同級生
「おいおい落ちこぼれが居るぜ。最下級悪魔をそんなに見せつけなくてもお前の力は分かっているぞ」
昼食を取るために食堂の端っこで食べていると、同級生の生徒数人がくすくす嗤いながら近寄ってきた
先頭にいるのはその中のリーダー格で僕に何かと突っかかってくる。彼は貴族なので下手なことをするとこちらの命が危ない
さてどうしたものか…この前は笑っていたら怒られたし、かと言って無反応だったらそれも怒られる
「おい、これはなんだ」
「これ?チーズオムレツだけど…」
そんなことはお構い無しのダンドリスが隣で僕の皿の中にある切り分けられているチーズオムレツに興味を示し、指で一切れつまんで自分の口の中へ入れた
…ん!?食べた!?
「わぁぁ!ぺっして!腹壊すよ!」
「何馬鹿なこと言ってる。人間の食い物なんて悪魔にも食える。そこらの犬猫と一緒にするな」
あ、そうなの?
「おい!俺の事無視してんじゃねぇよ!!」
すみません忘れてました
「喧しいぞ小僧。食事中は静かにしろと言われなかったのか」
ダンドリスにド正論かまされてぐぅのねも出ないリーダー格にちょっとスカッとした
「俺は貴族だぞ?そんな態度取って後々後悔するのはお前たちだからな」
「ほう?それはどういうことだ?」
建て直してニヤニヤしているリーダー格は胸をはらんばかりの態度で声高々に喋り始めた
「俺が契約した悪魔は中級の悪魔だ!お前のような最下級が適うものでは無い。ズタボロにされて屈辱を味わうがいい!」
ふわりとリーダー格の後ろに一体の悪魔が現れた……が
「え!?お、おい、どうしたっ」
その悪魔はダンドリスを見るなりガタガタ震え上がりすぐさまリーダー格の影に逃げていった
「どうやら『中級サマ』は最下級の俺にビビる臆病者のようだな」
ハンッとバカにしたような笑いにリーダー格は顔を真っ赤にしながらどこかへ走り去っていった
それについて行くように他の生徒たちも慌ててそこから居なくなった
「ねぇ、あれ絶対報復来るよね…」
「来るだろうな」
「来るだろうなじゃないじゃん、相手貴族だよ?孤児の僕じゃ赤子の手をひねるより簡単に殺されちゃうよ」
僕は孤児。当時赤子の僕は協会の前に置いていた籠の中で泣いていたらしい
籠の中には小さな羊皮紙があり、そこには『アレク』と書いてあっただけ
そして独り立ちする予定だった14歳の時に国から来た職員の魔力検知に引っかかり魔力のある人間は身分関係なく入学させられる学園に強制的に入れられた
「それよりそっちはなんだ」
「それよりって…これはカレーライス」
「1口よこせ」
どこまでも自由人な悪魔だ。自分だって被害に遭うのにそんなことで済ませてカレーに興味を持つなんて
「ねぇダンドリス、もし僕に何かありそうだったらなんとかしてよ」
「何かとはなんだ。なんとかとは何だ。具体的に言え」
め、めんどくさ…
「さもないとお前が勝手に石につまづいて転んだ時でさえこの世の石という石を消滅させなければならん。それこそ故意か事故かなんて関係なくな」
「あの貴族の生徒関連で僕に身体的、精神的被害が出そうだったら、周りに被害が出ない程度に阻止して欲しい」
僕の言葉の足りなさで世界から石が消えるなんてそんなことあってたまるか
「あまちゃんな考えの奴め、まぁいいだろう」
あまちゃんで結構
「このカレーライスとやらは見た目に反してピリピリして美味いな」
持ってきた新しいスプーンでカレーを1口食べたダンドリスが感想を言った後そのまま食べ進めている
「食べたことないの?」
「ないな。俺が人間界に来たのはこれで3度目だ」
「へぇ、それまでどこに居たの?」
「悪魔なのだから魔界に決まっているだろう」
人間界でフラフラしていると思ってた。魔界だと絶対偉そうな態度して周りに被害が出てるだろうな…
ふと、急にダンドリスは手に持っていたスプーンを置き、カレーに興味を示さなくなった
「あれ、もういいの?カレー」
「飽きた」
飽きたって…本当に気分屋だな
「でも初めて知った。悪魔って人間の食べ物を食べれるんだ」
「俺たちの『食事』は基本人間の魂やら魔力やらだが、嗜好として人間の食い物を食う奴もいる」
「へぇ」
サラッと前半怖いことを言われたがここは流しておく。変につっかかって実践されても困る
「あ!それ最後に食べようと残しておいたイチゴ!」
「ハンッちまちま食ってるからだ」
おのれいつか仕返ししてやる…食べ物の恨みは強いぞ…
そして昼休みの時間が終わった鐘が鳴った