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あ、初めまして

よろしくお願いします


 皆さんは悪魔というものをご存知だろうか

 この世の欲という欲を詰め込んだ暴君の権化。悪を象徴するものであり、悪そのものでもある悪魔

「あいつにピッタリな最下級の悪魔が召喚されたぞ」

 突き刺すような視線と、くすくす笑う中で誰かが放った言葉



 魔術士学校の中で落ちこぼれの僕は、背中を丸めて顔は下を向いたまま目線だけは目の前に召喚したこれ以上にない美しい悪魔の顔を見ていた




 Ⅰ.



「今日は皆さんに悪魔召喚と契約をしてもらいます。教科書は56ページを開いてください」


 鈍器に使えそうなくらい分厚い教科書を持ち、指定されたページを開く。

 悪魔召喚と聞いて誰もがソワソワしている中、休めば良かったと後悔する僕アレクは何を隠そう魔術士学校の中で一二を争う落ちこぼれなのだ

 杖を使えば杖先が爆発し、ならばと術式を唱えれば不発で終わり、更には魔法試験は2回に1回は落ちる



 そんな僕は魔力があるだけで、何の才能もなく地味に生きてきた2年生

 裏生地の学年を示す色さえ分かれば改造してもいい黒いローブをろくに手を加えずに足元まで隠せるままにし、遠目から見たら黒い塊だ

 猫背で目の下はクマが出来ており、生まれつきの三白眼がより人相を悪くしている。



 悪魔召喚は魔術士として基本的なことであり、むしろ出来なければ魔術士では無い。

 悪魔と契約を結べば魔力の増量、魔術のランクアップに運が良ければ新しい魔術ができるようになったり、いい事づくめらしい

 そして悪魔には階級があり、全6階級。最上級、特級、上級、中級、下級、最下級とあり、召喚の時点で上級が出せるのは、国が持つ数名の魔術士並でエリートコースまっしぐら

 歴代の魔術士で召喚した最も高い階級は特級で、最上級は誰も到達していない



 一方最下級は奴隷悪魔と呼ばれ、余程のことをした悪魔が堕ちる階級で、付けられた足枷が悪魔の魔力を吸い取り、魔術をほぼ使えなくする

 召喚契約自体は問題ないが、魔力が無いので先程述べたメリットが全くない




「悪魔召喚は魔力が必要ですが、悪魔にはそれぞれ初期階級に沿って決まった必要魔力があります。

 この必要量は階級が変わっても変動することはありません

 例えば初期は下級だった悪魔の召喚に当時必要な魔力が1だとしたら、今後上級になっても最下級になっても必要な魔力は変わらず1になります。

 そのうえで自分の魔力と相性が良い悪魔が召喚されるので、もしかしたら少ない魔力で中級や上級の悪魔をよべるのかもしれません。皆さんがんばりましょう」



 召喚するために広場へ移るが足取りが重くなる。落ちこぼれなものだから召喚された悪魔も怒って帰るだろうな、そしたら僕だけ契約してないからもう魔術士じゃなくない?とか思っているといつの間にか目的地に着いていた


 石畳の上にいくつもの柱がその場全体を囲うように均等に並んでいる。中央に少しとび出た直径2m程の円形の床があり、そこに教科書に載っている魔法陣を描く

 陣は書くものによって意味が違い、例えば陣の1部に目玉を組み込んで書けば目玉は真実の象徴、第三の目という意味で嘘を見抜く悪魔が召喚される。何に特化しているのかどんなタイプの悪魔かをこちらで指定できる。階級は指定できないからそれは下級かもしれないし中級かもしれない

 特に指定がなければ共通の魔法陣があるのでそんなに悩む必要も無い




 1人ずつ中央で悪魔が召喚される。今のところ中級が出た生徒が数名出てきた。彼らはこれから人気者になるんだろうなぁ

 ぼけーっとしていると、いつの間にか僕の番になった


 出来れば友達になれそうな悪魔がいいな、すごく優しそうなふわふわしてる感じの悪魔…そんなの悪魔じゃないよなとか思いながら教科書通りの魔法陣を描き進める


 続けて魔法陣に自分の血を一滴垂らし、杖を使わず直接魔力を陣に送る。長い呪文は必要ないが繋ぎの言葉を一言



開門(ゲート)





 そして冒頭に戻る。




「煩わしい」


 その一言で辺りがしん…と静まる

 何も無いところに腰をかけ、足を組む。左足にある足枷でさえ彼の美しさを際立たせる装飾具の1部に見えるほど、目の前の悪魔は出来ていた


 見た目は細いが筋肉はある程度ついており、手足は長く普通に立ったら185はあるんじゃないのかと思えるくらい

 長い黒髪から覗く切れ長の隻眼は気だるそうにこちらを見ている


「俺を呼んだのはお前か」

「あ、…はい」

「まぁよくを呼べたもんだな」

「はぁ、」


 先生いわく奴隷悪魔をよんだ生徒はこの歴史の中で片手で数えるくらい。悪魔側も同情してくれたようだ


「本当なら契約せずに帰るところだが、気が変わった。契約させてやろう」


 どこ目線から言ってるんだこの悪魔はと思いながら、落ちこぼれは落ちこぼれらしく身の丈にあった悪魔と契約しようと

 その悪魔の言葉に賛同した



 この悪魔に今後の生活が振り回されるとも知らずに


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