら乃利子は飲んでいく。
そんな彼女に見惚れながらもハッと我に返った早馬は乃利子の手から焼酎を取上げるが、――遅かった。
顔は酷く真っ赤で、目は潤んでいた。まるでアレの後に彼女が見せる特別な表情が連想され、思わず生唾を飲む。
(何考えてんだ俺! 確かにいっつもヤッてるけどさぁ、駄目だって! 酔ってる相手を襲うのは!! )
「れぇ? そーりゃん」
「……何、乃利子さん」
「あらひらっれ、りゃんろサエ、飲められしょ? 」
「……あぁ、はい。飲めましたねぇ」
「えへへ……うえひ? 」
「………あー…、嬉しいですよ、はい」
乃利子の表情が曇った。如何したんだ? と、早馬が彼女の顔を覗き込もうとした其の時、突然視界が反転し、背中に衝撃を受ける。ソファーに押倒されたのだと理解した時には、上に乃利子が跨っていて、早馬はギョッとした。
「乃利子ちゃん、乃利子ちゃん…、退いてくれる? 」
「嫌! 」
「いや、『嫌! 』…じゃなくてさぁ、ホント、まじで、退いてください。……泣きをみたくないなら」
「らによそーりゃん! ヤリたくないのぉ?! 」
「何でソコだけ滑舌なんだよ!! ……って、そうじゃなくて、ホント退いて! マジでヤバいんだけど」
息が荒くなり、もう限界だと感じた早馬は、渾身の力を出し、逆に乃利子を押倒した。
「よーし分った! 御前の御望み通り、○○してや――」
「Zzz…」
「……え…? 嘘? ねぇ? 乃利子チャン? 嘘でしょ…、ねぇ? 」
幾ら体を揺すっても起きない彼女に、早馬はガックリと肩を落とし、そして冒頭に到るというわけである。
「据え膳食わぬはなんとやら…ってか? ……ハァ…マジかよ…」
流石に、寝ている相手に手を出すほど邪道では無く、仕方ないと諦めた早馬は、乃利子に見付らない場所に隠していた秘宝を何本か取出すと、テレビにヘッドホンを付け、DVDプレーヤにその秘宝を入れ、再生した。
男の性なのだから、しょうがない。
(しっかし乃利子の奴、酒飲んだら大胆になんのな。今度酔っ払ったそん時は、唯じゃおかねぇ)
終
後書き
久々に、早馬と乃利子を登場させました!
【一方通行】後の話です。二人とも、滅茶苦茶イチャイチャしてます((イチャイチャしてんのか?
エロ路線入るギリギリって処を目指して書いたのですが、アウトかなぁコレ?((うーん(-_-;)
初出【2012年8月26日】
改めて読んで思ったけどさ、、
まじで、私なんなの⁉️若さって、こんなぶっ飛んだ内容書くの!?ってツッコミしかありませんでした(←……えっ…)




