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悪魔の弱点

 

 初めて入る学長室はシックな調度品が特徴的な暗い部屋だった


「それで、あなたの悪魔について色々聞きたいことがありますが、アレク君自身は遊戯の悪魔についての知識は?」

「あ、はい、9人しかいない中の1人で自由奔放だとしか」


「大体合ってますね。彼は興味があるかないかで物事を判断する良く言えばマイペース、悪く言えばとても気分屋な悪魔です。」

 まるで子供だ

 ちらりとダンドリスを見ると、ソファにどっかりと座り用意されたお菓子をバクバク食べている

 が、途中で飽きたのか食べかけのお菓子を投げ捨て、一切見向きしなくなった

 ……子供じゃん


「ですからあなたと契約を交わしたのも彼が何かしら興味を抱いたからだと思いますが、心当たりは?」

「いえ…」

 どちらかと言うと同情されたような気がします「よく俺を呼んだな」って



「そうですか、しかし心当たりもないとするといつ彼があなたに飽きて契約を終了させてもおかしくない状態ですね…」


「え?契約終了って、真名も知っていますし…」

「はい?待ってください、真名を知っている?それは本当ですか」

「は、はい」

 少し食い気味に聴いてくる美形は迫力がすごい


「信じられない…偽名の可能性とかは」

「そんな面倒なことやらん。正真正銘俺の真名だ」



 話に参加してきたダンドリス。シャラリと足の枷に付いている鎖を引きずって学園長の元まで移動する

「それよりお前についている魔力が不快だ。何とかしろ」

「おいっ」

「大丈夫ですアレク君、それより本当に【遊戯の悪魔】はこれが嫌いだったんですね」


「あの、すみません学園長、さっきから気になっていたんですけれど、そのコイツが不快になる魔力って」

「あぁ、私も1人『王』と知り合いでして、その人の魔力を少々拝借しているんです」

「それが不快の原因ですか?」

「そうですね。万が一に備えて牽制用に魔力を拝借しておいて良かったです。()()曰く、彼にとても嫌われていると」


 彼女?


「知り合いというのは『王』の1人、【博愛の悪魔】です。契約していないので真名は知りませんが、非常に友好的で人間に混ざって生活しているそうです。ある日は少女だったり、巨大な男だったりするので探すのは難しいですが」


 へー、そうなんだ、案外『王』って軽いな。皆もっと厳格な性格だと思ってた

「で、なんで【博愛の悪魔】が嫌いなの」


 本人に直接聞くと途端に苦虫を噛み潰したような顔をするのでこれ以上詮索しないことにした

「ともかく、アレク君は今とても大きな力を手に入れています。今後君を害そうとしたり、利用しようとする者が出てくるでしょう。我々もできる限りサポートはしますが限界があります、その時のために【遊戯の悪魔】の手綱を握らなくてはなりません。出来ますか?」

「……頑張ります」

「よろしい。教員達にはサポートの旨を伝えておきます、もう下がって大丈夫ですよ。何か困ったことがあったらいつでも相談してください」


 ありがとうございます、と一言、これからどうしようと思いながら出ていこうとした時



「あぁ、あと近いうち王宮から呼び出しがあるかもしれません。作法など勉強しておいて下さいね」



 ……………はい???




 ─────学長に爆弾発言投下されて僕の頭の中は『王室呼び出し』で頭がいっぱいになった

 王室ってあの王室でしょ?国で一番偉い…偉い

 もし作法とか失敗したりダンドリスが変なことをして怒らせたりなんてしたら……

「不敬罪でさらし首………」

 ざぁっと血の気が引く。



「私も何度か王室へ行ったことがあるので教えることは出来ますが、仕事柄時間を作ることが難しいです。貴族の同級生から教えてもらうのが1番手っ取り早いですが」

 そう言われて一番に頭に浮かんだのは僕を「落ちこぼれ」と言ってたあのリーダー格

 頼みづらいというか、頼んでも相手してくれない気がする




「断る」



 だと思いましたよ

 授業が終わった後、話があるって言ったら周りの生徒達を教室に置いて1人で廊下に来てくれたことは意外だったけどやっぱりダメだった

「落ちこぼれが王室に呼ばれるなんて生意気だ」とか言って罵ってくるだろうななんて思っていたけど、リーダー格はジッと真っ直ぐ僕を見ているだけで何も喋らない

「あの、?」

「……俺は応用しか教えない。基礎が出来てから出直してこい落ちこぼれ」


 言うだけ言って踵を返して離れていくリーダー格に僕は固まって見てるしか出来なかった



 突然にゅっと横から美形が姿を現して僕を見て首を傾げる

「なんだ、作法が知りたいのか」

「聞いてたろ?王室に呼び出されるかもしれないからそれまでに出来るようになりたいんだ」

 頼みの綱だったリーダー格には断られたし、他に知ってる人なんて…

「俺の知り合いにそういう堅苦しいことに煩い奴がいる」

「本当!?待って、その人悪魔?」

 悪魔だったら困る。悪魔を呼び出したら契約するか対価を払って願いを叶えてもらうしかない

 その対価は大抵召喚者の寿命、そして契約は基本的に1人につき一体。それ以上になると真名を知っていてもヒートを起こすと教科書に書いてあった。どっちにしろ命が危ないのでいやだ


「嫌なら別に俺が呼び出せばいいだろう?」

 何躊躇ってんだこいつ、と言いたげなダンドリスに開いた口が塞がらなかった

「そんなことできるの?」

「やったことは無いが出来る。面白そうだ」

「どこからそんな自信が湧いてくるのか知りたいよ僕は」

 やったことあるならまだしも、やったこと無いならそれ以前の問題だ

 というか面白そうでやるもんじゃない。何が起こるのか分からないんだぞ



「とりあえず今日の授業は終わったから一旦寮に戻って、着替えたら図書館へ───ってなにやってんの!?ここ廊下だから落書きやめてよ!」

 ダンドリスに視線を向けると廊下にどこから拾ってきたのか白いチョークで怪しい魔法陣を描き始めていた

「ん?ここのマークってどう意味を持って…じゃなくて、呼び出そうとしてるの!?やめてよー!」

「ごちゃごちゃうるさい」

 誰のせいだと思ってるんだ!!


 僕が騒ぎ始めたから周りが何事だと様子を伺っている。ダンドリスのことはまだ知れ渡っていないから『落ちこぼれの悪魔が何かやっている』と言ったような問題児を見るような、避難するような目で見てていたたまれない



 何とかして阻止せねばと足で線を消そうとしたら結界のようなものが張られていて数cm前で足が止まってしまう

「そら出来た。あとは呪文を言うだけだ」

 わー!わー!嫌だー!!

「『開門(ゲート)』」


 カッと眩い光が辺りを包む。眩しすぎて目も開けていられない。周りからもきゃーとかワーとか騒いでる

 急に全身に寒気が襲った。悪寒とかゾクッとかそういう一時的なものじゃなくて、もっと極寒の中に長時間いる時のような骨まで凍ったような───

「この私を呼び出すとは大したものですね。えぇ、望むのでしたら契約程度ならなって差しあげて、も……………」


 寒気が無くなった後に聞こえた澄んだ声に自然と背筋が伸びる。なぜだかちゃんとしないといけない気がしたがその声は途中で途切れた

 恐る恐る目を開けると魔法陣の上にまるで御屋敷の執事のような服装で黒髪、サファイアを思わせる青い目のスラリとした男性が立っていた。その目線の先にはダンドリス


 ダンドリスは「お、成功した」と呑気なこと言ってるけどその人(?)めっちゃ怒ってる雰囲気出してるよ

「……さ…か」

「なんて?」

 つい聞いてしまった


「まさか、まさか私を呼んだのは貴方ですか!?【遊戯の】!!」

「あぁ、久しぶりだなァ【礼儀の】」

 ………ん?【礼儀の】???

「この大馬鹿者!!!二度とその顔を見せるな恥さらしめ!!」

「相変わらずうるせぇな」


「悪魔が悪魔を呼ぶのは禁忌も禁忌!!分かっているでしょう!」

 そうなの!?

「だってなぁ俺の契約者が助けて欲しいって言うからよ」

 え

「なんですって?」

 待って下さい、ダンドリスさん僕の腕を掴まないで下さい、そもそも頼んだ覚えないし僕はあの悪魔の視線の前に立ちたくないです

 絶対零度の青い目が僕を見る。見るというかギロリと睨んでくる



 というかダンドリスさっき【礼儀の】って言ったよね?

もしかして『王』だったりするんですかこの人────!!!






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